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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
1章『森での出会い』
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9話『町へ帰る』カーウィン視点

 ミリーからの買い出しの依頼を受け、「……また来て」という言葉をもらい、森の中を歩いていた。


 ――依頼を受けちまった以上また行くけどさぁ……この魔道具とかどう説明したもんかなぁ……とりあえずあちこちで聞いて回ると、彼女に迷惑がかかるかもしれないし、そんなことになったら俺がやばい……一応ギルドマスターくらいには話さないとどうしようもないから、その承諾は得たが……


 などと考えながら森の中を進んでいく。木々は多いが、角熊を載せた台座を引っ張っていても普通に歩ける程度には間隔はあいている。


 ――しかしこの魔道具便利だな……このサイズの魔獣をのっけてもこれだけ重さを感じないとは……あくまで軽減って話だったが十分すぎる。しかもこのままでも3日程度もつってんだからなぁ……まぁ引きずってる以上、ただの木材である底部分は削れていってるだろうが……鉄かなんかで補強するか、いっそ車輪でもくっつけたほうがいいか?


 などと魔道具なった台座をちらっと見ながら考える。


 ――貰いはしたが、一応許可は取ったほうがいいか。魔道具の改造なんてそう簡単にできるとも限らねぇしな……悪い子じゃないのは確かなんだろうが。あの威圧感、特に今朝のはやばかった……アレのせいでどうも気が抜けねえんだよなぁ……角熊と戦ってた時の威圧感もやっぱりあの子なんだろうなぁ……


 ため息を吐きながらどんどん町へ近づいていく。


 ――とりあえずはマスターに相談だな……早めに終わらせて、ミリーに頼まれたものを持って行ってやらないと機嫌を損ねられるのも怖いし。






 魔道具のおかげもあって、普段の歩きと大差ないくらいの時間で街に帰ることができた。


 ウェルドの町は石壁まではないものの、木製の柵の様な壁で囲っている。そもそも魔獣は森奥の方でしかでないためそうそう町まで来ないが、普通の害獣は畑の作物を狙って来るのでそれの予防である。

 門というわけではないが、馬車や荷車が通れるように広く開いている場所には、見張りの自警団の人が1人だけ入れ替わりで立つようになっており、何かあった際にすぐに動けるようになっている。


「お、カーウィンか早かった……な?……なんだそのデカさは!?」


 今日見張りに立っていたのは、同年代の仲のいい奴だった。熊の上にバッグをのせて心臓部の傷は見えないようにしてある。


「運が良かったのか悪かったのかこんなんと出くわしちまったが、見ての通りよ」


 と胸をドンッとたたき現状は無傷であることを証明する。


 ――こいつ以上にやばいのがいたけど、変に心配かけて詮索されるのも面倒だしな……


「さすがだなぁ……これでランク7だってんだもんな……8や9のやつにも引けを取らないだろ」


「いやいやもう35だぞ? これから成長するなんてきついもんだし、やつらの強さはこんなもんじゃねーよ。とりあえずギルドに行きてぇから通るぞー」


 ――こいつなら台座の引きずった跡とか細かなことは気にしないだろうが、さっさと人目に付きにくい場所に行ったほうがいいか。


 と苦笑しながら手を振り町に入る。「今度一杯おごってくれよー」という言葉には軽く手を挙げて肯定の意を伝えておいた。


 町に入るとすぐ左手にハンターギルドがある。ここに来る依頼のほとんどは南の森での依頼のため、近い場所に建設したらしい。

 大通りとなる道だけは土魔法でしっかりと舗装されているが、それ以外は軽く砂利を撒いて踏み固めてある程度だ。

 ハンターギルドの前にこの台座を置いたままにしておくのは邪魔だし、なにより目につく。目につくくらいでこんなバカでかいもんをどうこうする人間はこの町にはいないが、魔道具となった台座や角熊の傷跡を見られるのは困るので裏手に回る。


 裏手には解体用の屋外作業場もあるが、まだ昼頃だからか人はいないようだ。俺はそのまま裏手からギルド内に入り、受付へと向かう。


「よう、とりあえず依頼は終わったんだがー……いまリル姉さんいるか?」


「カーウィンさんお帰りなさーい。早かったですねぇ? ギルマスなら奥の部屋にいると思いますが、何かあったんですかぁ?」


 と20代の、間延びしたような独特なしゃべり方の受付嬢が、若干垂れ気味の目で奥の部屋を見て、ギルマスがいるのを教えてくれる。


「ちょっとなー……そんな大ごとじゃないし、あくまで確認したいことがあるってだけだな」


「今回の依頼は貴族の方からでしたもんねぇ」


「そういうこった。だから対象の確認も後でいいから、とりあえず帰ったっていう報告だけだ」


「了解しましたぁー。それじゃあ奥へどうぞー」


 とカウンターの横を通ってどうぞと手を向けてくれる。

 田舎町のハンターギルドなだけあって、人数は少なく大体が顔見知りになり対応もゆるくなる。俺がギルドマスターのことを”リル姉さん”と呼んでも気にせず案内してくれるくらいにはゆるい。


