06 長旅
まずはヴェルクリの街まで、徒歩の旅。
対策バッチリのおかげで、街道は安全。
『Gふなずし』の広域『探索』にちょいと引っかかった魔物たちが慌てたように引っ込んでいくのは、魔物避け『結界』が仕事してくれているからですね。
アリシエラさん、ありがとうございます。
そんな感じのふたり旅、
しっかり歩いて、がっつり休憩、
しっぽり野営し、すっきりお目覚め。
なんだか申し訳ないくらい順調に進むことができました。
そして到着したのは最初の目的地、有名な商業都市ヴェルクリ。
ここまでのふたり旅で、徒歩の長旅でのペース配分や要領、物資の消耗度合いなどを把握できました。
この街の充実した商業施設で、たっぷりと休息・補給していこうというわけです。
活気がある商店街を、散策しながらお買い物。
品揃え、お買い得感、店員さんたちの対応、
全てがエルサニア王都城下街商店街に匹敵、いや、それ以上かも。
ご存知の通り、昔から王家がいろいろとやらかしてきたせいで国内での争いごとが絶えなかったリグラルト王国。
ここヴェルクリの領主のバルモルトさんは、
商業活動に注力して発展させることにより、
経済力でこの街を守ってきたそうです。
そういう闘い方ができるって、凄くカッコ良いですよね。
ちなみに、バルモルトさんと娘さんのニケルちゃんは、
ロイさんたちととても親しく交流しているそうです。
ニケルちゃんは"チームニケル"という冒険者チームを率いて大冒険しちゃうほどのおてんばさんだとか。
傑物の血縁が傑物に育った、ということでしょうか。
"トンビが鷹を産む"などと言いますが、
もちろん鷹の子が鷹だって良いのです。
そうですよね、シュレディーケさん。
「私も父を目標に幼い頃から騎士修行に励んでいたから、否定は出来ないな」
「ただ、ニケルちゃんはおてんばと言うよりは、騎士道精神と冒険者魂を併せ持つ稀有な女傑であることは間違い無い」
「10歳にも満たない女の子を、女傑と呼ぶのはどうかと思うが」
そうか、シュレディーケさんもお知り合いだったんですね。
「お淑やかで愛らしい見た目なのに、芯の通った考え方が出来る、将来が楽しみな娘さんだな」
「ちなみに、カミスさんが婚約者でもある」
カミスさん、また随分と幼い娘さんと……
まあ、その限界突破してるモテモテっぷりこそがカミスさんですもんね。
僕はシュレディーケさんひと筋ですから、そういう心配は要りませんよ。
「いや、既にルルナさんは、イーシャさん公認のらぶらぶ候補では……」
えーと、大事なのはシュレディーケさん公認かどうかってことですよね。
「答えに窮する質問は困る……」
……この旅の間に、じっくりと考えて答えを見つけましょう。
「……しかと心得た」
長い旅になりそうです……