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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
1章『森での出会い』
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18話『どう暮らすか決める』『危うく町が……』

「しかし……リル姉がエルフなぁ……」


 あのあと、しばらく心の整理に時間がかかったカーウィンさんがそうつぶやく。

 その間はリルの話に相槌をうっていたりしていたが、カーウィンさんの話になると反応はしていた。


「そういや、肝心のミリーとの話はどうなったんだ?」


「それは今からね。ミリーは隠れていたこと自体覚えてないみたいだし、これから本人がどうしたいのかはまだ聞いてないわ」


 少しは隠れていた理由も推測できるけれど、記憶がない部分なのは間違いないので頷いておく。


「そっか……しかしこんなところに急に村が出てきたことはどうする?」


「報告したほうがいいのだろうけれど……問題……とまではいかなくても、調査が入るのは間違いないでしょうね……」


 ――え、まって、ここにほかにも人が来る可能性があるの!? 今でさえまともに言葉が発せられないくらいなのに……この二人はわかってくれているみたいで何も言ってこないけど、ほかの人もこうとは限らないし、それは困る……


「ミリーが良ければまた結界魔法で隠しておく? ただ私はまた来たいから隠蔽というよりは人払いに近いものになっちゃうけれど……」


 ――なるほど! そうすればまたリルやカーウィンさんは来られるし、うかつに出歩かない限り他の人と遭遇することもないわけだ!


「いっそのこと、ここをばらしてミリーを町に連れていくっていうのもありかしら?」


 ――まってまって、さすがに無理、それは無理! 常時耐性ポーション飲み続けないといけなくなるし、そのための素材も必要になるし、最終的にはそうしたいけれど、忙しすぎて絶対に無理!


「いやぁ……こういっちゃなんだが……町の人間だと気絶するやつもいると思うぞ……」


 ――え、それはどういう……


「あぁ……たしかに私やハンターのあなたは耐えられてるけど、一般人には厳しいかしら……」


「……なぜ……?」


「っ!? いや、その……なんというか、あれだ……存在感というか……」


「その駄々洩れの威圧感が一般人にはきついかしら……」


「おまっ! そんなストレートに!」


 ――え、威圧感……? でてる? 駄々洩れ? うそでしょ? 何も話してないし、二人が話をしてるのを聞いてるだけなんだけど……でもリルもカーウィンさんもそういってるし、出てるんだろうな……かといって、出してるつもりがないものを抑えることなんてうまくできないし……


「そうなるとやっぱりミリーには申し訳ないのだけれど、しばらくは結界を張ってここに住んでもらうことになると思うわ……」


 ――いや、いきなり町は無理だから私もそれでいいんだけれど……ってなんかカーウィンさんがちらちらこっちを見てくるのはなぜ?


「……そう……わかった」


「そうなると結界の魔道具の刻印も書き直ししなきゃだし、持ってきましょうか」


 ――確かこの村には隠蔽魔法の結界があったし、それを維持する魔石がどこかにあるんだろうけど……どこだったっけなぁ……


 そう思っているとリルが席を立ち、先頭を歩き始める。

 私とカーウィンさんはそのあとを無言のままついていくと、私の家のお隣の家へと入っていった。

 その家は村の中でも一回り大きめの作りなのがわかり、その庭の畑はミリアリアが使っていたためか、きれいなままだった。


 リルはその家に入ると迷いなく奥の部屋へと向かっていく。


「ここに入るのも50年ぶりね……ここは私の家だったのよ。畑はミリーが今も使ってくれているみたいで嬉しいわ」


 と振り返りながら笑顔を向けてくれる。


 ――うん、ごめん。使ってた記憶がないよ……でも手入れ方法はわかるから、これからもありがたく使わせてもらうね。


 その部屋の角で急に立ち止まったリルは、床の溝に指をかけて持ち上げる。そこには地下へ続く階段があった。


「……こんなところに……」


 ――地面の中にうっすら魔力反応があるからそのうち掘り返そうとしていたけど、このタイミングでリルが来てくれてよかった……


「隠蔽魔法の魔道具を設置してあるけれど、魔物とかが来た場合に守れるように障壁結界の魔道具もあってね。それを壊されないようにって地下に作ったのよ。まぁ使う機会はなかったのだけれどね」


「この辺りの魔獣や魔物なんて、リル姉一人で殲滅できそうだもんな……」


 ぼそっと言うカーウィンさんの言葉を聞きながら奥へと降りていく。

 光源魔法をつかい奥へ進んでいくと、その先には5メートル四方の空間があり、壁には二つの魔道具が設置されていた。


「こっちが隠蔽魔法で、こっちが障壁結界ね。隠蔽魔法の方はたまに魔力充填されてたみたいで、問題なさそうだけど、障壁結界のほうは作り直しかしらね」


 言われた魔道具を見ると、確かに障壁結界と言われた方は劣化しており、まともに起動できなさそうだった。

 隠蔽魔法の方は魔力を込める際に修復作業もしていたのか、単純に魔力が切れて効果がなくなっているだけのようで、魔力を充填してやればすぐにでも起動できそうだった。


 ――隠蔽魔法のほうは魔力の充填してたんだなぁ……え、だれが? 私?


