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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
2章『森の異変』
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48話『結構話せたと思う!』『気になりますね……』

 戦っていた時の事を色々聞かれながらブルーワイバーンの死骸を調べているうちに、夜も遅くなってきていた。

 私が来たのがすでに日が暮れてからなので、そこまで時間はたっていないが、それでも体感時間的には早く感じられた。


 作業中にどうやって斬ったのか聞かれたら、持ってきていたナイフの魔刃を起動させて剥いだ鱗で試してみたり、魔法耐性はどうなのかと聞かれればまたまた剥いだ鱗に小規模に調整した魔法を使ったりして研究の手助けをしていた。


 多少の威圧感は出ていたと思うが、博士も私も研究内容の事に思考が持っていかれていたため、最初の会話時と比べると威圧感等はかなり減っていたと思う。


「いやぁ、かなり捗りましたよ。特に魔法に関しては加減しつつ高濃度の魔法を使えるものがうちにはいなくてですね……あとそのナイフはものすごいですね……父上が持っている家宝の剣と遜色ないですよ……」


 ――剣に関してはミスリルつかってるから素材はいいけど、作り方が結構雑で手早く作ったものなんだけどなぁ……


「そろそろ夜も遅いし、このくらいにしておきましょうか」


 リルが検証でつかった道具や鱗を片付けながら提案してきた。


「えぇそうですね。聞きたいこと、試しておきたいことは充分見させていただきましたし。ミリー殿には是非明日にも来ていただきたいと思いましたが……色々と厳しそうですね」


 やりきったと満足そうな表情をしたあと、若干苦笑しつつ私の方を見てきた。


 ――それは私の威圧感の件だろうか……いやまぁ確かにミラス博士は、私が声を出してもなんてことないような顔でいるけど、実際は漏れてるみたいだしなぁ……本人が覚悟してるってそういうことだったんだろうなぁ……


「それじゃ、俺は一足先に帰らせてもらうわ」


 片づけを手伝っていたカーウィンさんが、一通りやることを終えた後伸びをしながら言ってきた。


「えぇ、明日はまた一応警護という名目のお手伝いを引き続きお願いね」


「了解了解」


「それではカーウィン殿、また明日よろしくお願いします。お疲れさまでした」


「え、あ、こちらこそよろしくお願いします。お疲れさまでした……」


 一応貴族であるミラス博士に言われて、対応に困りつつ戸惑った返答を焦りながらしていた。


 ――本人がいいって言ってるから問題ないんだろうけど、普通に貴族の前で先に帰るって公言して帰るっていうのがアウトだよね……いやそれを言ったら私も、自己紹介の時に先に紹介されたのはまずいんだけどさ……


 内心でそう苦笑していると、カーウィンさんが倉庫から出ようとドアを開け、そこから強めの風が入ってきた。

 倉庫にはなま物が痛みにくいように室温を下げる結界を張っているため、外から来る若干生暖かい風を正面から受けてフードが脱げた。


 風のせいで若干乱れた銀髪に近い薄紫の髪を手櫛で整えてフードをかぶりなおす。


「……ミリー殿……あなたは……いえ、何でもありません」


 ずっとフードを深めにかぶっていたため、初めてよく見えるようになった髪や目の色をみてミラス博士がはっとした表情になり、何か言いたげに口を開いたがその内容が出てくることはなかった。


「……ん? そう。それじゃあ私も帰る」


「えぇ、今日はありがとねミリー」


「ご協力ありがとうございました。いつかまたご一緒できる日を楽しみにしております」


 2人にそういわれて軽く頭を下げて反応したあと、倉庫を出るとカーウィンさんが待っていた。


「あー。門番の気を引いておくから、そのすきに出るのがいいか?」


「……うん」


 出るだけなら本気で気配を消せば見つかることもないだろうけど、こうやって提案してくれたので手伝ってもらうことにして町から出て帰路へ着いた。











 私はギルドマスターと2人で倉庫の後片付けをしていた。

 と言っても片付け自体はほとんど終わっており、ギルドマスターと2人で話すために残っていたのだが。


「急に私を訪ねてきたときは驚きましたが、先んじて情報をいただいていたのはありがたかったです。まさかあのような圧を出せるとは思いませんでしたので、聞いていなければもっと反応していたでしょう……」


