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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
1章『森での出会い』
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7話『楽しいひと時』『よくわからない』

魔法薬とポーションをごちゃごちゃに表現してますが、基本的に同じものだと思ってください。

 夕食を終え、食後のお茶としてハーブティーを用意して席に戻る。


 ――ふふふ、こうやってお話するのもしてみたかったんだぁ。


 と若干口元が緩むのを自覚し、だらしない顔は見せられないと再度気を貼る。


「夕飯うまかった。野営時は近くで狩りをして準備することがほとんどだったから助かった」


 ――やった! おいしいって言ってもらえた! 手早く作ったからあんまり凝ったもんじゃなかったけど、すごくうれしい!


「……いいよ。今日は泊っていって」


「なっ!? お、俺は男だぞ!?」


 ――きゅ、急に大きな声出さないでよ、怖いよぅ……それに男性なのはわかってるし、何か問題でもあるのかな?


「……べつに。朝には完治する」


「あの傷が朝には完治だと?」


「……私が薬を作ったから間違いない」


 そのように製薬したのだ、さすがに材料を採るところからしているのだから効果を間違えるわけがない。

 そう告げるとすごく驚いた表情をされた。あぁ今は子供だし信用してないのかな?


「その若さでそれだけのスキルを持ち、あの戦闘能力か……たしかに隠れていたのもうなずける……」


 と何かぶつぶつと言っているが、独り言なんだろうし反応するのはダメだよね。


 改めてカーウィンさんをみる。さすがに目を合わせて会話は無理なので、少し焦点をぼかしたりしてまともに顔を見ていなかったが、こっちを気にしていない今ならなんとか見ることができる。


 きれいな黒髪で、左右は短いが前髪が長く後ろでまとめてるから正面から見るとオールバックみたいな見た目になっている。

 まとめて縛っているといってもうなじあたりに5センチほどですっきりまとまっているようだ。


 運ぶ際に見た感じだと身長は170センチほどと、男性にしては高くはないが低すぎることもなく、あの大剣を扱えることで分かる通り、かなりごつい体つきをしている。


 ――魔力や気で身体強化しなくても、ある程度扱えそうなのはすごいなぁ。私もナイフや短剣くらいなら強化系使わなくてもそれなりに戦えるけど、生身でそこまでの力はないもんなぁ。


 お茶を一口飲みながらそんなことを考える。


 ――しかしこうやってお話しながら夕飯食べて、お茶を飲みながらもお話できるなんて……もしかしてミリアリアのお薬の効果は少しはあったのかな? 思えばあのミリアリアが、私が作ったような耐性ポーションを試してないわけがないし、それでもだめだったってことなんだよね? でも私はこの森でとれる材料で作れる耐性ポーションだけで、ここまで耐えて面と向かってお話できてるし、しっかり効果はあったんだろうなぁ。前の私、ちゃんと克服していけそうだよ、ありがとうね。


 と自分自身にお礼を言うという不思議なことを考えながら、もう一口飲む。彼はまだ何か考えているようだった。


「……ちょっと待ってて」


 そういえば明日の朝の薬を用意していなかったと思いだし、一言だけ告げて製薬室に向かった。




 昼間に作った中間素材が残っているため、ほとんど混ぜて調合するだけなのでさほど時間もかからず完成した。


 ――耐性ポーションはあと一回分ずつしか作れなかったけど、明日の朝の分があればいいからまた採取に行かなきゃね。


 とポーションを手に大部屋に戻る。彼はまだ一口もお茶を飲んでいないようだった。


「……これ、明日の朝の分」


 と治癒ポーションを渡しておく。


「……私も質問、いい?」


「あ、ああ。答えれるものなら正直に答えるぞ」


「……ここから北にある村から来たんだよね?」


「村ー……というよりは町だなぁ。ウェルドっていう町だ」


 私の記憶では名もなき小さな村だったはずだが、この50年で町と呼べる位に発展し、名前まで付けられているらしい。


「……どんなところ? 人は多い?」


 村くらいだったら、この耐性ポーションがあれば買い出しに行けるかもと思っていたが、町レベルとなるとちょっと躊躇ってしまう。


「まぁそこそこだな。商店も何店舗かあるし、この森が近いから武具屋もしっかりとある。小さなハンターギルドもあるにはあるが、この森はそこまで凶悪な魔物がでないから人は少ないな。駆け出しにはちょうどいいだろうが、辺境過ぎてなぁ……」


