05 出立
旅の準備は万端、
留守中の我が家のことは、ルルナさんにお願い。
留守番ではなく、時々で良いので見に来てくださいね。
「いよいよ新婚旅行の本番ですねっ」
はい、ツァイシャ女王様のお言いつけ通り、自重しながら楽しんできます。
「おや、バレバレですよ」
「どうせみんなの目の届かないところまで行った途端に、らぶらぶに歯止めが効かなくなっちゃうのでしょう」
「お父さまがドン引きしちゃうくらい、欲望のままにらぶらぶしてきてくださいねっ」
ご期待に沿えるよう、頑張ります……
それでは、出立。
行ってきますっ。
---
まずは『ゲートルーム』でリグラルト王国南端のロイさんのお宅へ『転送』
お見送りしてくださったロイさんのご家族に、元気に旅立ちのご挨拶。
徒歩にて目指すは、ここより西、ヴェルクリの街。
「まさしく旅日和、良い天気だ」
そうですね、シュレディーケさんはこういう長旅もお手のものでしょうけど、
僕は楽しみ半分、不安半分、です。
「不安、か」
先日のタリシュネイアからの襲撃の時みたいに、対人戦だとイマイチ役立たずですよね、僕。
可愛いお嫁さんを守るためなら全力を尽くしますけど、
問題は、僕の全力なんかじゃ全然頼りないってことなので。
「私の全身全霊での全力、もっと頼りにしても良いのだぞ」
「可愛いお婿さんを守るためなら、鬼にだってなる」
「でも、鬼嫁とか言わないで欲しい……」
そういうとこが可愛らしいんですよ、この隠れお姫さまは。
まあ、狩人としての僕の危機察知能力と、アリシエラさんご自慢の『Gふなずし』の『探索』能力で、危険はできるだけ回避するようにしますね。
「サイリさんの初めての旅を思い出す」
?
「サイリさんはこの世界に召喚されてから、揉め事を避けるためずっとひとりで家にこもっていたそうだが、みんなから後押しされて外の世界を見てまわる決心をしたそうだ」
「サイリさんなら、あの特別な能力を使えば、危機回避など余裕」
「危険や厄介ごとを全て避けながら旅をしたサイリさんだが、賊に襲われていたスーミャさんたちを、見て見ぬ振りは出来なかったそうだ」
「つまり、私の窮状を無視出来なかったフォリスさんなら、どんなに慎重に危険を避けていても、誰かのためなら自ら進んで厄介ごとに飛び込んでしまうだろう、という事」
「心配する気持ちと誇らしいという感情、私の複雑な思いも分かって欲しい……」
……そういうのって、召喚者の皆さんは"フラグ"って呼んでましたね。
確かに、そうなる可能性は無きにしもあらず。
でも、せっかくのふたりっきりの旅、厄介ごとは勘弁してほしいな……