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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
2章『森の異変』
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43話『新技能!?』『うそでしょ……?』

 昼食後の雑談で何かを思い出して落ち込んでいたカーウィンさんだったが、すぐいつもの様子に戻って帰ることになった。

 昼間には町に帰る予定だったみたいだし、気温がそこまで上がらないといってもなま物だから早めに保管したいのは当然だろう。


「それじゃあ多分リル姉も近々来ると思うから」


 車輪を付けた荷台の上のブルーワイバーンに布かぶせて縛り、きちんと固定されているか確認しながら言ってきた。


「んじゃあな。って軽いな!? いや板状の時であれだったんだから、車輪が付いたら当たり前か……」


 取っ手を持ち上げた時点で軽量化の刻印の効果を再確認したためか、引くときはそこまで力を入れないで引いていたようだが、それでも見た目から予想できる重量との差に驚いているようだった。


 少し引いて移動した後に軽く手を挙げてきたので、こちらも軽く手を振ってお見送りをした後、大部屋に戻った。


「ふぅ……結構連続でお話する機会あるけど、やっぱ緊張するね……さぁて、今日はせっかく薬草取ってきたしポーション作りでもしますか」


「ゴオ!」


 朝採取してきた薬草の入っているポーチを持って、ゴウと2人で製薬室に入っていき、道具の準備を始める。

 と言っても大きなものは基本的にしまわないので、小さな瓶やら完成品を入れる試験管のような細い瓶などだが。


 ゴウも手伝ってくれるようになったため、準備時間は一気に短くなった。


 一度種類別に選別した後、それぞれ別々で乾燥させたり煮たりする。

 普通に煮るほうはもちろんのこと、乾燥させるものは魔法で水分を抜くので、一緒にやると効能が移ってしまう可能性があるためだ。


 さっそく始めようとまとめられた束を手に取り、水魔法と火魔法の応用で水分を抜いて乾燥させていく。


 横でそれをゴウがまじまじを眺めていたが、最近一緒に作業しているとよくそうしている。


 ――何か学習しようとしてるみたいだしね。悪いことじゃないもん。


 1種類乾燥が終わった後に次の薬草の束を手に取ると、まだ終わっていない束をゴウが手に持った。


 ――お、真似事までやりはじめた、ね?


 ゴウの様子を見ていると、手に持っていた薬草からどんどん水分が抜けているように乾燥していく。


 ――え……魔法使ってる感じはしないけど……というかそんな魔法教えてないし……まさか見ているだけで覚えたの?


 作業中に声をかけるのも憚られるので、ゴウが満足するまでやらせてみようと思い観察していく。


 私が魔法で乾燥させるより時間はかかっているが、徐々に薬草は乾燥していき、程よくなったころにゴウがこちらに差し出してきた。


「おぉ……完ぺきだよゴウ!」


「ゴオ!」


 やった! と言わんばかりに嬉しそうに体を伸縮させて上下に動かす。


「でもどうやったの? 魔法使った感じはしなかったけど……」


「ゴオ?」


 ゴウは首を傾げた後、まだ火にかけていない水の入った鍋に近寄り手を伸ばして水につける。

 すると鍋の水が少しずつ減っていくのがわかった。


「あぁ……体内に取り込む要領で水分を抜き取ってたんだ」


 鍋から手をあげて頷くゴウをなでてあげながら、ゴウが乾燥させた薬草を観察する。


 ――しっかり出来てるね。しかし触れるだけで水分を抜き取れるとは……


「でもあんまり吸収すると、体に変化あるかもしれないから気を付けてね?」


 ゴウの体は土や泥といったものでできているマッドゴーレムである。そのため水分の取り過ぎで形状が変わる可能性が大いにあった。

 実際に魔物として生まれてくるマッドゴーレムの討伐方法の一種に、水魔法で外殻を柔らかくしてコアに攻撃を届くようにする、というものが存在する。


 そう心配していると今度は空の瓶に手をのせて、手の先から水がちょろちょろと出てきた。


「うぅーん? ……まさかゴウ、体内で水をためるタンクみたいに形成してる?」


「ゴウゴウ!」


 そう言うとお腹の部分から、水の入った桶上になった腹部がせり出してくる。


「なるほどね……確かに形状を変えられるし、水分を吸収しないようにすることも可能か……」


 ゴウの新しい発見に驚きつつ、色々と可能性を考えてみる。


 ――水分を抜き出せるなら、薬草から効能のある液体だけで抜き取ることも可能かな……単体で煮て薄めるだけとか、ほかにも役立ちそうなものあるなぁ。


 私が考えている間も、ゴウは次々と乾燥させる薬草の束を手に取って作業をしてくれている。


 ――もともとゴーレムとかの研究はしてなかったし、新しい発見があって楽しいね。忘れてるだけかもしれないけど、今楽しいから問題ないね!


