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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
1章『森での出会い』
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25話『今後の事』『そんな術式が……』

 朝食を食べた後は、再度昨日の話し合いの件について確認する。


 まず私はこのままこの村に残る。


 ――まぁ町に行ったところで、まともなコミュニケーション取れると思えないし、ありがたいけど……原因が"私から出てる圧"っていうのがよくわからない……そんなに出てるのだろうか……


 この村やミリーのことは今のところ隠しておく。


 ――厄介なことになりそうだし、しばらくはそのほうがいいかな? なんかカーウィンさんが「なぁやっぱりこんな子供を放っておくのはどうかと思うんだが……」と言ってるけど……リルは知っているが実際は子供ではないし、それなりに能力もあるからなぁ……と、リルにも能力があるから問題ないって押し切られたね。


 必要そうなものはこまめにリルかカーウィンが持ってくるようにする。


 ――大量の荷物をもって森に入っていくのも不自然だからという理由らしいけど、私としてはお話できる人が来てくれるようになるだけでもうれしいよ!


「とりあえずはこんなところかしらね?」


「ギルドには調査として出てきたけど、どう伝えるつもりだ?」


「あくまで森の違和感のある場所の調査という名目で来たからどうとでもなるわ」


「そ、そうか……」


「それこそ、魔物の巣かもしれない場所があったから、って言っておけば、私も森に確認のために入っていけるかもしれないしね」


「トップがそんな軽々といけるものなのか?」


「ウェルドの町だからこそかしらね。端っこってだけあって、そんなに仕事も多くないし、私が戦えることはみんな知ってるから不思議には思わないでしょう」


「それもそうか……」


「ミリーも今の内容で大丈夫かしら?」


「……問題ない。あ……次来るときに布団に入れる綿とかお願いしたいんだけど……」


「結構かさばるが……まぁ1セットくらいなら別に不思議に思われないだろう。2、3日籠るときとか、野営道具だと思われるさ」


「……その時はここに2、3日泊ればいい」


「う、あ、あぁ……そ、そうだな……」


 ――そうなると、人見知り用ポーションの材料も余裕もって集めておかなくちゃね!


 と、なぜか冷や汗を流しつつ目をそらすカーウィンさんと、期待しているような、喜んでいるような表情のリルを見ながら意気込んだ。




 多少話をした後、二人は帰ることになったため準備をし始めた。

 来るときにリルが倒した角イノシシは、私作の荷台があるにせよ荷物には変わりないのでここで解体し、ここまで運んでくれたお礼とのことで1匹分のお肉を私がもらえることになった。

 解体は私とリルが行い、カーウィンさんはリルに言われて泊った部屋を掃除しに行った。


「カーウィンにはミリーの事黙っておいた方がいいのかしら?」


「……リルのことであれだけ驚いてたのに、純ヒト族にしか見えない私が本当のこと言っても混乱させるだけ」


「まぁ……それはそうかしら……純ヒト族……ねぇ……」


 何か含みがあるような言い方をしつつ、ミリーをチラ見する。


 ――え、何……鏡で確認もしたけど、私ヒト族だよね? 別に額に水晶ついてるわけじゃないし、羽が生えてるわけでもないし……


 などと考えつつも解体作業を進めていく。


「……ゴウ、これちょっと吊るして」


 というと、「ゴオ!」と右手をさっと上げた後、2メートルくらいの高さまで伸びた。体積が変わるわけではないので、その分細くなってはいるが、保護魔法のおかげで耐久に問題はない。

 角イノシシの足を持ち上げてもらってる最中に、リルが驚いた表情で固まっていた。


「……どうしたの」


「い、いやどうしたもこうしたもないんですが……え、なんですかその機能。私知らないです……」


 敬語が出るほどの衝撃だったのか、伸びたゴウを眺めながら呟くように声を出す。


「……最後の方に書いてもらった形状変化の術式」


「え、あれって声を出せるようにするための調整用じゃなかったんですか? かなり小規模な術式でしたが……」


「……あれとつなげた術式に増大用術式があったでしょ」


「え……あれって、充填された魔力を少ない量で済むようにする減少用の術式では……魔石につながっているようでしたし」


「……あれが増大術式だよ。減少術式と似てるけどね。必要な魔力量を減少させて燃費をよくするのが普通なの?」


「そうですね……そういう刻印がされてるものは減少の術式です。それでもこの国だと高価な部類なんですが……」


「……確かに減少の術式で燃費はよくなるね。ただ減少の術式だと、稼働に100必要なところを魔石からは50で済むって感じだけど、完ぺきじゃなくてデメリットとして少し力が弱くなっちゃうんだよね。対して増大の術式だと、稼働に100必要なら、魔石から50の力を出してそれを倍にして100にしてやればいいってこと。メリットデメリットは力が若干大きくなるから、キャパオーバーで自壊する可能性がある。だから減少の方が主流になってるんじゃないかな?」


「なるほど……」


「……その強くなった力はゴウの場合保護魔法でどうとでもなるし、増大術式の場合、魔石に充填する際の魔力も増大させて入れられるから、こっちの消費が少なくなるっていうのもある」


