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2話 吸血鬼は意外とおしゃべり

みなさんは、血を吸われる感覚を、味わったことがあるだろうか。


────────無いでしょうね。


では、そんなみなさんに僕が、血を吸われるというのはどのようなものなのか、説明しましょう。



まず、血を吸うには皮膚を噛む必要があるため、僕は今、目の前にいる吸血鬼、如月さんに噛まれました。


絶対痛いと思っていたんですが、これがビックリ、痛くなぁい。


蚊は人間から血を吸う前に、麻酔を先に打つらしいのですが、それと同じで、吸血鬼も血を吸う前(噛んだ瞬間)に麻酔を打つらしいです。


そして血を吸われるという感覚は……無い涙


本当に血を吸っているのか疑う程、何も感じません、それはそれで、痛いよりはいいのかもしれませんが……


ま、こんなに近くに女子がいて、しかも首筋を噛まれているこの状況で俺はもう満足だけど。


「あ、あの〜、これ、いつまで吸う感じですか?」


そろそろ自分の血が無くなるんじゃないかと心配になってきた。


「んー、ぱーぁぁ!あーごめんごめん!まともに食事取れたの久しぶりだったからつい」


そう言いながら如月さんは俺から一歩距離をとり笑いながら言った。


「そうなんですか、えーっとどうでした?僕の血は」


こんな質問金輪際絶対しないだろうな。


「うーん、特別美味、という訳じゃ無いけど、飲みたくないとも思わない、そんな感じかな」


つまり普通という訳ですね。


「はぁ、さっきの生徒の血は結構美味しかったんだけどなー、君最近運動してないでしょ?」


如月さんは手を後ろに組み、俺の前で少し前かがみになって言った。


「は、はい、確かに最近は全然動いてませんね、どうして分かったんですか?」


最近は受験が終わった反動でゲームゲーム勉強ゲーム↑ゲーム↑ゲーム↑みたいな生活だった。まぁ大体の人間こんな感じだろ。


「ふふふ、血の味は健康の味……ん?違うか?えーっと健康な人の血は美味しいということだよ!」


「は、はぁ、なるほど、つまり僕の血はあまり美味しく無かったってことですか」


そこら辺の基準はよく分からんが、さっき如月さんは俺の血の味を普通と評価したが、=運動してないと分かるものなのだろうか、運動していない、つまり健康的な生活を送っていない俺後は不味かったのでは……涙


「そそそそんなことないよ!大丈夫大丈夫君の血は不味くないから安心して!それに不味いからと言って別に何も無いから!」


不味いって言ってるし。まぁいいや、そもそもそれが当たり前なんだから。


「なんかすいません、最近は全然健康的な生活してなかったんで、今日からは気をつけますね……」


「健康的な生活をするのも重要だけど血を美味しくするのにはやっぱり運動が大切だよ!」


んー?俺は血を美味しくするために健康的な生活をすると言ってるんじゃないんだけど、なんか勘違いしてませんか?


「う、運動ですか、それも大切かも知れませんが、自分運動は苦手なんですよね……」


中学生の時は文化部だったし運動する機会なんて体育くらいしか無かったから体力は無い。運動神経も悪い。


「大丈夫大丈夫!私も、あー、如月ちゃん運動音痴だから!」


「如月ちゃん?」


自分のことをちゃん付け……!新しいなぁ。違うか。


困惑した俺を見て、如月さんは思い出したのか、ポンと手を叩いてこう言った。


「そういえば言ってなかったね、驚かないでねっ、実は私っ!"二重人格者なの!」


俺の顔に迫り、如月さんは驚かすように言う。


「に、二重人格者、の吸血鬼ということですか、これはまた、すごい」


ただ俺は察しがいいほうなのでわかる。


つまり、吸血鬼と吸血鬼じゃない如月さんは人格が違うということなのだろう。


「確かに珍しいかもね〜、こっちでは私のことはキラちゃんって呼んでいいよ?」


き、キラちゃんはハードル高いですね……ただでさえちゃん付けなんてしたことないのに、いきなりそれは無理。


「すいません呼びずらいので今まで通り如月さんでいいですか?」


「せめてキラさんは!?こっちで如月さんって呼ばれるのは違和感あるからさ」


そういうものなのかと、俺は勝手に納得して「分かりました、ではキラさんと呼びますね」と言った。てかキラってなんだ、まさかキサラギから取ったなんて安直な理由じゃないですよね?


