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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
3章『新たな家族』
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57話『育つといいなぁ』

 今回採取しようと思っていた量を採り終えた私達は家に帰った。

 耐性ポーションのストックがないと言っても、使用量自体が少ないので薬草の量もそこまでではない。


 道具を大部屋に置いた後、台所を通って裏手の作業場に出る。

 作業場には東屋のように屋根だけある場所に解体等で使う台があったり、薪などを入れているだけなので大きくはないが倉庫もありはする。


 その近くに小さな畑がある。

 植えているのは私もよく飲んでいるお茶の葉が採れる植物だ。


 その畑はもともとリルの家だった建物に沿って作られている、家庭菜園規模なので小さいのも仕方ない。

 その植物の葉が付くのがかなり早いため、数が必要ないというのもあるが。


 今回の採取で持って帰った薬草は、この畑の隣に新しく作って育てようと考えていた。


 ――一応ちゃんと育ったとしても、どれくらいのペースで採取できるかわからないし、マーシャ達の作る肥料の効力も気になるから実験的なものだね。


「こちらの建物はまだ大丈夫そうですが、その隣の崩れている建物は片付けますか?」


 元々リルの家だった建物は古くなっているものの崩れたりしていることはないが、他の建物は朽ちて崩れているところもある。

 リルの家だけ無事なのは、結界用の魔導具が地下にあるため、丈夫に作られているからかもしれない。


「うぅーん。一応リル、元の村長に聞いてみてからにしてほしいかな」


「かしこまりました。では先程仰っていた肥料の材料を適当に回収してきます」


 そう言って再び森へ行こうとするので慌てて呼び止める。


「あ、待って! お昼には早いけど量も増えるから早めに作ろう。それを材料にして試しに作ってみてほしいんだ」


 ――もちろん足りないなら森に取りに行ってもらわないといけないけど、出来るなら普段食べたりするものだけで作って欲しいしね。


 とマーシャが森で落ち葉やら死骸を口にしている姿を想像して苦笑する。


「どうかなさいましたか?」


 台所に向かおうとしていたマーシャが私の表情に気がついて聞いてくるが、「なんでもないよ」だけ言って昼ごはんの準備をするためにみんなで台所に入った。




 調理自体は特に凝ったものを作ることは少ないので、昨夜と同じように簡単なものを教えた。

 マーシャには味見もしてもらい、味付けも覚えてもらう。

 量自体は普段の3倍とまではいかないので、リルとカーウィンさんが来ているときに比べると少ない。


 ――マーシャは私より大きいし、一緒に食事することも考えてたから胴体に少し空間もあるけど、ゴウはそういうふうに作ってないし、小さいからあんまり取り込むと思い切り外観に出るしね……


 そう思いながら食器を運ぶゴウと料理を運ぶマーシャを後ろからみながら、変に肥大化したゴウを想像すると可笑しくなって小さく笑う。


 料理を机に置いてもらって、席につくように言ったあと私も自分の席に座る。


 ゴウは椅子に座るというより乗る形になるのを躊躇ったのか、胴体を伸ばして腕がはえている部分まで机の上に出した。


 食前の祈りをしたあとに3人で食べるのだが、マーシャは口から食べ物を取り込むことを知っているため問題なく、ゴウもそんなマーシャを見て同じように食べ始めた。




 特に食べることに関しては教えることもないので普通に食べたが、まだ反応が薄いとはいえ会話しながら食事ができて楽しかったので満足だった。


 私たちには丁度いいくらいの量でもゴウには多かったようで、食前に比べて大きくなっている気がするが、元が小さ目なので多少膨らんだところで問題はないだろう。


 後片付けをしたあと、畑を作るためにみんなで外に出た。


 畑を作ると言っても今ある家庭菜園規模のものを新たに作るだけなので、石で外枠を固めて内側に土を盛って完成ではある。

 ここから肥料を加えて混ぜたあとに苗を植えていくことになるので、早速マーシャとゴウに肥料を作ってもらう。


「今のご飯でどれくらい作れそう?」


「お兄様と合わせても1つか2つ分ですね。小さい畑とはいえ、あの量では足りませんね」


「流石にあれだけじゃそうだよね。大丈夫だよ、成長速度の差も見てみたいから、ゴウの肥料とマーシャ肥料、んで肥料なしの3種類で植えちゃおう。今後また肥料が出来たら1つだけ肥料無しのままで他に混ぜればいいから」


