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山の(神を慰撫する)日  作者: 白緑
1/2

前編

慰撫を愛撫と読み間違えて生まれた小説です。

 

 俺の名前はいさむ

 夏休みを満喫中の学生だ。

 クーラーを付けた部屋でごろごろするのは最高に楽しいな!

 おっとここでピンポンが鳴って来客だ。

 誰だろう、まあ、俺に用でないことは確かだな!


「勇、おはよう」


 前言撤回。俺に用だった!

 相手は同級生の山田。

 名前は知らん。

 今年の夏転入してきた転校生だ。

 夏休みの直前、たまたま廊下ですれ違った山田と話したら、ものすごく話が弾んだので、夏休み中に会おうと約束していたのだった。

 すっかり忘れていたぜ!


「山の日の話をしようか」

「ん? 山の日はもう終わったろ?」

「ああ、そうだが、お前は山の日にやるべきことを忘れていたから今からやりに行くぞ」

「初耳だ!」

「ちなみにこれを怠ると、祟りがある。具体的には……この先、彼女ができなくなるだろうな」

「それは大変だ。すぐ行こう」

「話が早くて助かる」


 そういう訳で、近場の裏山に登ることになった。

 一応、下は長ズボンにしていくか……。

 上は暑いから半袖でいいな!

 暑いからコンビニでアイス買ってから合流しよう。


「おまたせ!」

「随分長かったな」

「コンビニでアイス買ってた。食べるだろ?」

「悪くないな。いただこうか」


 木陰でカップアイスを食べる。

 この暑さだ、アイスはみるみるうちに溶けていったが、実は俺、この溶けたアイスを飲むのも好きだった。

 うん、美味い。

 山田を見ると、もう食べ終えたのか、じっとこちらを見ていた。


「ゴミはこの袋に入れてくれ。俺が持って帰る!」

「いい子だな。さて、とりあえずちょっと登ろうか」

「そう言うと思って、お茶も買ってきた!」

「勇は賢いな」


 山田が目を見張っているが、この夏、熱中症対策は必要だと思うんだ。

 賢すぎて……とか、聞こえてきたけどまあいいか。

 賞賛の声は聞いてなんぼだ!


「かなり登ったな。疲れていないか?」

「ここ、どの辺? 頂上までどれくらい?」

「だいたい真ん中ぐらいだ。頂上まで来てくれるのか?」

「まあ、山の日だし」

「それは楽しみだ。さて、これからお前がしなくてはならないことについて、説明しよう」


 俺はシャッキリしたね。

 一生彼女ができないなんて、独身決定じゃないか。

 年の離れた姉ちゃんの子どもにデレデレしてる両親を見る限り、そんな親不孝なことできないぜ!


「山の日って言うのはな、山の神を慰撫する日なんだ」

「山の神を愛撫する?」

「慰撫する、だ」

「燻す?」

「燃やすな。慰撫、慰めるってことだ」

「やっぱり愛撫じゃないか」

「……ああ、もう、それでいい。それで、勇は何を愛撫してくれるんだ?」


 愛撫ってことは、愛情を込めて撫でればいいんだろう?

 そして山の神とは、山の神って何?

 マラソンのやつ?


「この山の御神体とかないの? それを撫でるってのはどうだ」

「ほう……。そうだな、古来から言われているのは、山そのものだったり、奇妙な形をした木や岩だったりするだろうか。あと、頂上の祠に像があるから、それくらいかな」

「なるほどね、じゃあ、地面を撫でたり、岩を撫でたり、木を撫でたりすればいい訳か」

「ふふ、とんだ変態だな」

「でも彼女ができないのには変えられない……!」


 という訳で、残り半分は山を愛撫しながら登ることになった。

 山肌、つまり地面や、岩はあんまりなかったので、木をなでなでしていると、山田はやっぱりこっちを見ていた。

 何となくじっとりした視線に感じるのは気のせいだろうか?

 あと、頬が赤いのは暑いせいですよね?


「頂上に着いたぞ!」

「祠まで来るといい。休憩しよう」

「休憩!? やったあ!」


 山田も俺も、汗びっしょりだ。

 さっき頬がどうのって言ったけど、俺の頬というか顔だって全部真っ赤だな。

 慣れない運動なんかするから、すぐ息が上がってしまう。

 シャワーを浴びたいけど、山頂にはない気がするね。

 山田にのこのこ着いていくと、小さな祠が見えた。

 ちょっとボロいのがあれだな。

 明日も来て掃除とかした方がいいかも。


「こっちだ」


 山田が手を差し伸べた。

 え、どこに行きなさるんです?

 そっちには何もないんですが。


「ちなみに山の神の満足度は30%だ。どうする? 一生彼女ができなくていいのか?」

「行きまーす!」


 あんなに撫でたのにまだ三分の一以下だと?

 これはもう、御神体と思しき像を撫でまくるしかない。


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