 そもそも端っこの田舎町で、大型の報酬が美味しい魔獣や魔物が少ないこの町は、ハンターを生業としている人はなかなか居着かない。

 俺は10歳の頃にこの町にきたが、ハンターをしているのはこの町で育った人がほとんどで、外部から来た人で残ってるのは、この町で家庭を築いた人くらいではなかろうか。


 ギルドマスターの部屋の前につくと軽くノックし、「俺だが今いいか?」と気軽に声をかける。街になると手続きとかいろいろ面倒らしいが、これで通じるのも田舎ならではのいいところだ。


「あら? カーウィン? いいわよ入って」


 と許可をもらい入室すると、机の上の書類を眺めていた彼女がそれを置き、スラッと伸びた体を軽くほぐすように延びをし、談話用の机に座るよう促してくる。

 彼女は俺がハンターギルドに入った15歳の頃に、彼女の叔母を訪ねてこの町に来て、受付として一緒に入り20年でギルドマスターにまで成り上がった。

 多少なり荒くれもののいるギルドのマスターだけあって、魔法に秀でており戦闘面でも相当強い。何故ハンター側じゃないのか不思議なくらいだ。

 俺より5つ年上のはずだが、まだ20代前半と言われても通じるくらい若々しいのは謎だ。


「ふふ、わざわざギルドのほうで私に話があるとはねー。それでどうしたの? あんたが失敗なんてことはなさそうだし、なにかあったのかしら?」


 と彼女はお茶を用意しながら会話を始める。

 彼女とはかれこれ20年の付き合いで、家も近かったし俺の両親が町を出てからはよく飯を作ってもらったりとお世話になっているので気軽にはなせるが、今回はそういうわけにいかないのでいち早く相談するためにここに来た。


「あぁ……まぁ……ちょっとな……」


 ――さて、何から聞いたもんか……とりあえず依頼の報告か……


「まず角熊狩猟の依頼は無事に終わった、見ての通り今は怪我もない」


「今はってなんか不思議な言い方するわね?」


 とお茶を一口飲み可笑しそうにいう。


「それで聞きたいことがあるんだが、南の森に村なんてあったか?」


 と聞いた途端彼女の動きが止まり、普段はキリッとしている目を見開いていたような気がする。


「さぁ……知らないわね……何があったの?」


 カップを机に置き、今度は真剣にまじめな顔つきでいつも身に着けているブレスレットに触れながら質問してきた。


 ――そりゃあ驚くわな……現地で動いてる俺が一番驚いて困惑してるもんな……


 その村は廃村であったこと。そこにいた少女と魔法の事。気配や威圧感の事。そして戦闘面と魔道具制作の事を話した。

 彼女は驚いたりしつつも真剣に聞き、一瞬悲しそうな申し訳なさそうな表情をみせたが、それは一瞬だけですぐに普段の表情に戻ったため、見間違いかと認識する。


「そんなことが……」


「その彼女に頼まれてあんまり大ごとにはしたくはないんだが、リル姉には事情を話さないと俺だけじゃどうしようもなさそうでなぁ……」


 と頭をかく。


「とりあえずその魔道具をみせてもらえるかしら?」


 そういわれたので、2人でギルドの裏手へと向かった。




 リル姉は踏み台に乗り角熊の傷跡を確認した後、まじまじと魔道具を観察する。


「……これを本当に作ったの? もとからあったとかじゃなく?」


「あぁ。目の前で作業をしてた。魔法のことには疎いから何してるのかはわからなかったが……」


「この大きさの魔石で、この魔法を三日……それに魔法薬や扱える魔法の話もあるし……」


 観察しつつ何かを考えこんでいるので結論が出るまで黙って待っていると、後ろからさっきの受付の嬢ちゃんの声が聞こえた。


「あのぉ、ギルマスー。カーウィンさんの依頼は達成ってことでいいんでしょうかぁ?」


「……え、あ、あぁ。もちろん達成ね。これ見てみなさいよ。これ以上のきれいな討伐状態なんてなかなか見られないわよ?」


 我に返った彼女は受付の嬢ちゃんを手招きし、踏み台の上に立たせて角熊の状況を見せる。


「……ふああぁ。これすごいですねぇ! さすがカーウィンさんですぅ!」


 と興奮した目でこちらを振り返る。倒したのは俺じゃないため苦笑しかできないが、彼女には伝わらなくてよかった。


「それじゃあぁ、手続してきますねぇ」


 ギルド内に戻っていくのを確認すると、リル姉が考えをまとめて話し出した。


「とりあえずこの魔道具は私の私物で、あなたに貸し出してるってことでいいわ。この魔法効率は正直異常だけれど劣化版なら私でも作れなくはないからね……ただそれでも魔石が倍以上の大きさが必要で、一週間ほどかかってようやくってところかしらね……言っておくけど、私はこの国でトップクラスの魔法使いだからね? この町が好きだから別のところに呼ばれるくらいなら姿を消すって言い張って残ってるだけで」


 ――この人、裏でそんな脅迫まがいなことを……リル姉さんは確かに魔法使いとしてとびぬけた能力を持っているんだろうが、そんな人がここまで言うなんてなぁ……技術面もやばいのかあの子……


「まぁいいわ。今日のところはお疲れ様ってところね……また明日……いや今夜夕飯をもっていくから、その時に今後のことを話しましょうか」


 と言われたので軽く返事をし、自宅へと足をむけた。リル姉さんはギルドに入るときもまた何か考え事をしているようだった。


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