 たしかに魔素だまりがある森が近いってことは、それなりに狩猟依頼もある。幸い魔獣はでても魔物はあんまりでないようで、魔物より比較的報酬の安い魔獣ばかりだからか、そこまでハンターは寄り付いていないらしい。


「何より西から南へある山脈までがこの国の国土で、山脈のおかげで良くも悪くも他国からの往来はほとんどないからな。」


 この森の北西から南にかけて弧を描くように山脈がそびえたっているおかげで、ちょうどそこが国の境目となっていた。他国から侵略されにくいがその分他国からの貿易もはかどらず、田舎町となっているようだ。


 ――国境に関しては私の知識通りかな……カーウィンさんは、人はそこまで多くはないって言ってるから、買い出しへ行ってみるのもありかなぁ……


「……あなたの親とかは?」


「……俺もきいちまったし、お互い様か……うちの両親もハンターでなぁ……俺が20の頃に別の町に行ったっきり音信不通だ」


 一瞬警戒したような雰囲気を感じたが、諦めたように小さく息を吐き、彼は返答しながら両手を軽く上げ苦笑する。


「……そう……」


 なんか申し訳ないことを聞いたなぁと軽く落ち込む。

 ドクンっと不意に鼓動が強く、速くなりだすのを感じる。


 ――え、うそ、耐性ポーションの効果が切れ始めてる!? 寝るまでは持つように作ったのに見誤った!?


 そう考えるうちにも、徐々に気持ち悪さもひどくなっていくのを実感する。


 ――い、いやこれはアレかな……ミリアリアの頃から魔法薬の実験を自分でやってたから、耐性が付いちゃってて効果が持続しにくくなっちゃってるのかも……


 まだそのようなことを考える余裕はあるが、さすがにこれ以上効果が薄くなったまま会話するのは難しい。


 ――耐性ポーションを……ダ、ダメだぁ。これ明日の朝飲まないと、お見送りできないぃ……うぇっぷ……今日はもう寝るしかないかな……


「……寝る……この部屋を適当に使って」


 とだけ言うと寝室に逃げるように速足で向かう。


「お、おう……やべぇ、なんかまずいこと言ったか……?」


 と後ろから聞こえるが、もう会話するのはきついので返答することなく寝室へと飛び込んだ。


 ――ふえぇ……せっかくお話できてたのにぃ……いや、また来てくれるって言ってたしこれからまだまだ機会はあるよね!


 と寝るようのゆったりとした服に着替え(ミリアリアの頃のだからすごいダボダボなだけだが)ベッドに横になる。


 ――想定外だけど人と会うことになってお話もできたし、今日は楽しかったなぁ……うえ……思い出しもダメなのね……つらいぃ……もう寝ちゃおう……


 とさっさと眠るのであった。











 ミリーが食器を片付けに行って、お茶をもって戻ってくる。


「夕飯うまかった。野営時は近くで狩りをして準備することがほとんどだったから助かった」


 狩りができなかったときのために、多少の保存食は持っているが、普段はそうやって食料を確保していた。ミリーが作ってくれた夕飯は、空腹状態で食べるようにがっついて食べてしまうほどうまかったのも事実だ。彼女の威圧感すら気にならないくらい夢中になってしまっていた。


 ――お茶を二人分出してきたってことは、まだ何かあるんだよな……かなり暗くなってきたから、早めに出ないと町に着くのが夜中になってしまうんだがなぁ……


「……いいよ。今日は泊っていって」


 そう思っていると、予想外の言葉が飛んできた。


「なっ!? お、俺は男だぞ!?」


 ――まてまて、さすがにそれは不用心すぎないか!? いや確かにこの子なら返り討ちにすることなぞ造作もないことか? いやいや確かに手を出すつもりなんてないし、そもそも見た目的に俺に子供がいたら同い年くらいだろう。そんな子に手を出せるわけもないが、世の中にはそんな輩もいるっていうのに……


「……べつに。朝には完治する」


「あの傷が朝には完治だと?」


 そんなことを考えているとさらに衝撃的な言葉が告げられる。


 ――たしかにさっき塗り薬を塗った時ですら直りかけていた……ということは事実なんだろうが、なんだこの即効性のある薬は……副作用とかすごい不安になるんだが……


「……私が薬を作ったから間違いない」


 ――ちょーっと待ってくれ、驚くことが多すぎてキャパオーバーしそうだ……これらの薬をこの子が作った? たしかにこの子は親もおらずここに一人だと言った。言ったが、この薬を作った? 買ったりもらったり、この家にもとからあったとかではなく? 嘘だろ?