 作業をしているゴウを眺めながら微笑むと、ゴウと一緒に製薬作業を進めた。











 私はギルドのマスター室で書類整理をしていた。

 といっても午前中にほとんどおわり、お昼もとうに過ぎた今の時間は新しく入ってきたものの確認になっていたのだが。


「さぁて、そろそろカーウィンも戻って来る頃かしらねぇ」


 机から立ち上がり、町の入り口の見える窓の前に立って外を眺める。


 丁度その時、朝出ていった早馬便の男性を乗せた馬が帰ってくるところだった。


「ふふ、カーウィンの方が後になったわね。あれ、もう1頭みえるわね……」


 早馬便の男性の後ろにもう1頭馬が見えたので、目を凝らして確認する。

 服装は馬で旅をする様にあつらえたような軽装ではあるが、ハンターや一般人が着るような服にはない飾りがついており、前の男性と比べても体つきはごつく見えた。


「……ちょっと待ってよ……うそでしょ……」


 どこか見覚えのあった外見だったため、急いで部屋を出てギルドハウスの入り口を開ける。


 ギルドから出ると、ちょうど2人が通りかかるところだった。

 早馬便の男性は私と目が合うが、言葉を発することなく何かを待っているようだった。

 私が後ろに来ていた男性に目を向けると、やはり見たことのある男性だった。


「おぉ、ギルドマスター殿。お久しぶりです」


「お久しぶりです、ミラス様。馬はこのものに預けて、どうぞ中へ」


「様じゃなくて構わないのですが……それではこの子をよろしくお願いしますね」


「か、かしこまりました」


 そう言うと早馬便の男性に馬を預けてギルドハウスへ入ってくる。

 基本的に対面した際に立場の上の人物から声をかけられるまで、声を発さない方が賢明である。

 それが原因で不敬罪などになる可能性があるからだ。


 ミラス様はそのようなことを気にする人物ではないが、お互いの立場上そういう礼儀も大事なのである。

 早馬便の男性も今回のように領主様宛の配達もあるため、そのあたりのマナーはわきまえている。


 ミラス様をギルドマスター室に案内して、こうなった経緯を伺うことにした。


「それでミラス様、今回はどのようなご用件でしょうか?」


「ブルーワイバーンの件に決まっているでしょう!」


「ですよね……まさかおひとりでいらっしゃったってことはないですよね?」


「……前にも言いましたけど、私は貴族として扱わなくていいですよ。前のようにもっと砕けた感じで、ただの研究者として扱ってください」


「……ではそうするわ。それで、ほかの研究者やお付きのものは?」


「あぁ、後で馬車で来ることになっています。手紙を読んでから、いてもたってもいられなくなりまして、届ける返事を書く時間で手早く準備をして来た次第です」


 そういうと大柄な体をストレッチするようにほぐして座りなおす。


 ――ワイバーンの時ですら翌日には来てたから、可能性は考えていたけれど……まさか返信の手紙すらなしで直接来るのは予想外過ぎるわ……


「急に来たこちらが全面的に悪いので、何も気にしなくていいですよ。それより、ブルーワイバーンはどこに!」


 ミラス様は興奮しており、仮にカーウィンがもう戻ってきていたのであれば、今にでも席を立って飛び出しそうな勢いだった。


「今、信頼できるハンターが持って帰ってる途中ね。先に頭部を見るかしら?」

「もちろん!」


 言い終わる言葉と被る勢いで肯定してきたので、机に布を敷いた後マジックバッグから頭部を出す。


「お、おおぉ……同封されていた鱗もそうだったが、きちんとそろっていると思ってた以上に青い。これほどの色合いであれば、薄暗くとも青と認識できるほど……我々が研究してきた中で一番色合いが鮮やかだ……」


 手持ちのバッグから虫眼鏡のようなものを取り出して、隅々まで観察していく。


 ――はぁ……この巨体で縮こまるように背中を丸めて観察する光景は、何回見ても違和感がすごいわね……父親の遺伝子が濃く出てこの体格なんでしょうけど、これで戦闘はほとんどできないっていうんだから驚きよね……


 と目の前の190センチはある体躯の良い男性を見ながら思う。


 ――カーウィンは帰ってきたらまず来るわよね……アニーにミラス様が来てるって伝言頼んでおかないとかしらね……


 そう思いつつ、伝言とお茶を用意するために席を立ってアニーを呼んだ。

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