「わかりました」


「ゴォ」


 そういうと2人は新しく作った畑に近づいていくので横から見させてもらう。

 ゴウがヌッと畑部分を上から覗き込むと、体内で作った肥料を口からサーっと出して、手で土と混ぜ合わせ始めた。


「マーシャ、ストップ……」


 隣でマーシャもゴウと同じような姿勢になっていたため、急いで止めると不思議そうな顔でこちらを見てきた。


「何でしょうか。お兄様より食べたので肥料の量は少し多いですが、きちんと出来てるはずです」


「いや、そっちは育ててからわかるところだしいいんだけど、どうやって出そうとしてた?」


「お兄様のように口からですが?」


「うん、別の方法で。ゴウは見た目的にマッドゴーレムだしいいんだけど、マーシャがああやってるのは見たくないかな……」


「では……ヒトと同じように下から?」


「それは更にやめてほしいかな!? 普通に手から! 森で取り込んだときのように手から出して!」


 立ち上がったマーシャがスカートの裾に手を伸ばそうとしていたので、その手を押さえて全力で止める。


「ヒトらしくありませんがよろしいのですか?」


「……いいよ……土魔法で手から土を出すやつもあるし、別に変な光景ではないよ……土を口から吐いたり、畑に直接トイレしてるような絵面より全然普通だよ……これから肥料出すときは手からだしてね!」


「その方が今後袋に入れるのが簡単になるので、お嬢様がいいのでしたらそうします」


 そういうと手のひらから肥料を出して土と混ぜ合わせ、それぞれが1本ずつ苗を植えた。端っこにマーシャでその次がゴウ、その隣に私が植えて、その先からは肥料無しでの栽培となる。


 ちなみにここに植えたのは、耐性ポーションにも回復系ポーションにも使う、大本の液体の素材になる植物にした。


 他の薬草も植えてもよかったのだが、この森にはあちこちに生えているためわざわざ育てなくてもすぐ入手ができる。

 今回はマーシャ達の肥料の実験がメインで、育つ速度が早ければ他のよく使う薬草も育ててみようと思っている。


 畑に水を撒いた後、森で薬草から抽出していた液体を使ってポーションを作ってみることにした。


「うぅーん、さすがに濃いねぇ……」


「普段はお湯で抽出ですもんね」


「今回は茎の分も含まれてるし、煮て抽出とはまた違うし……植物から水分だけを抜き取るとか、薬師どころか錬金術師でもやるか怪しいからなぁ……いや錬金術なら使うか……でも私はどちらかというと薬師よりな製薬方法だからなぁ」


 ゴウが取り出してくれた液体を眺めながら色々製薬法を考えるが、なかなか思いつかない。


「まぁこれも実験だね。いつも通りの方法で作ってみようか」


 そう言うと出してもらっていた鍋を火にかけ、回復ポーションに使う薬草を細切れにして入れた後、ゴウが抽出した液体をそのまま入れて魔力を込めながらくるくるとかき混ぜる。

 沸騰したら細切れの薬草が混ざらない様にザルの上から別の容器に移し、ゆっくりと風と氷魔法を使って熱を取っていく。


 ――さて、どうなるか……


 製薬室にあったナイフで指先をスパッと切ると、回復魔法が横からすぐに飛んできて傷口が塞がった。


「お嬢様大丈夫ですか?」


「反応早すぎない……? てか回復魔法教えたっけ……」


「夜のうちに読んでもいいと言われた本に書かれていました」


「なるほどね……言わなかった私が悪いんだけど、ポーションの効果みたいから待ってて?」


「かしこまりました」


 ――読んだだけで習得しちゃったかぁ……まぁ水魔法の適性があればあれくらいなら使えるもんね。どれくらいの魔法までなら使えるのか教えるのが楽しみになってきた。いやいや、まずはポーションからだね。


 改めて指先を切って出来立てのポーションをかけてみると、傷口は塞がりはしたが少し跡が残っている。


「これだと今までの製法のポーションと大差ないかぁ。いや煮出すことを考えると手間は省けてるんだけど、あれだけ濃そうなら効力も上がると思ったんだけどなぁ……」


「私の分も余っているので試しますか?」


「そうだね、一回でできるなんて思ってもないしね」


 そう言うとマーシャは指先から鍋に液体を入れ始めたので、別の方法を考えつつその様子を眺めていた。

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