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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
1章『森での出会い』
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6話『御馳走する』『世話になる』

 台所へ移動し、上機嫌で夕飯の用意をする。


 ――怒られるどころか感謝されちゃった! 警戒するのは当たり前だし、そのうち解いてくれるかもしれないし、耐性ポーションのある今ならある程度お話もできるし、ちゃんとできてるんじゃないかな私! ただこの耐性のお薬は素材の関係で半日持てばいいほうだから、明日の分も作っておかないとなぁ


 と思いつつ、鍋に具材をいれ調理を進めていく。

 ある程度の保存のきくものはあるがパンなどはなかったので、昨日狩ってきたイノシシの肉を使ってスープと串肉を作っていく。


 ――こんなことになるなら、パンも作っておけばよかったなぁ……今からじゃ時間かかるし、朝には食べられるように仕込んでおこうかな。


 と片手間にその準備も済ませていく。今夜はあの人も泊めるつもりだし、朝食は多めにしておいてあげよう。




 あらかた調理が終わりスープを煮込んでいる最中に様子を見に行くと、彼はポーチの整理と確認をしていた。

 何かにビクッと反応して警戒した様子になったが、作業はそのまま続けていた。


「ち、ちゃんと塗ったぞ、た、助かった」


 彼は塗り薬の入っていた空の容器をこちらに渡し、再度荷物の確認を始めた。


「……それは……?」


 ふと彼のポーチから出てきた魔法石が目に留まる。【リフレクト】の魔法が込められていたようだが、経年劣化しているのか、うまく発動できないようになってしまっていた。


「あぁ……これは10年ほど前に金をためて、保険として購入したやつだな。なかなか値は張るし、今まで使うこともなかったからお守りみたいなもんだ」


 ――なるほど、お守りか。それなら機能的に使えなくても問題ないね。大事なのはそれに込められてる願いや想いだもの。


 彼はほかにも治癒ポーションみたいなものや、塗り薬、野営用の道具などを出して確認していく。


 ――あのポーション効果あるのかな……あぁ、ちょっとした痛み止めとして持ってたのかな? 塗り薬は中身が見えないからわからないけど、さすがにちゃんと準備してあるんだね。


 まじまじと出していく道具を眺めながら考えると、大剣のことを思い出して、角熊と一緒においてあったそれを持ってくる。


「……はい」


 と柄の部分を彼に向け大剣を差し出すと、目を見開きゆっくりとそれを受け取った。


「お、おう」


 受け取った大剣の状態を軽く確認し、横の壁に立てかける。


 ――あの大剣も特に魔法付与もされてない普通の大剣だね。素材はただの鉄よりはいいみたいだから丈夫だけど、それだけの剣かな。鍛冶には疎いけど付与自体はできるから、何かしてあげようかなぁ。


 と剣と彼を交互にみつつ考える。勝手にすると怒られそうだし、それはまたあとで考えようと思い、夕飯の準備に戻った。




「……どうぞ」


 と夕飯を机に並べ彼もさそう。


「俺も食っていいのか?」


「……いいよ?」


 どうしてそんなことを聞くのだろうかと思いつつ、コテンっと首をかしげながら肯定する。

 彼は席に着くとゆっくりとスープを口にし、一口食べた後は早いペースで食べていった。

 傷が早く治るように薬草も使っているし、気に入ってくれてるみたいでよかった。と若干口元が笑うのを認識した。


 ――誰かと食事した記憶なんてないけど、心地いいなぁ。彼はいい人そうだし、今後遊びに来てくれたりしないかなぁ。あぁ、これなら回復魔法ももうちょっと手加減して、3日ほどいられるようにすればよかった…………いやいやいや! そんなことしたら嫌われるかもしれないし、できる限りはちゃんとしないとね! もっといい薬草が近くにあればすぐに元通りにもできるんだけど、ないものは仕方ないから今はそれで許してね?


