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南米

 それから、ディオは西の村と東の村、北の村へと使者を送り、説得と協力を要請をした。それと、穴掘りが得意な者を4十名余り、そして何をするのか解らい者を数名連れ、森の広場を目指す。

 穴掘りの作業は一夜漬けとなり、私には、

「赤羽くんは戦いで眠らされると困るから、しっかり寝ていてくれ」

 と言いった。

 私は長老のテントで休ませてもらった。カルダは襲ってこないだろうと頭では安心しているが、心は最大限の緊張はしている。

「これが本当の最後の戦いね」

 呉林は長老のテントの中でそう言った。私たちは周囲のテントと長老のテントを借りて、その中で眠ることになった。

 長老のテントにいる私の隣には呉林と霧画が横になっている。何かカルダの魔術的なことが起きた際に、シグナルを発してくれるだろう事である。

 安浦は食糧がたくさんあるテントを独り占めして眠り、村のテントの消火作業や救出作業を終えた渡部と角田は周囲のテントで自由に寝たいと言った。周囲のテントは焼け落ちたところが多いが、無傷のところも幾つかあった。村の住民も死者がでることはなく、怪我人くらいでいくらか落ち着いていた。

「ああ、俺がしっかりしていれば……何とか勝てるさ」

 私は恐怖よりも強い怒りによって、自分の力に始めて自信を持った。この平和な日本で、生れて初めて戦をしなければならない自分の人生に、今の私は打ち勝つ程の力と能力がある。もう悪夢は終わりだ。

 その力は、今までの過酷な体験でのぎりぎりの、生きるための努力によるもの。そのお陰で私は、きっと明日も明後日も生きていけるのだ。それと……呉林のため……。


 そして……今頃、中村・上村は何をしているのだろう?

「赤羽さん。怖い?私は怖いわ。戦なんて今の平和な日本でした人なんていないはず。今までは不思議な感じる力やみんなのお陰で、怖さがあまり無かったけれど……」

 動物の匂いがする毛皮の継ぎ接ぎの毛布に包まった。横になっている呉林はこちらに弱い口調で話した。枕はない。

 横になっている私と霧画は少し考えるが、

「大丈夫さ。ただ単の夢のことさ。きっと、いや……必ず何とかなるさ」

 私はカルダへの怒りで、平静に言ってのける。

 私はこのリアル過ぎる恐ろしい夢の世界でも、やはり夢は夢と考えられるところがあると思う。

「そうよ真理。これは夢よ」

 霧画は優しく言う。

 霧画が私の考えを読んだ。

「姉さん。私じゃどうしても無理だったから。この戦いは私たちが勝てるかどうか何か感じる?」

「残念だけど、私も何も感じないわ。どうしても何も感じられないのよ。今でも心は空虚で、そこから何も生み出せえない。でも、一つだけ何かとても強く感じることがあるの。それは言語化できないけど……」

