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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
2章『森の異変』
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31話『山へ向かう』『やばいのが来た……』

 昼食を食べ終えた後、調査を手伝うために動きやすい格好に着替え、新しく作っておいた外套を羽織る。


 ――雨で家から出る気が起きなかったから外套とかも作っておいたけど、こんなそうそうに使うことになるとは……前の外套はミリアリアの頃使ってたのを、切って長さを合わせただけだったから、この体に合ったの欲しかったしね。


 まだ1度も実践には使われていないミスリル製の短剣を、皮の鞘にしまい腰につける。

 念のため回復用のポーションと、解毒ポーション数本を外套の内ポケットにしまう。

 ポケットの内側には、衝撃をある程度吸収するように少量の綿と、耐衝撃用の魔法を付与してある。


 ――魔石まではさすがに使わなかったから効果は低めだけど、普通に使ってて割れるようなことはないだろうしね。あとは作った撥水魔法薬を塗ってるけどどんなもんかなぁ。あまりに不快だったら結界魔法で弾いちゃうのもありかな……極力消費はおさえたいけど。


「……おまたせ」


「いえ。それじゃあいきましょうか」


「……あ、ゴウは今日はお留守番しててね。水分吸いすぎちゃうかもしれないから……」


 そういうとゴウ、は少ししょんぼりした仕草をする。


「……それじゃあ行ってくるね」


 ゴウの頭を軽く撫でてあげて、そう告げると「いってらっしゃい!」と言っているように手を振ってくれた。


「本当に感情みたいなものがでてきたわね……」


「……ある程度学習したりしてるしね」


「これからの成長が楽しみなような、怖いような……」


「……それでカーウィンさんと別で探すの?」


「いえ、あの麓あたりで合流して、一緒に調査する予定よ」


「……それじゃあ早めに合流したほうがいいね」


「そうね、1人で寂しがってるかも知れないものね」


 と冗談をいいながら向かおうとするリルを呼び止める。


「……【ヘイスト】付与するから、慣れるまではゆっくり移動して」


「それはありがたいわ! ……実はその手の魔法苦手で、身体強化魔法で無理矢理似た動きをしてるから、無駄な消費が多くてね……」


 ――たしかに全体的に能力があがる身体強化より、移動速度や素早さに特化した【ヘイスト】の方が燃費はいいけど……魔法が得意なエルフで、戦闘スタイルも魔法なはずなのに、まさかそんな脳筋手法を使ってるとは……


 さすがにそんなことを口に出すわけもなく、付与が終わると少しづつ慣らすように移動を始めた。




 移動を始めたころは、身体強化とは違う速度の上がり方に戸惑っていたようだが、そもそも素早さ重視で戦闘をこなすだけあって、すぐになじんだようだった。

 一応不慣れな状態での移動のため、私がリルの後についていく形で進んでいたが、補助魔法に慣れてきたころでカーウィンさんの気配を察知できたため、察知範囲の広い私が先行することになった。


 山の方には少しだけ木々があるが、麓の方は少しひらけていて草原のようになっている場所にカーウィンさんはいるようだった。

 木々の間をぬけて、草原に出るとカーウィンさんの姿が見えたが、なんか剣を構えているようだった。


 ――なにか魔獣と戦闘でもしたのかな……? 雨のせいで血の跡やにおいまではちょっとわかないけど……


「っ!! ってミリーか……何が来たのかと思った……」


「お待たせカーウィン」


「いや、そんなに待ってねぇよ」


 私のすぐ後ろを着いてきていたリルも森から出てきて、カーウィンさんに声をかける。


「んでミリーにも調査を頼んだのか?」


「事情を話したら手伝ってくれることになったのよ」


「……こんな雨の中かわいそうにな……」


 ――別に私が言い出したことだし、撥水効果もばっちりみたいで不快になってないし、いいんだけど……なんでそんなもうしわけなさそうに……?


