08 有り様
旅は続きます。
道中のんびり楽しみすぎて、予定より遅れ気味ではありますが、
マクレルガさんにご心配をおかけせぬよう、
立ち寄った町や村のギルドから、シュレディーケさんが速達鳥で連絡しているのです。
今まで離れ離れだった思いの丈の全てを込めた手紙をお父さんに、
というわけでもないようで、
送られている手紙の内容は、旅程の報告中心の、実にあっさりしたものだとか。
「いや、今は日程程度の報告で良いと思う」
「積もる話しは会ってからでも良かろう」
「もっとも、フォリスさんの数々のやらかしの仔細は、あらかじめ報告しておいた方が、面と向かって父に告白するよりも気が楽かもしれんな」
何とぞご容赦の程……
---
リグラルト王国内の各都市を結ぶ街道は、
とても広くて整備が行き届いております。
理由はふたつ。
各都市間の経済活動を円滑にするため。
紛争の際に速やかに物資を輸送するため。
定期的に巡回している街道警備隊によって、主要な街道に出没する魔物や賊の類いは、
発見、即、討伐。
僕たちの『探索』警戒装備の優秀さと相まって、
実に安全で快適な旅ができております。
リグラルト王国、王家のワヤっぷりから想像していたのとは違って、凄くまともな国です。
いや、そんなこと言っちゃうと、リグラルトに住んでいるロイさんたちに失礼ですね。
えーとつまり、どんなに王家が駄目駄目でも、各地の領主さんや村長さんが頑張れば、国は安定し栄えていくのですね。
ひと言で王国と言っても、いろいろな有り様があるということなのでしょう。
ツァイシャ女王様のエルサニア王国のように、素晴らしい名君が統治してくれているという幸せも、もちろん大いにアリ。
もしシュレディーケさんが姫さまとしての責務を果たそうとして、
これからは王族としての生き方を選ぶと決めたのなら、
僕にできる精一杯のやり方で支えてあげましょう。
えーと、お世継ぎとか望まれても困っちゃいますので、
狩人として積極的に魔物を狩って、街道警備隊の目が届かないような小さな村の安全を守る、とか。
今のところは、そのくらいで勘弁してほしいのです……