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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
2章『森の異変』
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28話『連日の雨』『何か変だわ』

ほぼほぼリルパート!

 外は薄暗く、日も差していない部屋でモゾモゾと動き、少し覚醒した頭が最初に取り込んだ情報は、大音量の雨音だった。


「うにゅ……今日も雨かぁ……」


 短剣を作った日の夜から急に大雨が降り始め、弱まることはあっても止むことはなく降り続いていた。


 ――これは……あれかな……? 【インフェルノ】の熱気をうまく霧散させず上空にぶっ放した影響かな……? てことは私、疑似的に雨を降らせる魔法を使えることになるのでは?


 などと寝ぼけた頭で考えつつ布団から出て、寝間着にしているゆったりしたワンピースを脱いで、体に合わせて新しく作ったワンピース状の服で、腰にベルトを撒いて調整しているような普段着に着替える。


 ――いやいや、水が欲しいなら水魔法を使えばいいし、西にある山脈の影響もでかいだろうから再現は無理でしょう。ていうより、今日で3日間この調子で降り続いている雨が、自分のせいだと思いたくもないし……


 着替えて大部屋にいくと、ゴウがお茶を持ってきてくれた。

 ここ2日は雨のせいで出かける気になれず、家に残っている書物を漁ったり、持ってきてもらった布で衣類を作ったりと生産活動に勤しみつつ、ゴウにお茶の入れ方や屋内での行動を教えていた。


「うん、料理はまだ無理そうだけど、お茶はおいしいよ、ありがとね」


 そういいつつゴウの頭をなでたあと、平たいコアを出してもらい魔力補給をしてあげる。

 起きて顔を合わせたら必ず補給してあげることが日課になっていた。


 ――大気魔力吸収もついてるし、そうそう切れることはないけど、補給してあげられるならそれに越したことはないしね。


「さて、今日はゴウにパンの焼き方を覚えてもらおうかな。そのあとはまた書物漁りかなぁ。リル達が3日ほどしたらまた来てくれるって言ってたけど、この大雨だしね……」


 お茶を飲み終わった後、軽い朝食を作るためにゴウと一緒に台所へと向かった。











 私はミリーの家から帰ってきた夜からずっと降り続いてる雨を眺めながら、ハンターギルドのマスターとしての書類整理を行っていた。


「この雨はいつ止むのかしらねぇ……」


 ――本当なら今日あたりミリーのところへ行くつもりだったのだけれど、この大雨だと荷物も濡れてしまうわよね……1人分の寝具の綿くらいなら入るから、マジックバッグに入れて持っていこうかしら……


 などと考えていると、部屋のドアがノックされた。


「マスター、カーウィンさんが依頼から帰ってきましたよぉ」


 と受付の子が伝えに来てくれたため、カーウィンに来るように伝えてお茶の準備をする。


 少しして再びドアがノックされ、気配でカーウィンだとわかったため入室の許可を出す。


「今戻ったばかりで、外套も羽織ってたしある程度拭いてきたけど、まだ結構濡れちゃってるんだが……」


 と、若干遠慮気味に言いつつ、ドアを開けた後部屋に入ろうとしないカーウィンが立っていた。


「別にいいわよ。雨水くらいすぐに片付けできるわ。血みどろになるような狩りをしてきたのであれば、一旦出直してもらうけれど」


「あんまり奥まで行ってないのに、そんなところで俺が血みどろになるような相手がいちゃ問題だな」


 とカーウィンは苦笑しつつ、部屋に入りって椅子に腰かける。

 ソファーとローテーブルの応接用もあるのだが、木製の椅子の方を選んでくれたのは後片付けのことを考えてくれたのだろう。

 私はその机に2人分のお茶を持っていき対面に座った。


「それもそうね。それで今回の依頼はどうだった?」


「んあぁ……小型魔獣5匹だろ? 俺がやるにしてはぬるかったが……」


「それでも魔獣となるとあの森だと少ないはずだし、その割には早かったわね?」


「……そうなんだよなぁ……」


 カーウィンは両手を頭の後ろで組み天井を見上げる。

 木製の柵付近で警備している人から、魔獣らしき影を見たという情報が入ってきたので、確認と討伐のためにカーウィンに依頼をしておいた。

 彼が依頼を受けたのは今朝で、私が直接指名して行ってもらった。今はまだ昼前ということは、移動時間抜きで3時間程度で5匹の魔獣と出会ったことになる。

 南の森は魔素だまりがあるから魔獣は出現する。しかしそれはもっと奥の方のことであり、それこそミリーのいる付近だと大型の魔獣もでるのだが、村に近い浅い部分には角ウサギですら珍しいのである。

