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そんな訳で。
気がつけば15年近く側で仕えてくれていた幼馴染である、辺境伯の長女エリノア嬢と殿下が無事婚姻したのである。
「エリノア様! 殿下が又居なくなりましたっ!」
「え〜又ですか」
ヤレヤレという顔で王太子妃の執務机を殿下の執務室へ運ぶ作業を指示していたエリィが振り返った。
あんまり王太子が彼女の執務室へ入り浸るため、部屋を1つにすることに決めたのである。
あんまり執務が滞ると、国王陛下が胃痛を起こすからだ。
エリノアはため息を吐いた。
「やっぱりここにいましたか」
王宮の中庭にある大きな樫の木の枝に隠れて座る金髪碧眼の王太子殿下は妻の顔を見るとにっこりと笑い、猿のようにスルスルと降りてきた。
「侍従が探してましたよ?」
「ん~~。明日なら面会していいよって言ったんだけどねえ。どうしても今日って言い張るから居ないって伝えてたんだけどさ。それでも押しかけて来そうで嫌だったから」
「それで行き先も告げずに逃げたんですか」
エリィが呆れた顔になる。
「うん。エリィが迎えに来てくれるまで隠れてるつもりだったんだ。あの王女様苦手なんだよ『転生者』じゃないかな?」
「乙女ゲームの続きでしたっけ?」