第46話 ゲーム実況2・漢字嫁
ホニャララアイランドというクソゲーが終わり、次のゲームへ。
「えー、次は“漢字嫁”というパソコンでやるゲームです。色んなコスプレをしたお嫁さんが漢字を出題してくるので答えを制限時間内に入力するみたいですね」
ふーんいいじゃん。
「間違えるとお嫁さんは露骨に嫌な顔をします。ゲームオーバーになると離婚です」
嫌な嫁だな!
「私はご存知の通り漢字が苦手なんですよ。それでだいぶ前の天気予報の時に地名を答えられずに半泣きになってしまいました。ですが、響さんの指導のおかげで完璧に覚えたので今回は余裕でしょうね」
絶対に無理だろうね。
「ま、私は天才ですからねぇ。漢字なんてお茶の子さいさいですよ」
この天狗どうにかしろ。
「難易度は色々ありますが、全部がランダムに出るごちゃ混ぜモードにしますか。その方が撮れ高ありそうですし」
お前は配信者か。撮れ高なんて気にしてんじゃねぇよ。心配しなくてもお前はいつだって笑いものだぞ。
「それじゃあスタート!」
画面にツインテールの少女が現れる。オタクが好きそうな嫁だな。もちろん俺も好きです!!
さっそく画面に漢字が表示される。
“狼”
「あはは、バカにしてますねぇ。これは“ふぇんりる”です」
“おおかみ”だろ! 中二病かよ!
風華はキーボードでフェンリルと打っているが当然間違いだ。
『違うわ!』と、ツインテ嫁のセリフが画面にテキストで表示された。デフォルメされたムッとした表情がかわいい。ビッキーみたい。
「冗談です。“おおかみ”ですね」
コイツ天然と計算を混ぜてくるから厄介だよな。笑っていいのか引いていいのか迷わせてくるんじゃねぇ。
俺が内心で苦言を呈していると、次の漢字が表示された。
“升”
「簡単簡単、これは“ちーと”ですね」
うんうん、升を分解したらカタカナのチートになるもんな! ネット用語乙!
「本当は“ます”ですね」
『すごーい』
正解した瞬間、画面の嫁に吹き出しが表示されて満面の笑顔で褒めてくれる。
かわいい。いいじゃん、俺も後でダウンロードしようかな。基本無料らしいし。
続いて。
“幾星霜”
「えーっと」
悩んでいる風華。ちょっと難しいか。ま、俺は余裕で読めますけどね。
「分かりました! スターダスト!」
出たよ。コイツ読めないと推測で意訳した英語にするよな。
「メテオシャワー!」
バトルファンタジー始まったな。
「コメット!」
宇宙から離れろ。
そして時間が切れてしまった。ゲームオーバーの文字が画面いっぱいに表示される。
「あちゃー。答えは……“いくせいそう”ですか。惜しいですね」
かすってもねぇよ。
ゲームオーバー画面にツインテ嫁のセリフが表示される。
『あなたとは離婚よ。死になさい』
いや、嫁さん辛辣!
そのセリフを見て風華が一言。
「おっほー、もっと罵倒して欲しいでござるなぁ!」
古のオタクかよ。
「仕方ない、もう一回やってあげますか」
上から目線うぜぇ。
そして再挑戦。すぐに漢字が出てくる。
“沈没”
「“ちんぼつ”ですね」
まぁ読めるよな。
次。
“蔓延る”
風華は早くも天井を見上げて迷っている。
「分かりました! つるのびーる!」
エロギャグ漫画のちょっとエッチなアイテムかな?
中二病なら読めるだろ。“はびこる”、な。
「あ! 分かりました! はびこる、です!」
お、やるじゃん。
続いて。
“兀々”
うげ、何だこれ? 見当もつかねぇ。
「はいはい、余裕ですね。これは“ぱいぱい”です」
うんうん、円周率の記号に見えるもんな。ぜってー違うわ。
「意味としては胸のことですね」
コラ! 絶対違うだろ!
当然、間違いでゲームオーバーになった。
「正解は“こつこつ”? へぇー。意味は、コツコツ人を殴るのコツコツですか」
なんだその例文。ただの暴行罪やめろ。
で。
また再挑戦。
見慣れた画面に漢字が表示される。
“眈々”
うん? なんだっけこれ……あ、“たんたん”か。虎視眈々のやつね。単独だと分からないもんだな。
風華は腕を組んで考え込んだ後、とんでもない解答を打ち込み始めた。
「ちんち——」
言い終える前に画面が“しばらくお待ちください”という文字と花畑の映像に切り替わる。
セーフ!
なんとか放送事故を回避した。
何問か前の“沈没”に引っ張られて眈々をちんち……ホニャララと読むところだったのだろう。
危ねぇ。有能なスタッフがいて助かったな!