「……ごめんね?」


 と彼に聞こえるか聞こえないかくらいの声量で謝りつつ、私も夕飯を食べ始めた。




 しばらくお互い無言で食べていたが、彼が唐突に「聞きたいことがあるんだがいいか?」と聞いてきたので、断る理由もないし、むしろもっとお話ししたいので頷いた。


「まず、角熊から助けてくれたこと、そのあとの高レベルな治療の件、本当に感謝する。あのレベルになると手持ちの治癒薬じゃこんなすぐには直らなかっただろう。それで代金なんだがどれほど用意すればいいだろうか」


 ――改めて感謝されてしまった! しかも代金……? お金かぁ…… 帰りに適当に拾ったもので3時間ほどで作ったやつだし、そもそも私が原因な気がするからお金は取れないなぁ……


「……お金はいい。また来てくれれば」


 むしろ治療は迷惑料ってことで、またお話に来てくれればそれがいいなぁ、と淡い期待を込めて提案する。


「……わかった、受け入れよう……」


 ――まさか承諾してもらえるとは! やった、これでお話相手ができた! ……てことはいつ来てもいいように、耐性ポーションとおもてなし用のあれこれを常備しておかなきゃね!


 とうれしくなって若干頬が緩むのを感じる。


「それであんたは……いや俺の名はカーウィンだ。名前を聞いてもいいか?」


「……私はミリー」


「そうか、ミリーの親とかがまだ帰っていないのに食べてていいのか?」


 ――あ、そっか私は今子供だもんね、きになるよね。といってもなぁー、親なぁー……実際の幼少期って200年近くも前だし、そもそも孤児院で育ったから知らないしなぁ。その孤児院も今となっちゃあるのかどうかわからないし……


「……親はいない。私ひとり」


 考えた末に正直に答えることにした。


「っ! そ、そうか……悪いことを聞いた」


 別に子供相手に聞くことだし、変なことじゃないと思うんだけどなぁと思いつつ「……べつに構わない」と告げ、また一口食べる。


「それじゃあここがどこかわかるか? 俺はかれこれ20年はこの付近に仕事で来たことあるんだが、こんなところがあるなんて気づけなかったのはさすがにおかしい」


 ――え、そうなの? あぁ……認識疎外の結界貼ってた気がするなぁ……ミリアリアからミリーになってすっかり忘れてたけど、ちょうど魔道具の魔力切れが起きちゃったかぁ……まぁ私も忘れてたし、わからないということにしておこう。


「……わからない、気が付いたらここにいた」


 実際いつからここにいるのか、なぜ隠蔽魔法を使っていたのかは思い出せないので嘘は言っていない。しかし町に行けば50年前くらいの記録なら残ってるのでは? とも思ったが、彼はここのことを知らないらしいし、ミリアリアだったころになにかしてそうだからなぁ……


「そうか……ミリーは……いや、何でもない」


 そういうと彼は残っていたものを掻き込むかのように食べ始めた。










 彼女が出ていき薬も塗ったところで、荷物の確認を始める。

 気絶していた上に、戦闘した後だからちゃんとあるかの確認も兼ねていた。


 ――あの子が盗ったりするかもまだわからんしな……


 そうしていると彼女が戻ってきた。

 わざわざ隙ができたら持ち物の確認とか、盗られたかもと疑っていると取られてもおかしくない状況に若干焦る。


「ち、ちゃんと塗ったぞ、た、助かった」


 とりあえず薬の件の礼を言い、ごまかせたかどうか様子を窺う。


「……それは……?」


 ――この魔法石か……盗るならこれが一番高価だが、そのつもりならわざわざ聞かなくてもわかるだろう。


「あぁ……これは10年ほど前に金をためて保険として購入したやつだな。なかなか値は張るし、今まで使うこともなかったからお守りみたいなもんだ」


 ――まぁ、今日使おうとしてたが結局使わずに済んでるし、本当にお守りのようなものだな……というかウソをつくと今にも攻撃されそうで怖い。なんでそんな臨戦態勢のままなんだよ……


 一番高価なものを見られてしまった以上、ほかは見せても問題ないなと次々と確認していく。

 途中で彼女はどこかに行き、俺の愛剣を持ってきたかと思うと軽々と柄をこちらに差し出してきた。


 ――俺の愛剣を軽々と扱うのか……あんたの身長よりでけぇんだぞ……しかし、返してくれるのか? 初対面のやつが武器をもって家の中にいても平気なのか? いやまぁその雰囲気からわかるわ、大丈夫だな……むしろ武器でもないと俺のほうが不安だわ……


