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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
2章『森の異変』
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52話『作業を眺める』カーウィン視点

 ミリーが街を出るために門番をしていた男性と話をしていたら、丁度交代の時間でそのまま飲みに行くことになった。


 以前角熊を持ち帰ったときに約束していたから仕方ないのだが。


「いらっしゃーい。ってカーウィンさんまた来たの?」


 先程ミラス博士と一緒に夕飯を食べに来たばかりなので、こういう反応をされても仕方がない。


「あぁ、仕事上がりにコイツと飲みになー」


「そういうこと。注文はお酒と腸詰め?」


「俺は夕飯まだだから肉煮込みも頼むわー」


「腸詰めと肉煮込みとエール2つね、少々お待ちをー」


 とカウンターへ注文を告げに戻っていく給仕の娘を見送り、門番をしていた友達と話をする。


「なんか今日は博士が1人で来たんだってな? 休憩で外してたから直接は見てないんだけどよ」


「あぁ、前にワイバーン討伐したときあったろ、あんときにも来てた博士だな」


「あぁ、あのでっけぇ博士な」


 ――コイツはミラス博士が貴族だってこと知らないんだろうが、知ったらどういう反応をするのだろうか……


「んで、またその博士が来たってことは、また何か珍しいもんでもいたのか? この間の角熊は大きさ的に珍しいっちゃ珍しいんだろうが」


「んあー、まぁそんなところだなぁ。そのうちハンターギルドからでも告知があるさ」


「ま、平穏に暮らせてりゃそれでいいがな」


「おまたせしましたー」


 給仕の娘が戻ってきて、注文したものを机に並べてくれる。


「これはカーウィンが持ってきてくれたものなので、お礼でーす」


 と1人分位の量の肉を小皿に2つに分けたものを置いてくれる。


「この間の角イノシシのか?」


「そうですよー。教えてもらった臭みの消し方をやってみた試作ステーキです。おじさんも帰りに感想聞かせてねー」


 友達の方にも小皿をおきながらそう言うと、他のお客さんの接客へと戻った。


「カーウィンとここに食いに来ると、こうやってたまにサービスしてもらえるのがいいな」


「きっちり1人分のサービスなんだから俺の分が減るだろうが。まぁ今日は夕飯は食ってるからちょうどいいんだが……」


「どれどれー。お、上手いなこれ。煮込み系じゃねぇのに臭みがほとんどねぇ。お前料理なんてできたか?」


「一人暮らしだしそれなりにはできるわっ! ……まぁこの調理法は教えてもらったんだが……」


「ふぅーん? またリルさんにか? いいよなぁお前は独り身だけどリルさんみたいな人がいてよぉ」


「バーカ、リル姉はリル姉だ。家族みたいなもんだわ」


「それが羨ましいつってんだよ。リルさんもなんだかんだ恋人とか作らねぇし、お前がいるからだろ? ってうちらの間じゃそうなってんぜ」


「まじかよ……」


 ――リル姉の場合絶対違うからなぁ……かと言って言い訳とかできる材料もないし……


「なぁに難しい顔してんだよ。冗談だよ冗談。はっはっは」


 などと談笑しつつ、明日もあるので早めに解散することにした。

 飲む約束だったが、夕飯も食べてしまったということで割り勘でいいと言われたが、夕飯食べてなかったらその分飲むだろうということで、約束通り俺の奢りとなった。


 ――俺の都合で遅くまで飲んでられなかったしな。




 翌朝、お酒も抜けきっていてスッキリと起きられたが、肝心の警護依頼の時間を聞きそびれたことを思い出して早めにギルドに行くことにした。


 ――あとからくる研究員たちが来てから始めるとのことだったし、まだ来てないようだから間に合ったか。


 受付の娘に挨拶してギルドマスター室へと上がらせてもらい、いつものようにノックしたあとドアを開ける。

 来客がいる際は受付の娘から言われるため気をつけるが、言われなかったってことはリル姉しかいないと思ったからだ。


 その予想は外れて、ミラス博士がいたので焦って挨拶をする。


 ――そっか……ミラス博士はギルドの上の部屋に泊まってるから把握できてなかったのか……


 ミラス博士は何も気にしていない様子で、話に加わり待つことになった。




 昼前になってリル姉が馬車が見えたというので、3人で町の入り口で待機することになった。

 到着したのは馬車が2台と、護衛の騎士2人で、荷馬車の方は何人乗ってるか分からないが、馬車の方は4人乗りほどのサイズだった。