 そもそもそんな近くに頻繁に魔獣が出るのであれば、たとえ角ウサギだとしても、一般人には単体の狼レベルの脅威になるため、被害が増える前にもうちょっと安全な場所に町を作ったはずなのだから。


「まだ報告書は貰ってないから口頭で聞くけど、何を狩ってきたのかしら?」


「角ネズミ6、角ウサギ2……」


「ちょっとまって、依頼は5匹って……てことは狩らなきゃいけないほど浅い場所にそれだけいたのね……目撃情報どおりってことかしら?」


「あぁ……あと角イノシシ1匹だ。イノシシはさすがに持って帰れなかったから、分かる場所に埋めてある。討伐確認用の部位も一応持って帰ってるが……」


「まさか中型まで!? いや、あなたの言うことだから証拠がなくても大丈夫よ。そのためにあなたに行ってもらったのだから……」


「イノシシはまぁ稀に見ることもあるが、ほかの魔獣が多すぎるんだよなぁ……この雨のせいか?」


「普通の獣なら、雨で住処が壊れてっていう線もなくはないけれど、魔獣となると怪しいわね……」


「だよなぁ……魔獣が住処で平穏に過ごしてるのなんて想像できねえし……」


 ――これだけ村の近くに魔獣が出るのは危険ね……しかしなんで急に? 森の中の魔獣が増えて居場所がなくなったのかしら……もしくは何かから本能的に逃げている? ……まさかミリーじゃないわよね?


 そこまで考えて苦笑する。


「さすがにバカな推測ね……しかし現に魔獣が増えてるのは間違いないし、しばらくは町の近くの依頼が増えるかしらねぇ」


「んだなぁ。ま、この間の貴族様からの依頼みたいな特殊なことがなければ、だいたいフリー依頼ばかりのギルドだし、あんまり変わらねぇか。それじゃあ昼飯食ったら、イノシシ回収がてら散策してくるわ」


「ちょっとまって、あなたには指名依頼を出すわ」


「……またかよ……今度はなんだ?」


「町付近の方は他のハンターに任せるから、あなたには奥の方へ行って原因がないか調査してもらいたいのよ」


「なるほどな……奥で思い出したが、ミリーの方はどうするんだ?」


 後半の方は念のため声が漏れないように小声になって訊ねてくる。


「そっちは私が行くわ。この雨だからマジックバッグに綿を詰め込んで、調査という名目で持っていこうかとね。もちろんその奥の調査にも本当に参加するから安心してね」


「……さすがにこの事態で"名目"だけ言い訳に使って、参加しないとかだったらどうしたものかとおもったわ……」


「ミリーも大事だけど、ちゃんとこの町のことも大好きだから大丈夫よ。それにミリーも何か気づいてることがあるかもしれないし、聴いてみるわ」


「それじゃあそっちはまかせた。俺は昼飯食う前にイノシシ回収してくる。準備出来たら出発前にまたギルドによるわ」


「あぁー、それなら昼食一緒にとってから一緒に向かいましょうか。イノシシは行くときにマジックバッグに入れといてあげるわ」


「入るのか?」


「……今入ってるものを全部出せば……」


――普段家から持ち出さないから、衣類やら小物やら色々詰めっぱなしなのよね……人に見られるとまずいエルフのものとか……まぁ綿も購入だけして、引き取りに行ってないから、一度帰って部屋に全部出しちゃいましょう。


「まぁそのほうが俺も楽だし、そうさせてもらうわ。んじゃあ昼飯はここの隣の食堂でいいか?」


「そうね。調査にでる依頼の作成と私の手続きしてから行くから、先に行って適当に頼んでおいて。ついでに受付にアニーがいるから来るように言ってくれるかしら」


「あいよ」


 彼が部屋から出ていくのを見つつ、カーウィン用の依頼と私の調査外出の手続きの書類に記入する。


「マスター、何が御用ですかぁ?」


 ノックと同時に少し間延びした口調の受付の子の声がした。


「入っていいわよ。ちょっとこのカーウィン宛の依頼の処理と、私の外出手続きを処理しておいてくれる?」


「はいー。帰りは明日の予定ですねぇ。カーウィンさんは先ほど出ていきましたけどぉ」


「大丈夫よ。依頼のことは伝えてあるから、受けた扱いで処理しちゃって」


「了解ですぅ」


「あ、あと私も準備したらすぐにでるから、この雨水の掃除もお願いね」


「はぁい、お気を付けてぇー」


 手早く調査に出る用意をした後、外套を着てマジックバッグを取りに足早に家へとむかった。

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