「た、たしかに、魔石には減少術式つかいませんもんね」


「……そりゃあ水桶に水を貯めたいのに、その容量がコップになっちゃうようなもんだもん。燃費よくなっても、保有量が減っちゃ元も子もないしね」


「増大だと、雨を水桶に貯めるところを、滝で貯めるようなものですか……」


「……極端にいうとそんな感じ」


「なるほど……勉強になりました……それにしてもミリア……み、ミリーの知識と技術には驚かされま……されるわね!」


 と無意識に敬語になり、ミリアリア呼びになりそうになったことに気が付いたリルが慌てて口調を戻す。


 ――つい研究してた内容だったから、一気にしゃべっちゃったけど……また来た時に何か教えてあげようかな。……あと喉乾いたなぁ……


 普段あまり言葉を出してないことを実感しつつ、解体作業を進めていった。











 朝食を食べ終えたところで、私は昨日の話をまとめようと切り出した。


「まず、ミリーはこのままこの村に住んでもらうことになるわね」


 ――これは結界を張りなおしたし、2人ともわかっているわね。


「次にミリーの事はもちろん、この村もしばらくは隠蔽するわ」


 ――急に表れた村はもちろん、過去にここに住んでいた私たちを排除しようと国が動いてたんだから、再び現れたら何をしてくるかわからないし、ミリー本人も見つかれば絶対に厄介なことになるでしょうし……まぁミリーなら問題なくどうにかするんでしょうが、ここから離れちゃうかもしれないしね……


「なぁやっぱりこんな子供を放っておくのはどうかと思うんだが……」


 とカーウィンがミリーをちらっと見ながら言ってきた。


 ――まぁミリーは本当のことをまだカーウィンには話していないみたいだし、仕方ないのだけれど、ミリーが話してないことを私から話すのも憚られるし……


「ミリーの生活面や戦闘面も見たでしょ。何も問題ないわよ」


「確かにそうだけどさ……受け答えも子供っぽくないし……」


 失礼だと思ったのか、後半は私にかろうじて聞こえるくらいの声量でつぶやいた。


 ――ふふ、カーウィンは優しい子に育ったみたいで何よりだわ。


「それとここへは私かカーウィンがちまちま来るようにするわ。今回みたいに一気に物資を持ち込んでるのを見られるのも困るしね」


「ギルドには調査として出てきたけど、どう伝えるつもりだ?」


「あくまで森の違和感のある場所の調査という名目で来たから、どうとでもなるわ」


 ――魔物の住処らしき場所の定期調査とでもいえば通るだろうしね。何もいなかったけど、念のためと言って私も出れば不安もないでしょうし。これも隅っこの辺境の町だからこそかしらね。もっと中央付近だと魔物の素材依頼とか、応援要請だとか色々忙しいのでしょうけど……


 ミリーもそれで問題ないとのことなので話は終わり、ミリーが次に来るときに綿を持ってきてほしいと注文してきた。

 布団には干し草などを詰め込んでいた物で、それでも十分快適だったのだが、交換の手間を考えるとあったほうがいいらしい。


「結構かさばるが……まぁ1セットくらいなら別に不思議に思われないだろう。2、3日籠るときとか、野営道具だと思われるさ」


 ――確かに布団に使う量となると、かなりかさばるけど、カーウィンの言う通り野営道具っていわれれば不思議じゃないわね。この子の場合この森ではそんなもの持ち込まず野営するから、あんまり見たことないけれど……


「……その時はここに2、3日泊ればいい」


 ――な、なんと! また泊れる口実になるわね! カーウィンは野営するときもそんなものあんまり持ち込まないし、これは私が来た方があやしまれないわよね? ね?


 と近いうちにまたミリーと会えると確信した私は嬉しくなってしまった。




 帰り支度をする前に、角イノシシをどうするか聞かれたので、売れそうな部位だけ持ち帰り、可食部は1匹分ミリーにあげることにした。


 ――全部上げようかと思ってたんだけど、ミリーに売る伝手がないし、肉も1人だと多すぎるわよね……


「カーウィンにはミリーの事黙っておいた方がいいのかしら?」


「……リルのことであれだけ驚いてたのに、純ヒト族にしか見えない私が本当のこと言っても混乱させるだけ」


 ――確かに若返ってるけど200年は生きてるとか、歴史書とかにも乗っているミリアリアだとか言っても、混乱するわね……ミリーもミリアリアの頃の記憶がない部分もあるみたいだし、会ったことのある私じゃなきゃ理解できないでしょうしね……


「まぁ……それはそうかしら……純ヒト族……ねぇ……」


 ――しかし……純ヒト族ね……確かに見た目はすごく可愛いヒト族の女の子なんだけど……この魔力に緻密な魔力操作技術や知識……そしてたまに出てる謎の圧……フードかぶってる状態の視線の様なものだけであれほどなんてよっぽどなのよねぇ……ミリアリア様の頃を知ってるから、ヒト族なんでしょうけどね……


 などと苦笑しつつ考えている横で、「……ゴウ、これちょっと吊るして」とミリーがゴウに命令していた。

 命令を受けたゴウがニュニュニュっと縦に伸びていき、角イノシシの足をつかんで持ち上げていた。


 ――……え? ちょっとまって、え、なにそれ!?


「……どうしたの」


「い、いやどうしたもこうしたもないんですが……え、なんですかその機能。私知らないです……」


 ――形状変化の術式を使っている? いやいや確かに書きましたけど、もっと小規模なものしかできないような術式でしたよ? 減少術式じゃなくで増大術式……? たしかに減少術式施してると、稼働時間は増えるけど力が若干弱まりますが、それなら増大術式の方が主流になってるのでは? あぁ……強くなるぶん本体強度が持たないんですね……それなら減少術式なしの状態の方が稼働時間は短いが、力は安全に出せると……なるほど……しかしミリア……ミリーよくしゃべりますね……普段ほとんどしゃべらないのに……


 と急に始まったゴーレムの術式講座を受けつつ解体を進めていった。教えているミリーのみ進み、私は聞きつつゴウを眺めていただけなのだが。

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