「ミリーが丁寧に充填と補修をしてくれていたから、こっちの魔道具はすぐにでも使えそうだけれど、どっちで作り直す?」


 ――あ、やっぱり私なんだね。えぇ、これはあれかな、リルに案内されてここを教えてもらっていた、みたいなことで人間関係扱いで消えちゃってるのかなぁ……もうほんとわかんない……


「……作り直すならこっち、そっちは何かに使うかもしれない」


 ――どうせ作り直すなら現状使えなくなってる方でやった方がいいよね。


「そう……わかったわ」


 そういうと障壁魔法を刻印していた魔石を、台座から外して私に手渡してくる。さすがに村を覆うことができる結界を発動できていただけって、直径25センチほどとでかかったので、両手でしっかりと持って帰ることになった。











 どうにか気持ちの整理を付けた俺は、ミリーのことについてまだ話してないとのことで、その話にも参加することになった。


 ――二人きりで話してた内容は何だったんだ……まぁリル姉がエルフだって話とかをしてたんだろうけども……


「ミリーが良ければまた結界魔法で隠しておく? ただ私はまた来たいから隠蔽というよりは人払いに近いものになっちゃうけれど……」


 ――いやそれでいいのかギルドマスター……まぁ犯罪的なことでもないし、平和に暮らせるならそれでいいけどさ……


「いっそのこと、ここをばらしてミリーを町に連れていくっていうのもありかしら?」


 ――たしかにこんな子供が一人で森の中の廃村にいること自体おかしいんだが……いやいや、ちょっとまって! ミリーを町に? いやいやいや、無理だろう!? 角を曲がって急にこの威圧感にさらされるとか、耐えられる人のほうが少ないんじゃないか!?


「あぁ……たしかに私やハンターのあなたは耐えられてるけど、一般人には厳しいかしら……」


 ――そうだよ……ハンターはハンターでも、薬草採取とかメインの魔獣狩りに参加してないメンバーだったら、あの朝の威圧感の前じゃ同じことになるかもしれないレベルだぞ……


「……なぜ……?」


 ――なぜ、なぜかって!? その威圧感のせいだよ! それさえなきゃ普通の可愛らしい子供なんだがな……いやなんていえばいいんだこれ……機嫌を損ねたくねえし……


「その駄々洩れの威圧感が一般人にはきついかしら……」


「おまっ! そんなストレートに!」


 ――たしかにそうだけど、そんな直球でいうか!? リル姉はミリーの威圧感は平気そうだが、今はおとなしい方だからなこれ!


「そうなるとやっぱりミリーには申し訳ないのだけれど、しばらくは結界を張ってここに住んでもらうことになると思うわ……」


「……そう……わかった」


 ――よ、よかった……機嫌は損ねてないようだ……二人の戦闘とか止められる自信どころか、耐えられる自信すらねぇよ……


「そうなると結界の魔道具の刻印も書き直ししなきゃだし、持ってきましょうか」


 そういうリル姉の後についていき、隣の廃屋へと入っていく。ここはリル姉の家だったらしい。

 家自体はぼろぼろだが、畑だけはミリーが使っているからかきれいだった。

 奥の部屋に行き、床の一部を外した先に見えた地下へと続く階段を、リル姉を先頭に三人で奥へと進んでいく。


「隠蔽魔法の魔道具を設置してあるけれど、魔物とかが来た場合に守れるように障壁結界の魔道具もあってね。それを壊されないようにって地下に作ったのよ。まぁ使う機会はなかったのだけれどね」


「この辺りの魔獣や魔物なんて、リル姉一人で殲滅できそうだもんな……」


 ――実際俺一人でも普通に何とかなる魔獣ばかりだし、リル姉だったら数で来ようが余裕なんだろうな……


 その先の部屋で二つの魔道具のうちどちらで作り直すかの話をし、障壁魔法の方を作り直すことにしたらしい。


「……作り直すならこっち、そっちは何かに使うかもしれない」


「そう……わかったわ」


 そういうとリル姉は魔石をはずし、ミリーに手渡す。


「隠蔽魔法の方はいつか使うかもしれないのね……そういう可能性も考えてると……そうならないように手助けしなくちゃね」


 ぼそっとリル姉がミリーには聞こえないような声量でつぶやく。

 その優しさのこもった瞳の先のミリーが両手で魔石を大事そうに抱える姿は、威圧感抜きだと可愛らしく見えた。

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