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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
1章『森での出会い』
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23話『好奇心が勝つ』『再び始まる授業』

 製薬室でリルに作り方を一通り教えた後大部屋に出ると、カーウィンさんもお風呂から上がったところだった。

 製薬方法を教えている最中は「な、なるほど……たしかにこの方法なら……」などつぶやきつつ見ていたため、おそらく大丈夫だろう。


「んで、リル姉どうだった?」


「たしかにこの方法なら作れはするけれど……製薬というかほとんど魔法使いの領分よあれ……製薬の知識と魔力操作に長けてないとできないし、思いつきもしないと思うわ……」


「そんな魔力操作できるなら、ハンターとか警護とかの仕事についちゃってるか……」


 ――魔法が使えるならできそうなものだけど、そんな難しそうだったかな……確かに単純に魔力を込めるより魔力操作は難しいけど……普通の薬師さんは魔力を込めるだけなのかな……


「さっきも言った通りこの国だと、戦闘以外で魔法をポンポン使うような魔法使いは少ないからね。稀に荷運びとかで重量軽減魔法とか使う人もいるけれど、そういう人はほかの魔法使いから笑われることもあるし。プライドが高いのか戦闘での功績が一番だと思っているのか……あと薬師の方もそう簡単に自分たちの領分を、魔法使いに手伝わせてたまるかっていう思いも感じるわね……」


 ――なるほど……確かに私のやり方は魔法使いとしての魔力操作ありきな抽出方法を取ってたりするからなぁ……


「てことはリル姉には作れるかもしれないけど、ほかの奴じゃ難しそうか?」


「そうねぇ……私なら何とか練習していけば、出回っているやつより高品質なものが作れると思うけれど、この製法を広めるとなるとちょっと苦労しそうね……だから、そのポーションの存在は極力ばれないようにしなさいよ。ばれたら私が作ったって言っておきなさい。どうにかするから」


「まぁ俺は魔法は使えないし、そのあたりの知識は皆無だから丸投げさせてもらうわ……」


 ――確かにカーウィンさんからは魔力はそこまで感じないが、代わりに気力を使い、身体強化やダメージ軽減の技術が長けているように見えるけど……なんだろう……なんかその魔力も、ちょっと変わった風に見えるんだよなぁ……まぁそういう体質の人もいるか。


 と、リルとカーウィンさんの魔力を図りつつそんなことを思う。


 ――さてお風呂も入ったし、あとは……あ、まぁベッド完成してなかった……ちょっと終わらせてこよう……


「……ちょっと作業してくる」


「私もさっき作ってた魔道具作成に戻るわ」


「んじゃあ俺はリル姉の手伝いでもするか」


 と私は新造した部屋へ、2人は隣の家へと向かった。




 ベッド自体の組み立ては終わっていたため、布に干し草などを詰めて布団代わりになるものを作るだけだったため、そこまで時間はかからなかった。


 ――本当はこっちの部屋にも机と椅子くらいは作ろうと思ってたんだけど、今日は泊るだけだし別にいいよね。


 と完成したベッドを眺めながら思う。リルと話をしていた部屋には簡素ながら机と椅子があるが、宿というわけでもないし、寝るだけだからなくても困りはしない。




 自分の作業が終わったため、お茶をもってリルの様子でも見てこようと裏口から出ると、ちょうどカーウィンさんがこちらに向かってきていた。


「うお、そっちは終わったのか?」


「……終わった。リルは?」


「あれはまだまだ時間かかりそうだ……」


「……部屋は出来てるから、奥の部屋で休んでいい」


「あ、あぁ、そうさせてもらう。それはリル姉に持っていくのか?」


「……そうだけど?」


「……そ、そうか。いや何でもない。それじゃあ部屋使わせてもらうわ」


 とカーウィンさんが家に入っていく。

 小さな声で「悪い。これは止めらんないわ」と聞こえたが何のことだったのだろうか……




 隣のリルの家だったところに入ると、魔石を取り付けに来た時同様、入り口付近で作業をしていた。

 しかしあの時とは違い、散らかっていた土はある程度まとまっており、20センチほどの平たい形状の魔石に刻印している最中だった。


 刻印に集中しているためか私に気づいていないようで、入り口に背を向けているリルの後ろから、内容を眺めさせてもらった。


 ――この刻印は……ゴーレム系かな? そういえばゴーレムは作ったことないなぁ。記憶が消えてるだけで、作ってたかもしれないけど……せっかくだからこのまま見させてもらおうかな。


 と書き込まれていく刻印内容を眺めていく。


 基本的にゴーレムとは主の命令通りに動き、ある程度高度な刻印になると少しは考える力を持たせることもできる。

 思考能力までつけると刻印も複雑化し、破損しやすくなる。荷運び等の簡単な作業や、侵入者を攻撃するなどの命令が多いため、そこまで施されているものは少ない。

 思考能力の回路がうまく機能していないと、無駄に考えて行動が遅れる可能性もあるうえに、破損しやすいということは維持が大変になるし、主の命令に従うだけの方が何かと使い勝手がいいというのもある。


 ――このサイズの魔石だと思考能力も刻印できそうだなぁ。身振り手振りでの意思疎通とかもできるかな?


 などと眺めていると、ひと段落着いたリルが勢いよく振り返り、私に気が付いた。


「ミリー! い、いつからそこに!?」


「……命令系統の刻印してる辺り」


 ――あ、あれ、見ちゃまずかったかな?


