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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
1章『森での出会い』
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27話『なんちゃって鍛冶と訓練する』

 お昼ご飯を食べた私は、再び裏庭でなんちゃって鍛冶を繰り返していた。

 昼前にちゃちゃっと仕上げたものはゴウにあっさりと切られたため、2回目は多少保護魔法を上乗せしてみたのだが……


「ゴオ!」


 そこには嬉しそうに腕をパタパタさせるゴウがいた。


 ――えぇ……このレベルの保護魔法でもまだ駄目かぁ……いや、そりゃあゴウの方がしっかしとした保護魔法も付けてるけどさ? 同じ形状変化だけど、刃の鋭さでも劣ってるのかな……


 そう思いつつ、何度かくっつけ直して保護魔法の強度を上げてみるが、片っ端から切られていく。


 ――あんまり強固過ぎる魔法を込めるのもなぁ……魔石なしだから、流す魔力増えちゃうし……いっそ1本ちゃんと作ってみるか……


「ちょっと待っててね」


 ゴウにそう伝えた後、製薬室の素材棚からミスリルの塊を引っ張り出した。

 それなりに希少な鉱石であり、ロングソードなどを作る量はないが、子供が扱えるような短剣くらいの量はある。


 ――そもそも私はアクセサリとかの魔道具に使うから、鉱石系はそこまで量使わなかったみたいだし、これだけあっただけでもすごいのかな……


 裏庭に戻ると右手を剣の状態にしたゴウがビュンビュンと素振りしていた。


「どう? ちょっとは慣れてきた?」


「ゴオー!」


 右手を上げて返事をした後、さらに早い振りでヒュンヒュンと縦に横に振っている。


 ――学習能力もあるし、私の作った短剣を切ってきたから、切り方は充分学んでそうだなぁ。


 ゴウに「ちょっと離れててね」というと、岩の台座の上に浮くようにミスリルの塊を浮かせ、【インフェルノ】とつぶやいた。

 すると、浮かせたミスリルの塊は超高温の炎の塊に包まれる。

【インフェルノ】は着弾地点で大爆発し、しばらく超高温の火柱を残す上級魔法だが、それを発射しないまま空中に停止させて、その熱を利用している。


 ミスリルは普通の炎でも柔らかくなり加工できるようにもなるが、鉄よりはるかに時間がかかる。

 魔力のこもった炎であれば加工可能状態に持っていく時間が大幅に短縮することができる上に、炎の魔力を多少吸収もするため、出来上がった時に魔法適性がぐんと上がるのだ。


 ――ドワーフたちは、鍛冶用の超高温の炎魔法でやるみたいだけど、これでも問題ないよね? 本職に見られたらなんていわれるか分かったもんじゃないけど……


 そう考えているうちに程よく加工可能状態になったため、【インフェルノ】を消す。火事にならないように熱は風魔法で上空に逃がしておいた。


 さすがに素手で触れはしないが、それなりに近づかないと加工がやりにくいため、自分に耐熱用結界を張って形状変化の魔法をかけていく。


 ――うん、ちゃんと魔力も吸収してるね。これなら本体に術式を刻印したらそれも使えそうだ。


 魔力を吸収した金属は、ある程度魔石と同じように刻印による魔法の発動が可能になる。

 容量は吸収した魔力量に比例するし、完成後の充填が魔石と比べて難しい魔力操作が必要ということもあり、基本的に魔道具は魔石で作られるが。


 ――そもそも時間をかけて加工してようやく魔力を蓄えられるようになる金属より、魔石の方がはるかに安いし安定してるからね……


 形状を刃渡り20センチほどの短剣の形に変えていく。

 前の短剣より短いのは、魔力によって刀身が伸びるようにする刻印も施すため、これでも問題ないのである。

 ただ単にミスリルの量がすくなかったというのもあるが。


 鋭利化と魔刃化の刻印を刀身の中央に刻んでいく。

 鋭利化はその名の通り切れ味をさらに鋭くする強化魔法で、魔刃化は魔力の刀身を生み出す付与魔法である。

 刻印した後、全体に保護魔法をかけてさらに耐久度を上げておく。


 まだ結界なしで持つには熱いので、ある程度温度が下がるまでお茶を飲んで待つことにした。


「ゴウものむ?」


「ゴオ」


 頷いた後私の隣に来てコップを傾ける。


 ――固形物はだめかもしれないけど、液体なら問題ないみたいだね。不純物はそのうち畑とかの肥料にでもできそうかな?