 霧画は少し間を開けて、

「……空が見えるの」

「え、空。それって、蒼穹の戦士が関係しているの?」

「……違うわ? 駄目、解らないわ……」

「なんだ……」

 私は自信が揺らぐことは無いが、緊張しているのにどんよりとした奇妙な眠気を感じた。

「何か変よ!」

 呉林は上半身だけ起き上がったが、すぐに横になる。

 三人は眠った。


 ルゥーダーとカルダはその禍々しい笑顔を向けあった。

「しっかりと、わしの呪いが効くぞ。小娘どもよりわしの力の方が上なのは当然じゃ……。

日本人か……。あの男はまさにこれまでにない生贄。盛大な儀式の準備をしなくては。これで、わしは完全に世界を統べる。未来永劫の全てのものがわしの手中に……」

 ルゥーダーの意識の中、いや、外の私は生まれて初めての抑えようのない怒りを覚える。


 次の日。戦いの車輪は何千人もの犠牲者を磨り潰すために動き出した。

「赤羽さん。おはよう」

 呉林の優しい声に目を開ける。

「何時頃寝たのか解らなかった」

 私は鈍い頭を振り、枕元にある剣と盾を持ち、長老のテントから外へ出た。霧画は朝だと言うのに白い城の反動で果実酒を飲みに行ったようだ。


 村の中央には蒼穹の戦士が約百名、そして、角田と渡部が武器を携え集まりだした。

 安浦と村の女たちは炊き出しをしてくれるようだ。

 そこは、やや大きく人が10人くらいは入れる大きさだ。中央の食べ物が置いてある木製のテーブルは天幕からはみ出している。安浦が寝泊まりした場所でもある。その奥の食料は目に見えて、十分ではなかった。何日も貯蔵された果物と猛獣の肉のむわっとする匂いがし、漂い、よく安浦はこの中で眠れるなと思った。

 安浦に挨拶をしにいくと、

「ご主人様のは特別です」

 安浦は他の人たちには、猛獣の肉を拳大なのに、私のだけは多種多様の果物を挟んだ猛獣の肉サンドだった。

「ありがとう。大事に食べるよ」

 私は肉サンドをズボンのポケットに丁寧に入れ、渡部と角田に挨拶に行く。


 二人は武器を真剣な顔で軽く振り合っていた。これからの戦いで心が昂ぶっているのだろう。

「赤羽さん。今度は本当に死ぬかも知れないんですよね。俺は今までの人生でこんな体験をしなくていい道を、必死に目指していればよかったです。でも、村の人たちや世界の人たちのためにもなるんですし、何より自分の悪夢が無くなる……やらなきゃなって……」

 渡部は表面上は震えが目立っていたが、並々ならぬ気力が窺えた。

「俺もこうなったら仕事よりも頑張るさ。生きて帰れるか解らないけど……赤羽くん。頼むからみんなの命をその不思議な力で守ってやってくれ……。それと……できれば独身生活を……卒業したかった……」

 角田はさすがに嫌と言うほど震えていた。その緊張をすぐに解けるはずはなく。

私には、

「二人とも、これは夢さ。ディオや呉林姉妹は死ぬと駄目だと言っているけど、そんなことはないかも知れない。きっと、死んだら布団の中で目を覚ますだけさ。勇気を無理にでもだして、これからの戦いを精一杯頑張れば、明日からはまた元の生活さ。みんなで酒をたくさん飲もうよ。勿論、俺の奢りで……」

 私は二人に向かい。これまで一度も出来なかった純粋な優しさを含んだ笑顔を向けた。それが今、出来る。精一杯の二人への応援だった。

 カルダは凶悪だ。この夢の世界で大量殺人を企て、世界を我が物としようとしている。けれど、この世界は単なる夢だ。死んだとしても現実で生きていられるかも知れない。カルダのただの世界征服の憧れの夢にみんな死ぬ思いをしているに過ぎない。

 きっと、これがどう転んでもみんなは無事で、今までどおりの生活ができるさ。

 私はそう心に決め、剣と盾を置いて最後の戦いを勝ち抜けるように現実の神に、両手を合せて天に深々と頭を下げた。

「あ、何か感じるわ! ディオが呼んでいるわ!」

 呉林は受信してから、長老のテントで大声で私を呼んだ。

 当然、ディオは携帯を持っていない。


 私と渡部と角田、安浦は、呉林姉妹がいる長老のテントへと走り出す。

「準備万端だそうよ。私と姉さんと恵ちゃんはこの村から出られないけど、戦で傷ついたら必ず戻ってきてね。絶対よ」

「ご主人様。超武運を」

「赤羽さん。勝利のお呪いよ」

 霧画がそう言うと、私の頭上に何かの印を結んだ。

 すると、私の中で一睡の眠気も粉々になった。

「死ぬでないぞ。夢の旅人よ」

 テントの奥から出てきた長老が顔の皺を引き締めた。

「みんなありがとう。俺、行くから。それから……」

 私は英雄を気取って呉林の顔をまじまじと見た。

「気を付けてね」

 呉林がいつもの調子で明るく言うと私にキスをした。

「ご主人様ー!」

 安浦は私の頭を本気で叩いた。


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