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【完結】弱男だけどなぜかお天気お姉さんと付き合うことになった件  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第1章 弱男だけどなぜかお天気お姉さんと付き合うことになった件

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第25話 服装特番1・私服紹介

 服装特番当日。俺はいつものようにパソコンの前で待機していた。死にかけのトドみたいな顔で天井を見上げていると番組が始まった。


「皆さんこんにちは。この時間は私、鳴神響がお送りしますわ」


 癖のない短めの黒髪、切れ長の目。相変わらず美人だ。


 俺、生のビッキーと会ったんだよな。一緒に買い物して、喋って、俺だけに笑いかけてくれたんだよな。つまり実質ビッキーの全てを知り尽くしたと言ってもいい! よーし、今度友人に自慢してマウント取るぞー! あ、友達一人もいなかったわ!


「さて、ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、今日は事前に告知しておいた服装特番ですわ! ぱちぱちぱち」


 はい、かわいい。


「もう五月の下旬ですから、梅雨の時期ですわね。ということで梅雨に使える服装と雨具を紹介していきますわ。沖縄では既に梅雨入りしてますけどまだまだ間に合いますからしっかりと準備を致しましょうね」


 はい! やります! と言ったが、ズボラな俺はやらないよな! 春と夏はTシャツハーフパンツ、秋と冬は長袖長ズボン。これが俺のジャスティス。


「まずは事前に撮ったキャスターさんの私服映像をご覧いただきますわ。梅雨に関するものを最低一つは入れるというコンセプトのもと私服を着用しているので楽しみにしていただけたらと思いますわー」


 直後、事前に撮っておいたキャスターの私服画像や録画映像が流れ始めた。


 俺には服のことはよく分からないが、みんな個性的でオシャレに見えた。


「では続いては新人お天気キャスターの乃和木風華ちゃんですわー」


 ソイツは飛ばしていいぞ。得られるものは何も無いからな。


 俺の苦言が届くはずもなく、まずは画像が映し出された。


 乃和木は両手の手のひらを合わせた状態で真上に腕を伸ばし、足は4の数字を描くように片足を上げるという謎のポーズをしていた。バカじゃねぇの。


 ビッキーも苦笑い。


「……えーっと、風華ちゃんいわく、『ヨガの木のポーズ』とのことですわ」


 なぜコイツは直立不動ができないのか。通知表に落ち着きがないって書かれるタイプだろ。


「あはは……服装“は”素敵ですわね」


 一文字だけビッキーの本音出ちゃってるよ!


 続いて録画映像が流れる。画面中央に乃和木風華が真剣な顔でイスに座っていた。


「この映像が流れている時、私はもうこの世にいるだろう」


 いるなら言うんじゃねぇよ! 世界一いらねぇ前置きだな!


「さて諸君らに来て貰ったのは他でもない。“梅雨”と呼ばれるバケモノと戦うためだ」


 それ世界の命運がかかっている時のセリフだろ!


「それでは敵と戦うための私の装備を紹介しましょう」


 装備言うなゲーム脳!


「トップスは雨で冷えることを想定して五分袖のブラウスにしました。ただ暗器が隠せないのがデメリットですね」


 暗器で梅雨が倒せるかよ。


「スカートは雨による泥跳ねが気になるので、ヒザが隠れるくらいの長さであるミディ丈のものにしました。アキレス腱を晒すのは勇気がいりましたけどね」


 アキレス腱狙ってくる梅雨とか嫌だわ!


「色は黒で泥が跳ねたり濡れても目立ちにくいものにしました。もし、返り血を浴びても安心です」


 梅雨に血があるのかよ!


「靴は雨を弾く素材でできた晴雨兼用フラットシューズにしました。しっかりとした滑り止めも付いているので濡れた足場でも安全に歩けます。これで戦闘員に襲われても戦えますね」


 戦闘員ってなんだよ! お前は特撮ヒーローかよ!


「カバンは大きめの肩掛けカバンにしました。中には急な雨に降られた時用に折り畳み傘と、室内が冷房器具で寒かった時のためにカーディガンを入れています。更にこのカバン、いざとなれば盾にもなります」


 もう戦闘準備はいいよ!


「あ、あとオヤツに濡れせんべい入れてます。雨に降られても美味しく食べられます」


 いくら濡れせんべいでも雨に濡れたら食いたくねぇよ!


「こんな感じですね。実はほとんど響さんに選んで貰ったんですよ。文言もほぼ受け売りです」


 お前が気の利いた服装できるわけないもんな!


「あ、ここはカットしといて下さい。私の手柄にしたいので」


 バッチリ使われてるぞ腹黒女!


「なおこの映像は終了後、自動的に消去されます」


 スパイ映画かよ! 今までのが諜報員の持ち物に見えちゃうだろ!


「あ、消去されない?」


 当たり前だろ!


「それじゃあ皆さんまたねー! ハッピー梅雨イヤー!」


 なにもかも間違えてる挨拶やめろ!


 映像が途切れた。芸人みたいなことしやがって、マジで疲れたわ。ただ、凄いことに気付いた。コイツ録画だと割と普通に喋れてる。これお天気お姉さんやめた方がいいよな。今度提案してみるか。


「さてさて、一通りキャスターさんの私服紹介が終わったところで、なんと! ここからは先ほどのVTRにも出ていた乃和木風華キャスターが生出演してくださいますわー!」


 一番来なくていい奴じゃん!


「どもどもー、今日も来ましたよー! ふかふかの乃和木風華ちゃんですぅ!」


 なんでコイツだけ生出演なんだよ。コイツ見てるとヒヤヒヤするし寿命縮むわ。全国の弱男何人か死んでんじゃねぇか?


「今日の私達の衣装はスポンサーさんが提供してくださったものですわ」


「なので無課金です」


 黙れゲーム脳。コイツ最近の語彙(ごい)がゲーム関連ばっかだな。ほんとコイツにゲームを与えるべきではなかったわ!


「実はこの衣装にも梅雨の時期に関するものがあしらわれているのですわ。じっくり見て探してみてくださいな」


 え? 人妻をじっくり観察していいのか!?


 ペンギンのようなポーズを取りながらクルクル回っている。あざとい人妻だぜ。かわいいけどさ!


「分かりましたかしら? 正解は、ブラウスの腰の部分ですわ。シルエットのカエルがデザインされていますの」


 あー本当だ。脇と尻を見てたから気付かなかった。人妻クイズ難しすぎるぜ……!


「ジャンプ力+2ってとこですね。序盤の繋ぎ装備って感じです」


 お前はゲームの装備に置き換えるな!


「個人的にですけれど、私って服の重さが気になるのですわ。この時期は雨が多くて傘やタオルなど手荷物が増えますでしょう? そんな時にふと、服も重いなぁと感じる時があるのですわ。ですがこのお洋服は軽めの素材で全く負担を感じないんですの」


「防御力よりスピード特化ですね。ハイリスクハイリターンです」


 的外れファッションチェックやめろ! もうお前は発言するな!


「風華ちゃんの衣装にも梅雨に関するものがあるのですわ。分かりますかしら?」


 乃和木は両手を広げて鳥が羽ばたくように手を上下させ、その場で回り出した。


「どうですか? 優雅な(わし)をイメージしてます!」


 アホウドリだろ。ホント可愛さのかけらもない動きしやがるな。


「正解は——でけでけでけ、じゃん! ネックレスでしたー!」


 わかんねぇよ。この番組みてんのジジイばっかだから老眼で無理ゲーだろ。


「見てください、このネックレス、アジサイがデザインされているんですよ。かわいくないですか? 私のように」


 世界一要らない倒置法だね!

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