8 殿下視点
それ以来、俺はやたらと高い場所に登ったり宝物庫で隠れんぼはしなくなった。
どうやら俺を見失うたびに辺境伯から罰を与えられるらしいのに気がついたんだ。
よく手の甲に傷を作っていたのは、決まって俺が脱走した後だったから・・・
代わりに羽布団を丸めてそこに頭を突っ込んで喚く事を覚えたがその事に気がついたエリィに問い詰められ、つい『乙女ゲーム』に関することを洗い浚い喋ってしまったのだ。
「分かりました問題は学園で始まるオトメゲームとやらが、殿下の心の負担になっているんですね」
「うん」
納得しないだろうなあと思いつつイジケていた俺に向かって
「でも殿下、婚約者がいませんよね」
「あ。うん。姉君達が反対したのもあったし。何のために自分達が嫁ぐのか考えろって陛下を突き上げたらしい」
「成る程。じゃあ卒業時の『婚約破棄』という馬鹿丸出し行為は無くなる訳ですよね」
「うん。幸いね」
「ただ、卒業後にお妃候補とは婚約しますよね?」
「ウ~ン・・・多分?」
「・・・」
エリィに無言で頭を殴られた。
だってさ、あんまり興味がないんだよね。
流行りの化粧と香水と俺の瞳の色に近い水色のドレスに俺の髪色の金色のアクセサリー。
肩書だけが違ってても全部おんなじ顔だ。覚えられるか!
それと比べてエリィは顔が滅茶苦茶整ってる。
残念ながら男だけど。
多分その辺の貴族令嬢なんか霞む位だ。だから今回もエリィに無茶苦茶な作戦のヒロイン役を努めてもらったんだが。
しかし令嬢の顔を覚えられないのは、アレを見続けて育った弊害かもしれない。