 ――あのような小柄な……というより幼い子供からあのような強烈なものをぶつけられるとは……ギルドマスターが凶悪なモンスターと対峙したことはあるかと聞いてきたのも納得できる圧でしたね……しかしあれは何なのでしょうか……研究の手伝いをしていただいていた時も多少感じていたものの、初対面の時に比べるとおとなしいものでしたし……まさか呪い等のものなんでしょうかね……


「いえ、私の方こそ、ミリーと会っていただけてホッとしてるわ。会ってみてわかったと思うけれど、ちょっと言えないこともあるからね……」


「よく受ける威圧は目線から受けるのがほとんどですが、彼女はフードをかぶっていて表情がよくわからないのに威圧される。あれは周囲の魔力等に干渉しておこしているのでしょうか……っと、失礼しました。つい考え事が……」


「ミリーのあの威圧感に関してはちょっと私にもわからないのよね……威圧してくる割にはちゃんと話してくれるし……力が強大だから漏れている可能性もあるのかしら?」


「その可能性も大いにあると思います……戦闘経緯やあの魔力の扱い方を見た感じ、膨大な力を秘めているのは感じ取れましたから」


「あ、でも決して悪い人じゃないからね?」


「えぇ。それはもう今夜のことで重々承知しておりますとも」


 ――現に研究作業には強力的でしたし、内面はいい子なのでしょう。


「しかしあれでは町の生活は厳しいのではないでしょうか……」


「えぇ……今は森の中で一人で暮らしているわ」


「そんな! あのような年齢の子が一人で!?」


「……これもちょっと訳ありだからね……別に放っておくわけでもないしね」


「ですが……いえ、そうですね……あの状態ではそのほうがいいのかもしれません……これといって解決策も思いつきませんし……私に何かできることがあれば是非相談してください」


「えぇ、そうさせてもらうわ」


 ――あの威圧感が勝手に出るような呪いなのであれば、町に住むことは困難でしょう……今言われたように森にいるほうがお互いのためなのかもしれませんね……戦闘面は問題ないようですが、あのような年齢の子が一人で森に……ですか……


「そういえば、ミリーのフードが脱げた時に反応していたようだけど、何か思い当たることでもあったのかしら?」


「いやはや、さすがギルドマスター殿、よく見ていらっしゃる。特に何か思い出したというわけではなく、ようやく見えた顔が大変可愛らしく、きれいな髪だったもので。あそこまで整っている子なんて貴族令嬢にも滅多にいませんよ」


 ――本当は以前父上から聞かされたことのある、若かったころの話に出てきた人物を思い出したからなんですが……私の思い違いかもしれませんし、一度父上に確認ですかね。


「先ほども言ったけれど、できるだけミリーの事は内密におねがいします。今回は討伐の経緯を包み隠さずお話したかったことと、ミリーの事に関して何かご助力いただける可能性を生み出したいという打算もありますので」


「ハッハッハ。正直ですね。ですがわかりました。父上や息子にはさすがに報告入れますが構いませんか?」


「レイシス様やファルド様への報告なら願ったり叶ったりです」


「ふふ、本当に正直な方ですね」


「ミラス博士だからこそよ」


「それはうれしいですね。私もあなた方との関係を壊したくありませんから。ミリー殿とも今日初めてお会いしましたが、あの知識や能力はこれからもご教授承りたいですし」


「ミラス博士にそこまで言われるなんてさすがね」


「本心からですよ。だからこそ今夜限りで終わらせてしまうのは惜しいです……是非明日もと思いましたが、おそらくほかの研究メンバーには厳しいでしょうからね……」


「それは……まぁ……実戦や現場に赴くような人物じゃないとなかなか……」


「またいつか機会があればですね。それでは今日はこの辺りでお開きにしましょうか」


「そうですね。それでは博士お疲れさまでした」


「えぇ、お疲れ様です。明日は後続の研究員が来るのでよろしくお願いしますね」


「えぇ、それも仕事ですものね」


 そう言うと倉庫の明りを消して、ドアにカギをかけてギルドの部屋へと戻り、今日の研究結果を思い返し、興奮して寝付けない夜を過ごした。

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