「それに、手掛かりになるかもしれないことを調べててくれたからね」


「何かわかったのか?」


「可能性としてはワイバーン種の特殊個体が関係してるかもしれないってことがね……」


「ワイバーン種ってマジかよ……しかも特殊個体ってなると……」


「原種単体なら別にどうってことないけど、特殊個体となるとねぇ……」


「いや、原種単体でも結構つよいだろう」


 ――原種ならカーウィンさんでも余裕そうだけどなぁ……特殊個体は能力のぶれ幅すごいから、実際に見てみないとわからないけど……


「まぁいいや……んでワイバーン種ってことはここ登らなきゃいけないのかぁ……」


 と今から登る予定の山を見上げる。

 山頂の方になるにつれて木々がなくなり岩山のようになっているが、ワイバーン種が住み着くのは、そういった岩山の洞窟などが主なので不思議ではない。


「町から山は結構離れてるから、土砂崩れとかは心配ないでしょうし、まずは元凶がいるかどうかを確認しましょう」


「もし見つけたらどうするんだ? 戦闘するのか……?」


「戦闘せざるを得ないときはそうなるでしょうけど……ミリーはどう?」


 ――え、何で私に聞くの……? 害になるだろうから討伐対象だし……あぁ、あの本に今後の成長が気になるってメモがあったから気にしてくれてるのかな……


「……危なそうならやる」


「だそうよ?」


「あ、あぁ……それなら大丈夫なのか……?」


 調査の内容を軽く話し合った後、私たちは山へとむかった。











 俺は少し急ぎ足で山の麓へと向かっていった。


 ――こういう時は気配を隠していった方がいいのだろうか……それともむしろ存在感を出したほうが野生のやつらは逃げるか? ……いやいや、野生は野生でも好戦的な狂暴な魔獣が出るこの辺りだと、逆に向かってくる可能性の方が高いか……ミリーほどの威圧感でも出せれば別かもしれないが……


 などと考えつつ、できるだけ気配を消して進んでいく。


 山の麓の方は割と緩やかな斜面で草原のようになっているので、合流のことを考えると、わかりやすいこの辺りがいいかと奇襲を受けないように木々から離れて警戒態勢で待つことにした。


 ――リル姉はあの速さで移動できるなら、すぐにくるだろうしなぁ。とりあえず今のところ水害らしい水害はみられないか。この山も見える範囲で崩れてるところはなさそうだしなぁ。


 などと考えつつ、少し歩きながら見える範囲を調べていく。

 しばらくそんなことをしていると、森の方からすごい早さででかい気配が近づいてくるのがわかった。


 ――なっ!? 魔獣……いや魔物か!? このレベルってことはまずいな……


 以前戦った角熊以上に強い気配を感じ取り、危険を感じたため背中の大剣を抜き、臨戦態勢で森をにらむ。


 そこから出てきたのは、見覚えのある銀色に近い紫の髪がフードから出ている、小柄なヒト型のものだった。


「っ!! ってミリーか……何が来たのかと思った……」


 森から出てきたと思うと、謎の威圧感らしきプレッシャーも感じ始める。


 ――なるほどな……ミリーだったらあの速さで移動もわかるし、気配も納得だわ……


「んでミリーにも調査を頼んだのか?」


「事情を話したら手伝ってくれることになったのよ」


 ――確かに、戦闘面でも探索面でもこの上ない協力者だが……子供にこんな雨の中手伝ってもらうとは……本人から言い出したみたいだし、普通の子とは違うのはわかっているが、見た目が見た目なだけに可哀そうに感じる……


「それに、手掛かりになるかもしれないことを調べててくれたからね」


「何かわかったのか?」


「可能性としてはワイバーン種の特殊個体が関係してるかもしれないってことがね……」


 ――待ってくれ……確かにこの山の頂上付近にはワイバーンがいるってきいたことあるが、それの特殊個体だと? 原種なら1体ならどうにかなるが、特殊個体とかものによっては勝てないぞ……いやまぁ可能性があるってだけだしな……しかし、その可能性の確認にこの山を登んなきゃなんないのか……いや、まて、もし本当にワイバーンの特殊個体だったとして、このまま戦闘するのか!?


「戦闘せざるを得ないときはそうなるでしょうけど……ミリーはどう?」


「……危なそうならやる」


「だそうよ?」


 ――まじかよ……ただでさえワイバーン1匹相手ならどうにかって感じなのに……いやリル姉もいるし、何ならミリーもいるから別に大丈夫なのか……? リル姉はそもそも戦闘面含め尊敬しているからまだいいんだが、ミリーにも頼ってる感じが情けない……いやあの角熊をひとつきした光景は今でも夢に見るけどさ……まぁできる範囲でやりますか。一応依頼として受けちまったし……


 そう決意して3人で山へと向かった。

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