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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
1章『森での出会い』
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16話『リルとお話』『ようやく再開できました!』

後半のリル視点が2話前から引っ張ってきたのでちょっと長めです。本編が短いともいう。

「まず、お礼を言わせてください。以前は私たちを救って下さりありがとうございました」


 ――え……うん……ちょっとまって、私それ知らない……本当に私……?


 全く記憶にないことでお礼をいわれて困惑する。


 ――そもそも目覚めてから3日しかたっていないし、そのあいだに会ったのはカーウィンさんだけで、助けるも何も……ということは記憶を消す前の私、ミリアリアだった頃に助けたってことなのかな? 人と関わったところだけ抜けてる感じがするし、それならつじつまが合うけど……


「今はリルと名乗っております。こうしてまたミリアリア様にお会いできてとてもうれしいです」


 ――うん、やっぱりミリアリアの知り合いだ……えぇっとどうしよう……記憶がないんだけど……


「……どうして私がミリアリアだと?」


「お姿は変わっておりますが、その髪の色は目に焼き付いておりましたし、何よりその魔力と威圧感は忘れようがございません」


 ――え、魔力はともかく、そんな威圧感だしてる?


「……そう……実は……ところごころ記憶が消えちゃっててあなたの事覚えていない。ごめんね」


「なんてこと……いや実際に肉体を若返らせるような魔法薬をお使いになったんですもの、副作用があっても不思議じゃありません。決してミリアリア様が失敗したなんてことはないと思います!」


 ――そうだね、『人間関係まわりの記憶を消して若返る魔法薬』として作ったってミリアリアの手紙には書いてたから、成功はしてるんだろうね。人見知りが完全に治ってる感じはしないから、おおむね成功ってところだけども……


「……あとそんな丁寧な口調で話さなくてもいいよ?」


「で、ですがミリアリア様に対して失礼では……」


「……本人がいいって言ってるんだから、できるなら崩してほしい」


「…………わかったわ。」


 ――うん、やっぱり畏まられて話されるより、こういう方が落ち着くしいいよね。


「……それでリルさんのお話っていうのはどういうことを聞きたいの?」


「私のことはリルと呼び捨てでお願いします。……それで、この村で隠れ住んでいた経緯とかを聞きたかったのだけれど……記憶がないのよね?」


「……申し訳ないけどそうなるね……」


「いえ! ミリアリア様が謝られることはございません!」


 ――口調が戻っちゃってるよ……でもごめんね、本当になんでここにいたのかなんて思い出せないし……


「私たちがここから離れて50年たっているので、そのあいだもずっといたのかとかも聞きたかったのです」


 ――え、50年? カーウィンさんから聞いた話だと40歳くらいじゃなかった?


「これに見覚えはご……ないかしら?」


 と口調を砕けた感じに戻しつつ、右腕にはめていた腕輪を外す。

 外すと同時に変化の魔法が解け、髪の色がエメラルドグリーンになり、耳が延びていき、そこにはエルフ族の女性が座っていた。


 ――え、エルフだ! 何か魔道具を身に着けてるなぁとは思ってたけど、変化の魔道具だったとは……魔力の質をごまかす隠蔽までかかってるから気づかなかった……しかしこの腕輪に見覚えがないかって言ってたけども……あ、あれ、この魔道具作ったのって私? 刻印にクセが見える……何より内側に律儀にミリアリアって掘ってるし……


「……これ……多分私が作ったものだよね?」


「えぇ、ミリアリア様からヒト族の中で暮らすならあったほうがいいと頂いたものです」


 ――確かに変化の魔法を常に使い続けるにはそれなりに魔力が必要だし、ばれたくないならこの手の魔道具があるに越したことはないか……でもなんでリルはヒト族に化けて暮らしてるんだろう? ……たしかに話は長くなりそうかな?