 ――護衛が騎士って……いやまぁミラス博士が来てるし、辺境伯様のところの騎士か……


 そう思っていると、馬車から降りてきたメイドの後に、40代ほどの女性が降りてきた。


 その方はミラス博士に詰め寄り、1人で先に行って研究していたことを怒っているようで、話を聞いているとミラス博士の奥さんのようだった。


 ――奥さんも研究者だったのか……って奥さんってことは前辺境伯夫人……貴族にこんなあうことになろうとは……




 それからギルドに戻り、準備が終わるまで話をすることになったのだが、ギルド内であれば警護も必要ないかと思い、途中で荷下ろしの手伝いの方へと回った。


「おい、カーウィン、カーウィン!」


 荷物を取りに馬車へ向かっていると、食堂の方から昨夜一緒に飲んだ友達が顔を出していた。


 村の入口のすぐ横にハンターギルドがあり、その隣が食堂なのだ。入り口で何かあればすぐ目につくのは仕方がない。


「なんだ?」


「いやいや、今度は何が来たんだ? あれどう見てもハンターじゃないだろ」


 とギルドの向かいにある配送屋に馬を預けている騎士たちに視線を向ける。


 ハンターにもしっかりとした鎧を着るものはいるが、2人共同じ鎧を着ていたためハンターではないと思ったのだろう。


「あー。追加の研究員がきてな、領都で有名な研究者達らしいから、領主が護衛をつけたんだとよ」


 ――ということにしておこう……ミラス博士の研究に対する熱意は知っているし、優秀なことに変わりはないだろうしな。


「はー、なるほどなぁ……でよぉ追加の研究員ってことはやっぱ珍しいもんでもいたのか?」


「まぁ連日の雨でちょっとなぁ」


「あぁあの雨なぁ……あんだけ降ったにしちゃ奇跡的にたいした被害はなかったもんなぁ」


「騎士たちは一応被害がないかの確認も兼ねてだと思うぞ。そのあたりは町長がハンターギルド伝いで領主様にも報告上げてるからな」


 ――これでなにかいたかもしれないという話題からは逸れたか?


「そっかそっか。作業してたとこ悪いな」


「おう、またな」


 そう言うと友達は食堂へと入っていった。


 ――この手の話は近所のおばちゃん連中から聞かれると思ったんだが、あいつが先だったか……


 ちらっと食堂の方を見ると、中で友達がおばちゃん連中に囲まれていた。


「なるほどな……流石に騎士たちがいるから聞きに行くことができなかったのか。んで俺が見えたから聞きにいかされたと。あいつも災難だな」


 事情を汲み取って苦笑したあと、荷下ろしの手伝いへと戻った。




 作業は昼飯を食べてからということになり、ミラス博士とライラ博士はギルドで別に食べて、俺はいつもの食堂で食べることになった。


 結局入るとこになったため、直接聞きに来るんだろうなぁと思っていたのだか、荷下ろしと食べられる場所の案内のお礼ということで、他の研究員や護衛の人と一緒に食べることになり、聞きに来ることはなかった。


 昼食後、ブルーワイバーンをおいてある倉庫に研究員と護衛の剣士を案内して、作業を開始することとなった。


 はじめこそ検体の綺麗さに驚いていたが、今からそれを研究できると実感し始めてからはやる気が凄かった。


 警護のついでに持ち上げたりの力仕事を手伝う予定だったが、その必要はなさそうなので壁際で眺めていることにした。


 そのあいだ、護衛の剣士と他愛もない話をしていたが、ミラス博士がこの研究所を設立した所長だという話になった。

 それはリル姉ですら初耳だったようだが、貴族を一職員として迎え入れてくれる研究所のほうが少ないと思う。


 ――まぁ資金目当てでならありそうだし、貴族から頼まれれば断れはしないだろうが、そういう扱いは嫌だからこそ自分で立ち上げたんだろうな。


「というか、リル姉はしってたんじゃないのかよ」


 コソッとリル姉にだけ聞こえるように耳打ちする。


「仕方ないでしょ……研究所はいくつもあるし、潰れるところもあればその分増えもするんだからいちいち確認してないわよ」


「だが、貴族が関わってるんだぞ?」


「代替わりしてすぐだったようだし、その頃はそっちの情報優先してたわよ……」


「そりゃそうか……」


 ――まぁ知らなくても問題はない情報か……当の本人がただの研究員扱いを望んでるしな。奥さんもそのようだし。


 まるで家族のような、古い知人同士のようなやり取りをしつつ作業をする光景を眺めながら、再び壁に寄りかかった。

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