「その若さでそれだけのスキルを持ち、あの戦闘能力か……たしかに隠れていたのもうなずける……」


 ――角熊を素手で瞬殺できる戦闘能力を持っていて? あの大怪我を一日で直す薬が作れて? 魔法もいくつも使える。確かにこれは世の中に出たとすると、いろんな面倒ごとに巻き込まれてもおかしくはない、それで隠れていたのだろうか?


 ちらっと様子を窺うと、彼女も何か考えているようで若干下を向いていた。


 ――見た目は10歳ちょっとくらいで、銀髪に近い薄紫の髪は肩くらいまで伸びており、目元もクリクリッとしていて顔立ちもよく可愛らしい。話すときはすごい睨まれるから目つきと眉間の皺がすごいことになるが……この見た目でこの技能……間違いなく面倒ごとに巻き込まれる。人さらいとか暴力事は何も心配いらないだろうが、権力が混ざると面倒か? いやこの力があればこの国じゃなくてもやっていけるだろうし、そこも問題ないのか?


「……ちょっと待ってて」


 というとミリーは別の部屋へを入っていった。


 ――しかし、なぜ隠れていたのに出てきたんだ? その能力で何をするんだ? 彼女自身記憶がなかったり曖昧な部分もあるし、ただの気まぐれか? うまくはぐらかされてる気がするが……情報を得てから報告しようと思っていたが、報告できることがほとんどないな……廃村が現れました? そこに魔法が使え、高性能なポーションが作れ、角熊すら瞬殺でいる少女がいましたが、住み着いた理由や今後の行動は不明です? うーん……信用してもらえないのではないか? 仮に信用されたとして、ミリーの扱いはどうなる? もし領主の耳でもはいったら、審議を確かめて抱え込もうとする可能性もあるか……うちの領主のことはよく知らないが、拒否られたら私兵を動かすような貴族もいるって話も聞くし……ミリーと私兵がぶつかった場合……まぁミリーの圧勝か……こんな辺境の領主の私兵より、俺ら上位ハンターの方が強いこともあるし……これは報告しないことも視野に入れないとだめか?


 長々を考えているとミリーが戻ってきてポーションを差し出してくる。寝起きに飲んでおく用の治癒ポーションらしい。


 ――いや、助けてもらったんだ。彼女から動くまで、俺は下手に報告とかして動かないほうがいいな。


「……私も質問、いい?」


 彼女の今後の行動が少しでもわかるかもしれないと思い、了承する。


「……ここから北にある村から来たんだよね?」


 ――村……まぁ確かにそこまで人口がいるわけじゃないが、ここ25年ほどで発展していって、小さいが一応町っていってもいいレベルにはなってるな。


「……どんなところ? 人は多い?」


 ――人口なぁー、ただのハンターにはそこまで把握できないが、商店や武具屋、ハンターギルドまであるし田舎町にしてはそこそこいるんじゃないか? ただ、西と南の山脈のせいで人通りは悪いから、あくまで田舎町ってところだな。


「……あなたの親とかは?」


 ――まって、なんで俺の親? 町の人数といい俺の親といい、人質とかに使って何かするためなの? いや、深く考えすぎか? まぁ俺も聞いちまったし、答えないと反感を買いそうだから答えるしかないが……残念ながら親はどっかに行って帰ってこないしな。


「……そう……」


 ――え、そんな落ち込むの!? 人質として期待できないとか利用できないって思ったのか!? って、ちょっと待って、マジで待って! なんでそんな徐々に威圧感上げてきてんの!? そんな気に食わないことだったの!?


「……寝る……この部屋を適当に使って」


 とだけ言うと彼女は寝室らしき部屋に入っていった。


 ――なんか荒々しく入っていったし、気に障ったんだろうな……いや、威圧感はすごかったが物理的には無事だったからセーフか……? しかし結局泊ることになっちまったな……こっそり帰ってもこの森でハンター業する以上、今後合うこともあるだろうし、その場合に出くわした時が怖すぎる……おとなしく泊まらせて貰ったほうがいいか……別の部屋にいるからか威圧感も幾分ましだし……


 と思っていたら急に威圧感が消えた。


 ――もう寝落ちたのか? というか壁越しで感じる圧じゃねぇだろあれ……まぁなんにせよこれなら俺も寝付くことができそうだ……


 看病してもらっていたところをそのまま使わせてもらい、今日は寝ることにした。

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