「……長くなりそうだから、先にお昼食べてからにしよう」


「そうね、ミリアリア様には聞いてほしいことも多いもの」


「……今の私はミリーだから、こちらも呼び捨てでいいよ、リル」


「そ、そん……いえ、わかったわミリー」


 ――敬称なしで名前を呼びあえるのは友達みたいでいいなぁ。


 再度腕輪を付けたリルを連れて台所まで行くと、荷物を卸して一息ついてるカーウィンさんが枝とかをまとめてくれていた。


「もう話は終わったのか?」


「いえ、まだ長くなりそうだから、先にお昼にしましょうってミリーが」


「……片付けありがとう。できるまで休んでて」


「あ、私もお手伝いします!」


 とついてきたので、リルと一緒にお昼の準備をすることになった。


 持ってきてもらった調味料とかを確認しつつ、リルがお肉を焼いてくれるというので、そのあいだにパンとスープを作ることにした。











 私はカーウィンと一緒に、報告を受けた廃村に向けて森を歩いていた。

 私たちの村があった方角で間違いないので、やはりミリアリア様で間違いないのではと緊張と喜びの感情が膨れ上がっていく。


 ひとまずカーウィンが一人でその少女に話して許可を取ってくるという話になり、廃村からちょっと離れた場所で待機することとなった。


「いくら私の実力を知ってるからって、こんな森の中に女性を一人にして何も思わないのかしらねぇ? 一緒に薬草採取にも行ったことあったのに、育て方間違えたかしら?」


 とリルになる前にたびたび一緒に森に入っていたころを思い出す。育て方といっても、森での行動の仕方くらいしか教えてないのだが、それでも息子のように思っていたりする。


 ――カーウィンのお母さまには申し訳ないけどね。


 などと考えていると魔獣が近づいてくる気配があった。


 ――まだうまく隠れてこちらの様子を見てるようだけど、力量差がわかる魔獣かしらね? わかるならそのまま何もしてこなさそうだけど。


 と気配に集中していると、ものすごい速度で近づくものを感知した。

 感知したといっても気配等は消しているようでうまくつかめないが、森の中での気配や魔力に敏感なエルフの私には、その隠蔽がうますぎて逆に不自然に感じ取れたことで気が付いた。


 ――え、なに!? この森にそんなことできるものなんて!


 近くの木の裏にくると同時に一瞬だけ威圧感に似た何かを感じ取った。

 それは数日しか行動を共にしていなかったが、忘れることのできない気配。恩人の気配だとすぐにわかった。


 その一瞬の威圧に反応して2体の角イノシシが向かってくる。


 ――ふふ、そうよね一瞬でも急にあんなの感じたら、まともな反応しなくなるわよね。これはいい機会ね、私もちゃんと戦えるようになったってところをお見せしなくちゃ!


 と2体を瞬殺し、後から来た3体目も攻撃をうまくいなし手早く討伐する。


 そうして終わった後、気配があった木へ向き直り深々と頭を下げた。


「いかがでしょうか? 私もちゃんと戦えるようになりました」


「……手際もよかったし、充分すぎると思うよ?」


 気配を消すのをやめた人影が木の裏から出てきてそう返してくれた。

 改めて隠すことをやめた気配と以前にも感じたことのある威圧感を受け、ミリアリア様本人だと確信して頭を上げた。

 そこには10歳ちょっとくらいの少女がたっていた。外見は確かに少女だが、深くかぶっているフードからはみ出た髪の色は、記憶にあるミリアリア様と同じだし、何より気配や魔力が本人だと感じさせてくれていた。