「そう……驚かせようかと思ってたんだけど、今までのお礼に掃除とか単純作業をしてくれる土ゴーレムをプレゼントしようと思って作ってたのよ……」


 と若干落ち込むような恥ずかしがるような仕草で答えてくれる。


 ――え、私にくれるものだったの? ……それならちょっと試したいことあるし、口を出していいかな……


「……そこの刻印を隣のとつなげて、あと風を起こす魔法の刻印を内側に入れて、その外側の右の奴とだけつなげて」


「え? は、はい!」


 とリルは私の言った通りに刻印を施していく。


「……ついでに思考能力もいれてみようか」


「あ、あれを刻印するには、私の技量だとちょっとスペースが……」


「……大丈夫、これをこうして、その刻印から流用して」


 とあくまで作業はリルに任せて、どんどん口を出していった。











 私はミリーに高品質治癒ポーションの製法を教わっていたのだが、それは思いつきもしない製法で、驚愕しつつも学ぶ箇所の多いものだった。


 製薬室から出るとカーウィンがお風呂からちょうどでてきて、どうだったかと聞かれたので、素直に答えることにした。


「たしかにこの方法なら作れはするけれど……製薬というかほとんど魔法使いの領分よあれ……製薬の知識と魔力操作に長けてないとできないし、思いつきもしないと思うわ……」


 ――エルフ族でも似たようは製法は使うけど、ここまで緻密な魔力操作を必要とする製薬方法なんて……熟練の魔法使いでもないと難しいわね……現状出回っている治癒ポーションでも事足りるし、わざわざそんなレベルの魔法使いが製薬なんてしないだろうし、この製法が出回らないわけだわ……


 と教えてもらった製法の手順を思い返しながら考える。


 薬師と魔法使いの仲が悪いわけではないのだが、魔法使い自体が基本的に戦闘面しか考えていないことが多いというのがある。

 さっきも言った通り、傷はポーションか聖魔法での治療で事足りるので、自分たちは攻撃特化でいいという考えが根付いているからだ。


 ――確かに私ならこの製法で今の治癒ポーションより高品質なものは作れるだろうし、それはエルフ族のポーションよりも更に効果が高くなるだろうけど……この製法を広めるには苦労しそうね……ただ広めただけだと、軍部とかからは制作を求められ、それに携わることとなる魔法使い達からも反感がでるだろうし難しいわねぇ……


 広めた後のことも考えるが、中々穏便に済むとは思えないので、この話はおいおい考えるとして、今はとりあえず隠す方向に勧めることにした。


 ――ま、もともと私はこの国のことは良く思ってないから、そこまでしてあげる義理もないしね。いざとなったらカーウィンを連れて他国にでも行ってやるわ。


 と過去に自分たちにしてきたことを思い出し、報告の義理はないと考えることをやめた。




 ミリーが夕食前にやっていた作業を再開するとのことなので、私もプレゼントのゴーレム制作に戻ることにした。

 カーウィンが私の方を手伝ってくれるみたいだが、素材は出してあるし、魔法系に疎い彼が見ていても面白いものではないと思うのだけれど。


 そう思いつつ作業をしていると、部屋ができていれば先に休ませてもらうといい、帰っていった。


 ――それなら最初からミリーの手伝いしてあげればよかったのに。まぁあっちもあっちで特にやれることなんてないでしょうけど……さて、ゴーレムに大事な魔石への刻印を始めますか。


 そう思いつつ高さと幅は20センチほどあるが、厚さは3センチほどの平たい魔石に刻印を刻んでいく。


 ――簡単な作業だけできればいいから、ここをこうして……このサイズの魔石なら魔力保存量は多いからしばらく持つけど、効率化させるものも組み込んでおいて損はないわね。




 次々必要な刻印を刻んでいって、一息入れようと集中していた気を戻すと、背後から気配を感じて勢いよく振り返った。


 ――え、ミリアリア様!? え、いつから!? というか圧もそんなにないし気配隠すのうますぎでは!? いえ、私も集中していましたけど、さっきまでと違って何というか圧がなさすぎます! というかカーウィン! サプライズにしたいからバレないようにしてっていってたのに、なにしているのよ!


「ミリー! い、いつからそこに!?」


「……命令系統の刻印してる辺り」


 ――動力用魔力系の後に刻印してたから、ほとんど最初じゃないの……ここまで見られたなら、もう全部ばらしちゃうかぁ……雑用ができるゴーレムを、今までのお礼にプレゼントしようと思っていたんです……


「……そこの刻印を隣のとつなげて、あと風を起こす魔法の刻印を内側に入れて、その外側の右の奴とだけつなげて」


 ――え、あ、こことここですね。それで風魔法? 確かに掃き掃除とかをするときに起こせれば便利ですが……足がないタイプで這いずるので、チリとかはそれで吸収して掃除できますよ? いや、ミリーに上げるものですし、言われた通りにやりますけど。


「……ついでに思考能力もいれてみようか」


「あ、あれを刻印するには、私の技量だとちょっとスペースが……」


「……大丈夫、これをこうして、その刻印から流用して」


 ――ちょっと待ってください、私の技量ではこのサイズの魔石に、追加でそれは厳しいのですが……え、ここの刻印を流用……あぁ確かに……これいけるんですか? って、今言った刻印って風魔法の刻印もあるんですが……あれ、いつの間にかまた教えてもらってる?


 と唐突に始まったミリーの授業は夜更けまで続いた。

 その間ミリーから感じられる圧は夕飯時に比べるとないに等しい物だったと思う。

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