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大松さんと童話荘のみなさん  作者: とらきち
9/11

第9話 おかえりなさいませですの。

 今日は金曜日。大松は天然パーマでメガネをかけている会社の3つ上の先輩である牧野洋太郎(まきのようたろう)と共に飲み屋街を歩いていた。飲み屋街はレトロな建物が多く昭和の世界に迷い混んだかのような場所だ。周りは既に騒がしく中には出来上がっている人もいた。


「牧野先輩。今日はどこにつれていってくれるんですか?」


 ()()()ということは既に何度か飲みに行っている中だ。


 「そうだな。俺が最近ハマっている『メイド居酒屋』何てのはどうだ?あそこには可愛い女の子達がいっぱいいるぞ!!」


 牧野は鼻の下を伸ばして大松にそう教えた。


 (また始まったよ。牧野先輩の女好き。)


 どうやらいつもの光景らしく、会社では有名人であだ名は『変態牧野』と呼ばれるくらいの女好きである。


 「そういえば、メイド居酒屋ってどんなお店なんですか?」


 「大松、メイド喫茶は知っているか?」


 「まあ、一般的な知識でお客様に対して『おかえりなさいませご主人様。』や『もえもえきゅーん』見たいなことをするんですよね?」


 「そうそう!そのメニューがカクテルやツマミやビールっていうだけの話さ。ほらもう見えるぞ。」


 昭和の飲み屋街の雰囲気の中に突如現れるメルヘンチックなピンクの家。実に目立っている。目立っていると言うより不気味である。すると店の扉が開くと中からお客とミニスカートのメイド服に身を包んだツインテールのウェイターが出てきた。


「今日も恋の呪文ありがとうございました。また萌え萌えビームお願いしますね。」


「はい!また楽しみにお待ちしておりますね。ご主人様!」


 ウェイターがニコッと笑うと客の男性はニヤニヤしながら帰っていった。


「ミクちゃん!今日も頑張っているね!!」


「おかえりなさいませ!牧野のご主人様!それとお連れの方は?」


「こいつは大松って言って俺の後輩なんだ。メイド居酒屋初めてらしいから楽しませてやってくれないか?」


 牧野は大松の肩をボンと叩く。


「もちろんです。おかえりなさいませご主人様!」


「お、お願いします…。」


 メイド喫茶にも行ったことのない大松は少し緊張していた。店の中へ案内されると部屋中がピンクで居酒屋みたいにカウンター席と何個かのテーブル席がある内装になっていた。


「ご主人様こちらに座って待っていてくださいね。」


「了解です!!それといつものあの()いる?」


「はい!いますよ!呼んできますね。」


「いつもの()って、ここはそういうお店なんですか!?」


 大松はメイド喫茶を飛び越えてまだ一回も行ったことがないキャバクラに心の準備をせずに来たと思ってすごく動揺している。


「違うよ。俺がこの店にハマったきっかけだからいつも来たら挨拶してんだよ。ほろ来た来た!」


 牧野は大松の後ろに向かって手招きをした。


 (女好きの牧野先輩が可愛いという女性だからどんな人が来るのかな。)


 大松は少し楽しみにしていた。


「あっ!牧野さん!お久しぶり()()()!」


 (ん?()()()?)


 大松は聞き覚えのある語尾と可愛らしい声と大松の頭の中にアパートの隣人の顔がハッキリと浮かんできた。


「牧野さんと…。大松さん!?どうしてここにいるんですの!?」


「えっ!?大松とシンデレラちゃんって知り合いなの!?」


 そこにいるのはいつものジャージ姿とは違うミニスカートメイド服を着ていつもの髪型をしたシンデレラだった。シンデレラのメイド服はサイズが合っていないのか胸のところがパツパツで今にも中身が溢れてきそうな勢いで跳ねている。


「シンデレラさんってここで働いているんですか!?」


「はい!ここは従業員さんとお客さんがとても優しいんですの。それと賄いも出るので、極貧生活の私にはとても嬉しいですの!賄いにはなんとお酒も少々出るんですの!」


(ん?賄い?もしかしたらあの夜も…。)


 大松は引っ越してきた時の夜を思い出していた。


(あの時もきっとここでお酒を飲んで帰宅したんだな。)


「大松さ…。違ったですの!ご主人様何をお考えですの?」


 今まで普通に接していたシンデレラは店のコンセプトを思い出したのか急に大松を『ご主人様』と呼び始めた。


「いや別に何もないですよ。」


「そうだ!シンデレラちゃん!注文を受けてくれるかい?」


「もちろんですの!ご主人様!」


「そうだな。俺はいつもの『ラブラブ愛の呪文オムライス』と『木っ端微塵爆発カクテル』で。大松はどうする?」


(す、すごいネーミングセンスだ…。さすがメイド居酒屋…。)


「大松さんはどうするですの?」


「そうですね…。オススメは何ですか?」


「大松さんは辛いのがお好きですから…。これ何てどうですの?」


 シンデレラが提案したメニューは『地獄極楽石焼き麻婆豆腐』といういかにも辛そうなメニューだ。


「分かりました。ではこれにします。」


「分かりましたですの。少々お待ちくださいですの!!」


 待つこと数分で料理が完成した。両手にお盆を持ちそれぞれ注文したメニューを乗っけたシンデレラが料理を持ってきた。


「まずは牧野さんから、『ラブラブ愛の呪文オムライス』と『木っ端微塵爆発カクテル』ですの。それと大松さんは『地獄極楽石焼き麻婆豆腐』ですの。」


 石のお椀にグツグツ煮詰めている真っ赤な麻婆豆腐が来た。


「シンデレラちゃん!いつものお願いします!!」


 牧野が両手を合わせてお願いした。


「任せてくださいですの!!美味しくな~れ!美味しくな~れ!!ですの!!」


 シンデレラは手でハートマークを作り、オムライスの上で動かし呪文を唱えた。


「ありがたき幸せなり~!!」


 大松は大喜びする牧野を見て、少しひいた。だが、ご飯はとても美味しく満足した晩御飯となったそうだ。


 










 









 

 



 


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