10 勝負
ただ今、客室のベッドの上で、身動きひとつ取れず。
うへぇ、身体中がイテェ!
マクレルガさんとの木刀での真剣勝負。
予想通り、手も足も出ず。
気持ち良いくらいの大惨敗でしたよ。
いや、ごめん、嘘ついた。
脳みそくらくら、打ち身じんじん、内臓じくじく、正直気持ち悪くて吐きそう。
で、地面にのびて息も絶え絶えの僕を、シュレディーケさんがお姫さま抱っこで運んできてくれたわけで。
なぜかマクレルガさんが地面に倒れ伏しているのがチラリ見えた気がしたけど、たぶん気のせい。
いかにシュレディーケさんでも、本気の全力全開でお父さんを叩きのめしたりはしない、はず……
「済まない、フォリスさん」
「我が父とはいえ、まさかここまでやるとは……」
いえ、シュレディーケさん。
お父さんの僕への思い、痛いほど伝わってきましたよ。
そりゃあもう、痛いほど……
「大人げないというか、いい歳をしてというか」
「とにかく、仇は取った、つもりだが……」
あー、痛みによるまぼろしでも幻覚でもなかったんですね、アレ。
お父さん、大丈夫でした?
「知らんっ、優しく看病してくれる人がいるのだから放置で良かろうっ」
……駄目ですよ、仲直りしなきゃ。
せっかく久しぶりに会えた親娘が、ガチンコ木刀バトルだなんて。
僕がこんなになったのは僕が弱いせいなんだから、
お父さんにちゃんと謝って仲直りしてくださいね。
「なぜこんな目に遭わされてまで優しいのだ……」
いえいえ、これが木刀での試合だからこそ、ですよ。
剣の道を貫いてきた人に、僕なんかが剣で勝とうなんておこがましいにも程がありますって。
でもね、狩人としての僕は違いますよ。
こう見えて僕なりの矜持もありますし。
これが弓での勝負なら、僕にだって絶対に譲れないものがあるのです。
「済まん、フォリス殿」
「いや、婿殿」
……マクレルガさん?