第16話 冠前絶後の究極龍
魔物には、その魔物がもたらす脅威を表す数値――脅威度が割り当てられている。
脅威度は五段階に分かれており、高ければ高いほど、その魔物は人類にとってより大きな脅威となる。
例えば、先日の斧を持った魔物や、ナイト・ライト・サイズの脅威度は2だろう。個人に対しては大きな脅威だが、多少戦いに慣れている者なら、単独でも倒せないことはない。
そして、このリック大陸に生息する竜種の一つ「東龍種」の脅威度は2か3(個人での対処はとても難しく、その魔物に対する専門的な知識が必要)に留まる。
――しかし、ギデオネルの脅威度は4。軍隊を派遣しても五分五分の勝率だ。
それが、僕の目の前にいる。
僕を見据えて、笑っている。
「に、逃げ……」
逃げたら、あの時と同じだ。
「逃げないと、死ぬ……だったら!」
だったら、ここで死んでやる。
ギデオネルが大きく息を吸い込む。炎の息を吐いてくる合図だ。
同時に、僕は斧を手元に生成し、雄叫びを上げて駆け抜ける。
――刹那。
「やめろ、ドあほう」
「へ?」
カイムの声が聞こえたと思うと、視界が上に向いていた。
いつの間にか、カイムに抱えられていたのだ。
しかも、お姫様抱っこで。
「今死んでどーすんだよ、逃げるぞ」
「ふざけんな! 逃げたら、あの時と同じじゃないか! それに、あれを相手に逃げられるわけがないだろ!」
僕が文句を言うと、カイムは鼻で笑った。
「同じじゃねえよ、ほぼ全員逃がせた。逃げるプランもある」
「え?」
「魔物の討伐に失敗した。今はまだ大丈夫だが、あいつの傷が癒えたら、ここの村人全員を喰らい尽くしに来るだろう――こう言えば、何が何でも逃げるしかなくなるぜ。逃げる方については……」
カイムは龍の方に顎をしゃくる。見てみると、あいつは右目を破壊されてのたうち回っていた。
「両目潰してやりたかったが、流石に両手が塞がってるからな」
「じゃあ、降ろしてよ」
「やだね。降ろしたら突っ込んでいくだろ。とりあえず、レレナも連れてとっとと行くぞ」
結局、カイムに抱えられながら、僕らは村だったところを後にした。