「うん、それで話を戻すとー、如月ちゃんも運動神経悪いから大丈夫!2人で運動すれば効率いいんじゃない?」


運動音痴同士の運動は果たして効率いいのだろうか。いや、良くないと思う。


どんな事でもできる人する方が効率的だろう、例えば勉強。できない人ができない人とやっても意味は無い。


「運動音痴同士だったら逆に効率悪いんじゃないんですか?」


「うん?だったら誰にでもできる運動したら?」


誰でもできる運動?なんの事だ?


「男女2人がする簡単な運動の事だよ♥」


俺の耳元でキラさんはそう呟いた。


男女2人がする運動、具体的に言ってくれないと変な想像をしてしまう。


「えーっとつまり?」


「性行為」


ボー読みでキラさんはそう言った。


せ、せせせ、性行為!?


な、何を言っているんだ如月さんは!まさか意外と変態なのか!?僕の息子が反応してしまう!


「そ、それは、冗談ですよね、あはは、驚かさないでくださいよ、ただでさえさっき人生で1番驚いたんですから」


そもそも性行為って運動になるのか?嫌ならんだろ。


「冗談で言ったつもりは無いよー、まぁ候補の1つとして言っただけだけどねー?」


こ、候補1つ、いや待て待て、キラさんは今、如月さんと俺がする運動の話をしているんだよ?てことはだ。


キラさんはもうひとつの人格、如月とヤるのは構わないと言っているのか!?


「は、ははは……さ、さてそろそろ暗くなってきたし帰りましょうか」


「あ、話逸らした、童貞くんには恥ずかしい話だったかな?」


そうキラさんはニヤニヤしながら言う。


ただ、俺はひとつ"誤り"を訂正する。


「あ、自分童貞じゃないですよ」


「…………へ?」


キラさんは間の抜けた声で驚愕する。


「そ、そんなに嘘つくのはよくないよー?そ、卒業してるなんて……ほんと?」


ふふふ、そりゃ信じてくれないでしょう、まさか俺みたいなただの陰キャが童貞を卒業しているなんて言ってもだ〜れも信じてくれない。


だが!俺は本当に卒業している!


「本当ですよ、あれ?もしかしてキラさんは、未経験?」


俺はわざとらしくチラチラキラさんを見ながら言う。


あーすまないな、俺はもう、卒業済みっだ!


「…………キミ、私をからかった?」


すると、キラさんは頭に来たのか、人を殺せるほど伸ばした爪を顔の前に立て、怒っているような態度でそう言う。


ただ怒っただけなのだろうが、俺からしてみれば殺気すら錯覚して感じる。


「ご、ごめんなさい」


素直に謝る。じゃないと殺される気がするから。


俺が謝るとキラさんは目を瞑り爪をしまい、手を組んで窓の方に向かって歩く。


「ふふ、ごめんね脅かすつもりは無かったんだけど、でも君が卒業していたのには本当に驚いたよ、あと正直悔しい」


悔しいということは、キラさんはしたことないのだろう。てか吸血鬼ってそういうことするのか?


「じゃあ君の言った通り時間もあれだし、私はそろそろ帰るよ、あ、その子お願いね」


「か、帰るって、そっちは窓ですけど……」


まさか。


「忘れたの?私は吸血鬼ら空を飛ぶことなんて当たり前だよ?」


そう言いながら、キラさんは窓を開けた。


外は既に橙色の空から薄暗くなってきている。


まだ冬を明けたばかりなため、風は少し冷たい。


キラさんは開けた窓に、足をかけ、乗り越えようとする。


その時、そんなに長くないスカートから、キラさんのパンツが見えそうになる、が、薄暗いこともあり、ギリギリ見えなかった。


そして、そのまま窓の上に乗る。


風が吹き、キラさんの制服や髪がなびく。その姿は、明らかに普通の高校生の姿では無かった。


「それじゃ、またね、あ、その子、よろしくね」


「は、はい……」


俺は窓から帰るのが当たり前かのように、何もキラさんにつっこまず返事をする。


俺の返事を聞くと、キラさんは手を振って窓から飛び降りた。



キラさんが飛んでから数秒ただ呆然と立ち尽くしていたお俺は、一応、窓の方へ向い、キラさんが帰ったか確認しようと動く。


これで普通に地面に倒れていたら笑うな、なんてことを考え窓まで行き、少し恐る恐る下を覗くが────


もちろん、下は闇だけで、誰も倒れていなかった。


そりゃそうか……さて、俺も帰るか。


だがその前にあいつを起こさないとな、はぁ、一体なんて言えばいいんだ……


と、どう言えばこの状況を説明できるのか、必死で考えながら、俺はあいつの元へと向かった。

ここまで読んでいただきありがとうございました!評価やブックマークもぜひよろしくお願いします!


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