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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
1章『森での出会い』
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3話『私修繕する』『異様なものを見つける』

 朝日の光と、鳥の鳴き声という平和な環境音で意識が徐々に覚醒する。 

 横になって手紙を読んでいたため、そのまま寝てしまって朝までぐっすり眠っていたようだ。


「んみゅああああああああ。寝っちゃってたかぁ……」


 と何とも気の抜けたあくびをしつつ伸びをする。昨日の疲れは全く残っていないようだ。


「さぁて……手紙の内容だと特に急ぐこともなく、幸せに生きなさいってことだったけども……」


 内容は自分自身で人間関係の記憶のほとんどを消したうえで若返り、寿命も延びてるから人見知りを克服しつつ楽しく幸せに過ごせってことだった。


「生きていくだけならこのまま生活もできるだろうけど、やっぱり人と仲良くおしゃべりしたり遊んだりしたいなぁ」


 と記憶を失う前の自分の手紙にも書いてあったことを、再度自分の思いなんだなと確認する。

 手紙が挟まっていた本が置いてある机の上には、多少のお金が入ってある袋も置いてあった。


 ――そういえばどうやってお金稼いだんだろう……? 人間関係のほどんどを消したって話だったから、もしかしたら少しは交流があってその人に頼んだのかな? とりあえず、売れるものとしては魔獣の素材やお肉、あとは魔法薬系かな。


 腰かけていたベッドから立ち上がると、意識が戻った時に倒れていた部屋へ向かう。

 そこには調合用の瓶や容器、鍋やその他の器具が置いてあった。


 ――この体になるときの反動で屋根が吹っ飛んでたり、棚の素材箱とか瓶がいくつか破損してるけど、使えるものもありそうだね。液体は何の液体かわからなくて、うかつに使えないから今は放置だけど……なんでラベル貼らないのよ……いや自分がわかればいいから私なら貼らないか……


 ふと瓶などが置いてあるところに紙が挟まっていた。最初はラベルかなって思っていたものの紙には


『魔法薬をお金に換えるなら性能はかなーーーり控えめに作りなさいね。私の"普通"でつくると大変なことになるわ』


 と走り書きしたものだった。


 ――なるほど、記憶が必要なところまで飛んじゃった時用の注意書きだったか。たしかに飲めば切断された腕が生えてくるとかはやりすぎだとしても、骨折や切り傷とかくっついていれば5秒もかからず直っちゃう薬とか、私には普通でも一般的には普通ではないのね……まぁそもそも素材の入手難度が激高だけど……


「となると2、3日で直る風邪薬とか、5分ほどで効き始めて半日ほどは痛みを抑えられる鎮痛剤とかその程度のほうがいいかなぁ。それらの素材なら近くにも生えてたし、栽培するにも楽だし」


 と売る時用の薬のラインナップを考えてみる。


「いや、そもそもハンターギルドで討伐依頼受けたほうが私には楽なのでは? いやでもそうなるといつまでたっても対人スキル上がらないかなぁ……いやいや、ギルドでも受付さんとの会話はあるだろうし、そこから着手したらいいのかなぁ?」