「おいしい?」


「ゴオ!」


 ――嬉しそうにうなづいてるけど、味覚はないはずなんだけどなぁ……あぁマッドゴーレムだし水分自体がおいしいって感覚なのかな? 周囲の水分を適度に吸収して乾燥しないようにはしてるけど、乾燥地帯に連れていく際は水魔法かけてあげた方がいいかな。


「あ、そっか! さっきの【インフェルノ】のせいで乾燥しちゃってたのか……ごめんね……」


 ミスリルを溶かす際にゴウに結界を張るのを忘れていた。


 ――あの熱量にさらされてたらそこまで長い時間じゃないにせよ、周囲の水分だけじゃ足りなくなるよね……


「ゴオ? ゴオオ!」


 "大丈夫だよ"と言いたげな身振りを見つつ、ゴウのコップにさらにお茶を入れてあげるのだった。




「よし、これくらい冷めてたら平気かな」


 風魔法を使って冷ましていた短剣を手に取り、軽く魔刃を起動させてみると、うっすらと刀身の周りに魔力の刃が見える。


 ――氷魔法とかで冷ますと、いくらミスリルと言えど温度差でダメになっちゃうかもだし、休憩もできたしちょうどいいね。


 ゴウを呼んで、再び切りつけてもらう様に指示する。

 今度は短剣が切れるとは到底思えないので、しっかり身体強化してぐっと握る。


 ヒュンっとゴウが剣状態にした右腕を振るい、短剣へと迫ってきた。


 ガキンっという金属のぶつかる音とともに、ゴウの剣は短剣とぶつかってとまる。


「さすがに鋭利化まで起動するとゴウに何かあったら嫌だからつかわなかったけど、これで同じくらいの強度かぁ」


 ゴウの腕と短剣の損傷を確認するが、どちらも傷を負った様子はない。

 ゴウは切れなかったことに若干しょんぼりしたような様子だったが、"もう1回!"という様に右腕をフンフンしていた。


「今度は鋭利化も起動するから、気を付けてね」


「ゴオ!」


 再度構えてゴウの剣を待つ。

 ガキンっと音とともにゴウの剣が短剣とぶつかりとまった。


 ――ここまでは一緒だけど……短剣は大丈夫。ゴウはっと……あぁやっぱりちょっとかけちゃってるかぁ……


 短剣とぶつかったゴウの剣は少し欠けていた。


「ゴウ、直していいよ」


 そう言うとかけていた部分がニュと再生し、元の傷一つない状態へと戻る。


 形状変化できるゴーレムだからこういう損傷自体は問題ない。痛覚もあるわけじゃないので、その心配もない。

 ゴウもそれがわかっているからか、自身が欠けたことよりも、また切れなかったという風に落ち込んでいるようだった。


「よし、それじゃあゴウの耐久も大体わかったから、ちょっと実戦形式で打ち合ってみようか」


「ゴ、ゴオ!!」


 先ほどまで落ち込んでいたように見えたゴウは、"遊ぶの!?遊ぶ遊ぶ!"と言わんばかりに嬉しそうに剣状態の手を振り、私の前に移動してきた。


 実戦形式といっても、ゴウはまだ剣を振る事しか学んでいないため、初めはゴウにひたすら攻撃してもらう。


 先ほどとは違いこっちも避けるため、その都度アドバイスをして学んでもらい、徐々に私からも攻撃をして防御や回避を覚えてもらうという学習訓練だ。


「そうそう。相手がヒト型の場合、足元を見て移動するであろう方向を予測して」


「ゴオ!」


 ゴウも徐々に"遊ぶ"という感じから"真剣に学んでいる"ように変わっていった。




「それじゃあ私も攻撃するから、避けるか防御してね」


 そういうと、一気に距離を詰めて形状変化させていない左腕を切りつける。


 しかしゴウは反応できなかったのか避けるそぶりがない。


 ――まぁ初めてだし仕方ないかな。


