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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
3章『新たな家族』
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58話『今のところ考えるのをやめた!』

 あの後引き続き行っていた製薬の結果は、いつもの効果までは持っていけたため手間を省くことは可能だという結論に至った。


 といっても試行回数も少ないので、他の手順で製薬すればもっと効果が高いものが作れるのかもしれないが、今日のところはおまけ程度に考えていたため、後日改めて試してみようということになりお開きとなった。


 結局お試しで抽出してもらった液体以外に、葉だけとか根っこも含めて抽出とかも試していたため、薄暗くなり始めていたというのもある。


 ――やっぱり色々実験してると時間が溶けちゃってるなぁ……さて、夕飯の準備をしなきゃね。


 そう思いつつ3人で台どころに行き料理の準備をする。


 台所での作業時間はそれほど長くないので、壁掛けのランプに火をともすのではなく、【ライト】の魔法で小さな光源を空中に浮かせて明りを確保した。


「マーシャもこれ使える? あ、魔力は抑えめで……急に閃光とかやめてね……」


「これくらいでしょうか?」


 そう言うと私が出したものと同じくらいの光量の光の玉が指先に現れる。


「そうそう。ランプがあるとはいえやっぱり燃料も使うから、魔力が余裕あるなら【ライト】でもいいかなぁと。あ、余裕があるならだからね?」


「はい、全く問題ありませんので、隣の部屋にも設置してきます」


 そう言うと大部屋の方を除き、中央くらいの位置に拳大の光源を浮かせて戻ってくる。


 ――私も夜の間とか持続系の魔法設置しても平気かな? かれこれ色々魔法も使ってみてきたけど、全く減ってる感じがしないんだよね……どうなってるんだろこの体……


 自分の体ではあるが昔の感覚は覚えていないため、全く減らない自身の魔力量に対して苦笑いする。


「まぁ……減らないに越したことはないんだけどさ……それに魔法は使えば使うほど育つっていうしね!」


 ――前向きに考えてみたけど、マーシャたちは魔石に充填してる以上上限は伸びないだろうし、そのあたりは気を付けてあげなきゃね。


 そのあとは3人分の料理をしながら昨日とは別の料理を教え、夕食の後は3人でお風呂に入ることにした。


「ゴ、ゴオ?」


「ボクもいいの? って言っておりますが」


「いいよいいよ。ただ、お湯の中で溶けるのはやめてね……」


 ゴウは水の中に入ると溶ける可能性があったため、硬化魔法等と起動してもらってから入ってもらわないといけない。


 マーシャに関しては肌の質感を出すために常に展開してあるので、お湯につかる程度はどうということはない。


 服をぬいで、マーシャの服を脱がせた後サッと洗って湯船に入る。


 今日もマーシャに頼んでお湯を張る練習をさせたのだが、1発で成功したため自分で張った時くらいの量になっていた。


 それでも小柄な女性と子供の2人と、1メートルサイズのゴウが入ると、だいぶ水かさが上がって、小さい私が普通に座ると顔まで浸かってしまうので、マーシャの膝の上に座って入る形に落ち着いた。


「ふみゃぁぁ……マーシャ達と入るならもうちょっと広めの浴槽も作る?」


「お嬢様がそうしたいのでしたら構いませんが、私は近くにいられるのでこのままでも構いませんよ」


 ――な、なんてこと言うのこの子……朝の服の愛着の件と言い、急に人の心を掌握しに来てるんだけど……そういえば昨夜は私の本読んでたって言ってたよね……まさかその手の本があったのかな。あっても不思議じゃないなぁ……あったとして別に読んでもいいんだけどさ。


「でも急に育つからびっくりする……」


「畑の話ですか?」


「いやいや、何でもないよ。畑もちゃんと育つといいね」


「ゴオ」


「お兄様は大丈夫といってますし、私もそう思います」


「そっか、うまくいったら種類も増やしたいね」


 ゴーレムとはいえ、ヒトに限りなく似せて作ったマーシャと楽しく会話できたのもあり、私の記憶上最長の長風呂をしたのも仕方ないと思う。






 翌日、朝食を食べた後畑の様子を見に外に出てみた。


 昨日植えた肥料無しの苗は特に変わらずだったのだが、肥料を与えていた薬草は収穫できるほどに育っていた。


 ゴウ作の肥料でも充分成長速度がおかしいのだが、マーシャが作った肥料を使った薬草は心なしか葉がでかく立派になっている。


「いや、昨日お風呂で似たようなこと言ったけど、急に育っててびっくりする。マーシャのは特におかしい……」


「ゴオ?」


「いえ、お兄様の薬草も元気いっぱいで素晴らしいと思います」


「そうだね、ゴウの方も急成長で驚いてるよ。んでマーシャなにかした? といっても原因なんてわかるかどうか……」


「肥料に魔力を混ぜてありますが」


「うん、それだね」


 昨日植えた薬草はほとんどの魔法薬の材料となる水薬に使われる薬草で、自然にある魔力を蓄えて葉の効能をかけ合わせて調合することで完成するものだった。


 ――肥料に魔力が込められているから吸収しやすくてこうなるのか……いや? それだけだと魔力量は増えても急成長はしなくない?