 今後の生活方針を決めようにもなかなか案がまとまらないまま、腕を組んで部屋をウロウロする。


「うぉぇ……気持ち悪ぃ……よ、よし! とりあえずこの部屋を直してから考えよう!」


 結局後回しにし、吹き飛んでしまった屋根を直すことにした。




 もともと風呂場と台所以外はすべて木造だったので、近場の木を風魔法で1本伐採して家の裏手まで引っ張ってきた。

 枝は竈の燃料にもなるし、ここで魔法で切り落としていく。

 同じ要領で丸太の水分を程よく抜いて板に加工していき、水をはじく薬品をぬってそれを風魔法で乾燥させて組み立てていく。

 釘などはもったいないので、パズルのように打ち付けたら固定される形状にしてある。


「あとは隙間から雨漏りしないようにつなぎ目にこの植物の根をつめてー、撥水薬品を縫ってーっと」


 加工も魔法を応用し、屋根上の作業も浮遊魔法などをつかい短時間で済ませてしまう。おかげでまだお昼にすらなっていない時間で屋根の取り付けが終わってしまった。


「ふいー……私ってこういうのでも食べていけるのでは? いやさすがに本職のほうがきれいだし早いか」


 と完成した屋根を見上げながら苦笑しつつ独り言ちる。


「ちょっと早いけどお昼食べたら、薬草取ってこようかな。製薬室の薬草保存箱は壊れちゃってたし……」


 中には乾燥させていたであろう薬草が数種類入っていたが、壊れていた上に屋根がなく雨に打たれて薬の素材として使い物にならなくなっていた。

 一度製薬室に入り、使える薬草を確認したうえで足りない分を取ってこようと準備をする。


「緊張を緩和する薬も作っておいたほうがいいよね……まだすぐに誰かと会うつもりはないけど……あ、短剣直してないや……早めに直してあげなきゃ」


 といいつつ採取の準備を整えるのであった。











 俺は町の南側にある森にハンターギルドの依頼で来ていた。この森は魔素が濃く魔獣が出やすいため、魔獣の素材あつめにうってつけだった。

 大体の魔獣は角が生えており、その角も強度があるため加工して様々な道具や部品にしたりと需要がある。

 俺が受けた依頼は魔獣化した熊の毛皮だった。対象指定はまぁまぁあるものの、熊ともなるとなかなかな脅威である。


「まぁ俺もランクは高いほうだし、さすが貴族様からの依頼ってだけあって報酬も高かったしなぁ……」


 どこぞの貴族(といってもうちの町の領主だろうが)からの依頼で受けたものの、熊ともなるとそもそも見つけること自体難しい。しかもいざ出会うと狂暴化し強化されているから単純に強い。低ランクハンターなら5人ほどでパーティーを組んで取り組むような依頼だ。


 ただ俺はハンターランクも10段階の上から4番目、ランク7の資格をもらっており、ソロでも受注可能となっていた。一人で達成すれば報酬も独り占めできるし、可能ならそのほうがおいしいのである。


「しかし3時間ほどじゃさすがに出会うことはないよなぁー。こりゃぁしばらく山籠もりしたほうがいいか? いちいち町に戻るのも手間だしなぁ……」


 と対象を見つけるため探索しているとガサガサッドォンッと木が倒れるような音が聞こえた。


 ――まさかそんなことができるってことは目的のやつか?


 と気配を消しつつ音がした方向へと向かう。


 しばらく歩くと森が開け、廃村らしき場所へ出た。


 ――い、いやいや、こんなところに廃村なんてなかったぞ!? 20年はこの森でハンターとして活動してるから間違うわけない!


 15歳のころからハンターとして仕事をしており、この森は迷うことなく散策できるレベルまで知っているからこそわかる。こんな場所に廃村なんてなかった。こんな開けた場所なんてなかったはずだと。


 ――ここはなんなんだ……さっきの音はいったい……っ!?


 ふと奥のほうに目をやると子供がいた。しかも葉の状態から先ほどの音は伐採した音で、その生木を片手で引きずっている。


 ――うそだろ、なんだあの子……俺でもあんな軽々は無理だぞ……


 おれ自身、力はあるほうだと自負している。普段から全長140センチ、太さは40センチほどの大剣を武器として扱っているのだ、それなりに力はなくては無理だろう。


 ――あれは強化魔法を使ってるのか? あんな子供が? ただでさえ魔力操作は難しく、大人でもあんな日常的に使うなんて滅多にない。それをあんな子供が使えるのか……いや見た目通りの年齢ではないのか?


 気配を全力で消し少女を見ていると、一軒だけ残っている家屋の屋根を直し始めた。


 ――あんなにポンポン魔法をつかい、浮遊魔法までつかえる子供か……この場所自体気になるがあの子は何なんだ……これは報告するべきか……?


 町に戻るのは面倒だが、あの力は報告すべきなのか悩む。大人の魔法使いであればあれくらいできる人はもちろんいるが、それはきちんと鍛錬したような魔法使いであって、あんな子供では無理だろう。しかもこの場所のことも気にはなる。


 ――接触すべきか……? いや魔素が濃いと魔族にとっては住み心地もいいらしいし、魔族かもしれんか。魔族は額に魔石があると聞くが、ここからじゃさすがにわからんな……仮に魔族だとしても隣の国では普通に人間と暮らしているほど人と変わらないらしいけど……うちの国じゃ人族以外はいい思いはしなさそうだがな……これはいったん報告と確認しに戻るか……面倒だな。


 と俺は気配を消したまま町へと向かった。

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