 と多少傷がついでも問題ないことを知っているため、遠慮なく短剣を振るう。


 キンッと金属と固いもののぶつかる音がしたので、私はゴウに教えるために攻撃の手を止めた。


「……あれ……傷がついてない……」


「ゴオ!」


 回避や防御の大事さを教えるために、傷をつける覚悟で鋭利化までつかって攻撃したのに、当たったはずの場所には傷は確認できなかった。


 どうやら硬質化の強化魔法を使っていたようだった。


 ――確かに使えるように刻印してるけど……今までの攻撃でそれを使う様に思いつく? いやさっきこの短剣を切れなかったうえに傷がついたから、それ用に使うつもりだったのかな……


「ゴウ、もう1回この短剣に切りかかってみて」


 そう言うと鋭利化を起動させた短剣を横に持ち、衝撃に備える。


「ゴオ!」


 という勢いのいい掛け声と主に、ゴウの剣が短剣に当たる。


 当たったのを確認し、両方の刃を確認するが、どちらにも傷すらついていなかった。


「硬質化つかった?」


 そう聞くと頷いていたので、意図的に使ったのだろう。


 ――確かに使い方とか教えていくつもりだったけど、自分から攻撃にも使えるようになるとは……研究結果の思い付きで思考能力に学習能力も加えたけど、予想以上の成果かな。


「うん。よくできたね」


 そう言いつつゴウの頭をなでてあげると、嬉しそうにしていた。


「ちょっとコア見せてくれる?」


「ゴ!」


 そう指示するとお腹の部分にニュニュと20センチほどの平たい魔石が出てきた。

 ゴーレムのコアとなる部分でこれを壊されると機能停止してしまう。

 ゴウの場合この防御力があるのでそうそうそんな心配はないのだが。


 ――今朝魔力込めてあげてから込めてないけど、この訓練くらいじゃ全く減ってないかぁ。まぁ声のための風魔法とさっきの硬質化くらいだし、予想通りかな?


「もういいよ」とコアをしまわせて、再度訓練を再開した。






 夕方になり、そろそろ夕飯の準備もあるので終わることにした。

 結果を言うとゴウの戦闘レベルは一気に上がったと思う。


 ――単純なヒト型の移動方向の予測はできるようになったし、簡単な攻撃のフェイントもしてくるし、してくるということはそのレベルのフェイントには引っかからない。


 3時間程度の訓練の内容と、ゴウの成長具合を振り返る。


 ――何より形状変化可能なゴーレムだからこその、足元を棒状に伸ばしてくる攻撃というより妨害がいやらしい……その気になったらその棒を相手の足にあてて、拘束なんてことも可能だろうし……


 と足元を払う様に回ってきていた、ゴウから延びている棒を見る。


 ――軽く飛ぶか、それ自体を防御する、もしくは範囲外に一旦引くとかしないといけないもんなぁ……まだ身体強化をそこまで使わなくてもどうにかなるけど、ゴウが慣れてくると私も身体強化くらいは普通に使わないといけないかもなぁ。


 ゴウも通常の形状に戻ってズルズルと私のもとへと寄ってきた。


 ――子供の体の私は身体強化なしだと、短剣くらいじゃないとまともに物理戦闘できないしなぁ。私は魔法が得意だからそっちが本職だし、身体強化の魔法使えば物理戦闘もこなせるけど……まぁこの辺りは私も訓練かな。


「お疲れ様、またやろうね」


 とゴウの頭を撫でてやりながら夕飯の準備をするために家へと入っていった。

保護魔法は強度強化、魔刃化は魔力による刀身の出現、鋭利化は切れ味増加に加え多少の強度増加という感じです。

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