「どうかしましたか?」


「ううん……ゴウもマーシャもすごいねって思ってたんだよ」


「ゴオ!!」


「ありがとうございます」


 ゴウは両手を上にあげて喜びを表現し、マーシャはお辞儀をしてお礼を言ってきた。


 ――うん! この件に関して考えるのはやめた! この子たちの肥料はこういうものだと思っておこう! 機会があれば博士に持っていこう!


 今は耐性ポーションを飲んでいないため、博士の事を考えて若干気持ち悪くなったが、マーシャ達に心配されるのも悪いので何とか堪えた。


 気付かれていないかとマーシャ達の方を見ると、水魔法を使って畑に水を撒いている途中で、昨日から魔力補充をしていないことを思い出した。


「ゴウ、魔力入れてあげるからおいでー」


「ゴオ!」


 ズルズルと近寄ってきた後、平べったいコアを出して私に見せてくる。そのコアとなる魔石に手をかざして一杯になるまで入れてあげる。


「うん、オッケーだよ。昨日は抽出もしてもらったりお風呂で硬化魔法とかも使ったから、ちょっと減ってたね」


「ゴオ」


 ペコリとお辞儀をするゴウの後ろで、順番待ちの列のように並んでいたマーシャが交代で一歩前に出てくる。


「うん、マーシャもコア出してー」


 というとワンピース状の服を着ているのを見て、どうやって補充しようかと考える。


 私が考えている間というか、考えている隙に裾からバサッとめくりあげて胸元を見えるようにしてしまっていた。


「うひゃぁ! ちょ、ちょっとまって! 前! 前はまだ駄目!」


 顔を赤くしつつ顔を背けて手を振って戻してと合図する。


「ですが、魔石がある場所は……」


「知ってるよ! 誰が作ったと思ってるの! せ、背中! 背中側に出して! む、むむ、胸は凝って作ったんだから崩さないでほしいな!?」


「なるほど、分かりました」


 そう言うと一旦裾をおろした後私に背を向けるように振り返る。


 ――ううぅ……お風呂では割と平気なのになぁ……いやいくらお風呂でもそんな凝視するようなことはしないし、視界に入る程度だし! 昨日は膝の上だったから、そもそも視界に入ってる時間もほとんどなかったからかもしれないけど!


 などと言い訳じみた言葉を頭の中で考えつつ、マーシャの背中を見る。


「……よく考えると、直接触れなくてもいいんだから、こういう薄い布地なら出してもらえてさえいれば、このままでいいのでは?」


「……そうですね」


「マーシャわかってた?」


「……いえ?」


「まぁいいんだけどさ……それじゃあコア出してー」


「はい、出しました」


 そう言うので、襟の隙間から2つの魔石が出ているのを確認し、そっと手を添える。


「……あれ、全然減ってないんだけど……料理の時に【ファイア】とか【ライト】つかったよね。しかも同じように抽出をしてたゴウが減ってたのに……」


「私の感覚の話ですがよろしいですか?」


「うん、何かヒントになるかもだから言って」


「大気魔力吸収が原因かと」


「確かに少しでも燃費よくするために入れてるけど……」


「【ファイヤ】」


 マーシャが唐突に空に向けて拳サイズの打ち上げる。


「ちょ! びっくりした」


「これくらいであれば、周りに魔力があればひたすら打ち続けられそうなほど回復しております」


 ――えぇ……そんな強力な術式にしたっけ……確かに微動だにしてない……魔石サイズも比較的大きめのが2つあるから、余裕あるし結構書き込みはしたけど……


「それはゴウにも書き込んだはずだしなぁ……」


「おそらくコアが2つあるのも原因なのでは?」


「確かにタンクとなってるほうと、色々書き込みまくったほうとあるけれど……うぅーん、すぐに答えは出ないかなぁ……」


「まぁこれからじっくり私の事を調べていただければよろしいかと」


「言い方! いやまぁその通りなんだけど!」


「ゴオ?」


「いえ、お兄様も見て貰いましょう」


「ゴオ!」


「うん……もちろんゴウもちゃんと見るよ? むしろ魔力充填が必要なゴウの方が見ること多くなりそう……」


「そ、それは……これはお嬢様が寝ている間にどうにかして魔力消費する手立てを考えなければ……」


「聞こえてるし、もう手遅れだよ。まぁ昨日は魔素の濃い森に行ったからっていう可能性もあるし、マーシャのこともちゃんと見るから安心して?」


「本当ですか?」


 なぜか上目遣いでさみしそうな表情のマーシャが振り返ってくる。


「昨夜は何を呼んだのか聞きたいけど怖くて聞けない……本当だよ本当」


「よかったです。あの本に書かれていることも本当だったのですね」


 ――どの本だろ……うちにどんな本があるか把握してないからなぁ……まぁ感情豊かになってくれるのはいいことなんだけど……そのうちザーッと確認だけしないと怖いかも……


 と考えつつ畑の世話をして、今日も薬草を採りに森へ入るのだった。

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