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残念ながらこの国の王子はたった一人しか生まれなかった。
その為に幼い頃から見える見えないに関わらず彼の周りには護衛が山程付けられていた。
その中の一人が『私』だが、年齢が近いことから彼の遊び相手として常に側に置かた。
幼い頃から無茶苦茶アクティブだった彼は目を離すと木の上にいたり、宝物庫に紛れ込んでいたり、城の物見櫓の尖頭にしがみついていた。
この国の王侯貴族は幼い頃からの婚約者というものを決めない風潮がある。
国家間の情勢により婚姻相手がその都度代わる可能性がある為意味がないどころか弊害に成りかねないからだ。
王子は一人だが幸い王女は6人おり、諸外国との婚姻による盟約は完璧な為、外国との政略婚は考えなくて良いのがうちの王子殿下だ。
彼はどっちかっつーと、国内の有力貴族子女との婚姻で国の安定を図って欲しいというのが陛下及び大臣達の方針である。
その為、幼い頃から有力貴族の子女達との顔合わせ会が相次ぎ、ストレス発散の為に高い所に登って叫ぶという悪癖がついたんじゃないかな、と幼馴染兼護衛としては考えていた。
それに付き合わされた自分は当然お咎めを受けて、親父に折檻される。
今思い出しても糞腹が立つ。
な~にが
『お咎めなしにしてあげて!』
『ハイ、殿下』
だよ。ケッ。嘘ばっかクソ親父。