 それを受け取り、彼女が再度席を外しているうちに、広げていた荷物を詰めなおす。もちろん盗られているものなんてなかった。




「……どうぞ」


 彼女は戻ってくるなり、机の上に料理を並べ俺を誘ってきた。それは親の分かと思っていたが違うらしい。


「俺も食っていいのか?」


 と聞くと「……いいよ?」と首を軽くかしげながら即答される。


 ――仕草はかわいらしいが、その睨むような目つきと無表情なのか不機嫌なのかわからない表情でそれは怖え……


 俺は言われるがままに彼女の対面にすわり、すごくいい香りのするスープを一掬い取る。


 ――勧められたうえで、そこまで威圧感を含んだ目で見られてちゃ、食うしかないわな……


 とそれを口に運んだ。


 ――めちゃくちゃうまい……肉も臭みもないし柔らかく、何より落ち着く優しい味だ……俺はこんな料理を作る子を警戒していたのか?


 と手が止まらなくなり、次々口に入れていく。


「……ごめんね?」


 と途中で聞こえて、はめられたか!? と焦るが手遅れなので諦めてそのまま美味しくいただくことにした。


 ――逆らってもどうしようもないしな……




「聞きたいことがあるんだがいいか?」


 ある程度もくもくと食べた後、料理の効果で警戒が緩んでしまったのか、そんなことを口走った。聞きたいことは確かにあったので、そのまま彼女の返答を待つと頷いてくれたので質問を投げかけることにした。


「まず、角熊から助けてくれたこと、そのあとの高レベルな治療の件、本当に感謝する。あのレベルになると手持ちの治癒薬じゃこんなすぐには直らなかっただろう。それで代金なんだがどれほど用意すればいいだろうか」


 さすがにこんな高レベルな治療を施してもらって、睨まれて威圧感がすごいから、などと礼を欠くようなことはしたくない。そのうえで使ってくれた薬代がいくらになるか見当もつかなかったので、本人に聞くことにした。


「……お金はいい。また来てくれれば」


 ――あんな薬を使っておいて代金を取らない? あぁ子供だから価値がわからないのだろうか……そうなると親に聞くしかないが……


「……わかった、受け入れよう……」


 今はいなくても帰ってきた親か、次来た時にでもきちんと払おうと考え、次の質問をしようとした。


「それであんたは……いや俺の名はカーウィンだ。名前を聞いてもいいか?」


 今更ながら名乗ってもいないし、この子の名前も知らないと気が付き、一応尋ねると素直に答えてくれた。


「……私はミリー」


「そうか、ミリーの親とかがまだ帰っていないのに食べてていいのか?」


 この家には俺とミリーの気配しか感じないことを不思議に思い、そのうえで先に食べていることを尋ねる。


「……親はいない。私ひとり」


 ――え、ということはこの子だけで生活しているのか? いや俺は昼間何を見た、あれだけ魔法を扱える少女だぞ! しかも角熊を一撃で殺せる力も持っているんだぞ? 料理でごまかされていたが、彼女はあれらのことができる子だ。そんな子が価値を知らないはずがない。ということは……お金はいいから俺に何かをやれってことか? あの力があればできないことなど……いや、そもそもここは今まで知る人がいなかったってことは、意図的に魔法を使い隠れていた? それを解いたのは何か目的ができたためか? ……それでそこに引っかかったのが俺か……


「っ! そ、そうか……悪いことを聞いた」


「……べつに構わない」


 一応不審がられないように、あたりさわりのない返答し思考を巡らせる。


 ――この子が何をしたいのかわからないが、この場所を人に見られても問題はないことなんだろうな。ちょっと探りを入れてみるか……


「それじゃあここがどこかわかるか? 俺はかれこれ20年はこの付近で仕事をしていたし、来たこともあるんだが、こんなところがあるなんて気づけなかったのはさすがにおかしい」


 と正直に投げかける。町の資料などにもこんなところに村があったなんてなかったはずだし、何よりそれなりに離れているとはいえ、俺が気づけなかったのがおかしい。


「……わからない、気が付いたらここにいた」


 ――いつからいるのかもわからない……か……記憶が抜け落ちているのか、演技なのかわからないな……だんだんと眉間にしわが寄ってきてすごい不機嫌そうな表情になってきているし、これ以上うかつなことを聞くのは俺の身が危険だな……


 と残っていた夕飯を掻き込むように食べた。

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