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「何やってるんですか、アンタ!」
「今までの仕返し」
「へ?」
「だってずーっと男の格好で俺の事を騙してただろ?」
因みに侍従と侍女の御仕着せはスカートかトラウザーズの違いだけだが、動きやすいのでエリィはずっとトラウザーズで過ごしていた。
だってこの王子様、目を離すとすぐ何処かに登ってしまうから。まあ、最近は大人しくなったが。
「いや、騙してたわけでは・・・」
「俺の身代わりで罰を受けてたんだろ? ゴメンな。叔父上厳しいからな」
昔、傷になっていた手の甲をスリスリ撫でる殿下。
「まあ、自分の落ち度なので」
そしてそのままエリィの腕をグイッと引いて自分の寝台に引っ張り込んでしまう。
「あ、コラッ!」
「辺境伯の一家は王国の守りの要だから、王家の『影』も務めるってのは知ってるけど、王妃になっちゃ駄目っていう法律はないはずだろ?」
そう言って、王子は自分の膝にエリィをヒョイと乗せてギュッと抱きしめる。
「お願いします結婚して下さい!! エリィじゃなきゃ俺駄目! 絶対に馬鹿なことして愚王って呼ばれるからッ!」
「なんでそんなに後ろ向きに自信満々なんですか?」
「だって、お妃の顔も他所んちの嫁の顔も一緒に見えるなんて最悪じゃん! 寝所に忍び込まれたらわかんないよ」
「・・・確かに」
ある意味ものすんごい説得力ではある。
「お願いします。エリィ、結婚して」
うるうると目に涙をにじませる、顔面偏差値200%強の男。
まるででっかい犬が哀れにキュンキュン鳴いてお手をさせてくれと飼い主にせがむように見えてしまう。
エリノア・フォーンシュタイン。
実は犬に大層弱かったのである・・・