 ――本当に少女なのですね。しかしミリアリア様ならそのような魔法や魔法薬を制作もできるのでしょう。なんにせよ生きてお会いすることができた。


 そのあと彼女は話し合いに応じてくれて、家まで案内してくれるというので後ろを着いていった。


 木々を抜け、今は廃村となってしまった村が見えたところで涙があふれてきた。


 ――ただいま。


 50年も経っているから家屋はぼろぼろになってはいるが村自体はちゃんと残っていた。

 ミリアリア様が建てたであろう見覚えのない家とその近くの畑は生きていた。

 それはミリアリア様がずっとこの村にいて、見守っていた証拠でもあった。


「……後ほど2人きりでお話ししたいことがございます」


 あれからどうしていたのか、とか私はこうしていたとかいろいろ話したいこともあった。

 もともとカーウィンには話し合いをするという体で連れてきてもらっているし、ミリアリア様も承諾してくれた。


 増築したらしい真新しい木のにおいのする部屋に案内された私は、窓から見える村を眺めていた。


 数年しかいなかったけれど、井戸を作り畑を作り、落ち着いてきたころになると、大物を狩った日にはみんなで中心部で宴会みたいなこともやったなぁと思い出す。

 西側に移り住んだ仲間とはよく連絡もしているが、会いたい気持ちが強くなったのも仕方がない。


 思い出にふけりすぎてカーウィンが小さな机と椅子を持ってきたことにさえ、声がかけられるまで気が付かなかったが、50年ぶりの里帰りだから許してほしい。


 ――カーウィンには私の本来の姿と素性を明かそうかしらね……ミリアリア様とも相談してからになるけれども。明かしたところで町にいられなくなったら、ここに住まわせていただけるかしら? もしそうしていただけるなら、何も心配することはなくなるわね。むしろミリアリア様のお世話をし続けられるならそのほうがいいまであるわ。


 と微笑みながらカーウィンに持ってきてもらったお礼をいうと、ミリアリア様が今さっき作ったと教えてもらう。


 ――未だにあの方は必要だと思ったら、すぐに行動して作ったりしちゃうのね。


 座りながら窓へ視線を向け、この村を出ることになった日を思い出していたら、カーウィンと入れ替わりでミリアリア様が入ってきた。

 話がすぐに終わりそうにないと知ったからお茶も用意してくれていたらしい。


 ――あら……このお茶……エルフ族で飲むやつね……そうね、ここにはエルフ族が栽培している畑も残っているし、ミリアリア様も気に入っていたものね。


 と懐かしい気持ちとうれしい気持ちになりながら、話し始めた。


 改めてお礼を言うと、ミリアリア様がどうしてわかったのかと聞いてきたので、容姿や気配等を覚えていたと説明した。


「……そう……実はところごころ記憶が消えちゃっててあなたの事覚えていない。ごめんね」


 ――あぁ……なんてこと……記憶を失っているとは……でも魔法は使えてるみたいだし、魔道具作成の刻印もそのままだったわよね……もしかしてまた何か伝えると迷惑をかけるかもしれないと、わざとそういうふりをしてくださっているのかしら……だとしたら深く詮索するのも申し訳ないし、私にはできないわね。

 それに幻覚魔法とかではなく、実態を若返らせるような魔法薬をつかったんですもの、そういう副作用があってもおかしくないものね。で、でもミリアリア様に限ってそういう失敗はないはずだから、その魔法薬の代償自体がきっとそうなのよ! じゃないとヒト族の寿命なんてもっと延びているはずだもの!


「……あとそんな丁寧な口調で話さなくてもいいよ?」


「で、ですがミリアリア様に対して失礼では……」


「……本人がいいって言ってるんだから、できるなら崩してほしい」


「…………わかったわ。」


 ――ミリアリア様にため口なんて……仲間が聞いたらどんな反応されるかしら……でもご本人はそうおっしゃってくれているし、いいわよね?


「……それでリルさんのお話っていうのはどういうことを聞きたいの?」


「私のことはリルと呼び捨てでお願いします。……それで、この村で隠れ住んでいた経緯とかを聞きたかったのだけれど……記憶がないのよね?」


「……申し訳ないけどそうなるね……」


「いえ! ミリアリア様が謝られることはございません!」


 ――私に敬称は必要ありません! って違います! 記憶がなくなってて経緯を聞けなかったことを残念がっているわけじゃないんです! むしろ出てきてくれただけでもものすごくうれしいのです! 確かに気にはなりますが、それ以上に感謝を伝えられることのほうが大事で、記憶が欠けていることでなにか不便はないかとか心配なだけなのです! そ、そうだ! これを見せれば何かあの時の記憶が少しでも思い出せるのでは!?


「これに見覚えはご……ないかしら?」


 とミリアリア様にいただいた腕輪を見せてみる。


「……これ……多分私が作ったものだよね?」


 ――これでミリアリア様本人だという裏付けは完ぺきになったわね! みんなに報告するのも問題はないわ! 私の記憶だけだと信用してもらえないかもしれないものね!


 そうしていると先にお昼ご飯を食べてから再開しようという話になったので、ご飯の準備を手伝うことにした。


 ――見ててください! かれこれ200年は生きている私です! ここ50年はヒト族の中で一人暮らしだったのでヒト族の料理も完璧です!


 と意気込みつつ2人で昼食の準備を始めた。

今回ミリアリアとリルって打ち過ぎて、ところどころ混ざってリアとかになってるかも…(一応確認はしました。

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