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人見知り最強魔女は仲良くしたい  作者: Guen
1章『森での出会い』
15/59

15話『つよかったけども?』『無事に合流したみたいで安心した』

 カーウィンさんのもとを離れ、ギルドマスターと言われていた女性の付近まで来た。

 気配を探り周りの魔獣を索敵したところ、3体の角イノシシが近くにいることが分かり、そのうちの2体の角イノシシがちょうど彼女へ向けて突進していくところだった。


「【アイスランス】!」


 彼女がそう唱えると、二本の先端の尖った氷の柱が目の前の角イノシシに向かって飛んでいき、正面から突き刺さった。


――突っ込んでるところに打ち込んだとはいえ、あの角イノシシの頭部を貫通するってことは、相当魔力の扱いうまいなぁ……魔力量もすごいし……


 と状況を眺めていると、彼女の後ろから残りの1匹が突進を仕掛けていたが、【アイスウォール】で私がやったように壁を作り、それにぶつけて対処していた。

 耐久が足りなかったのか氷でできた板は砕けてしまったが、それを把握していてしっかりと避けた後、勢いの落ちたところを【アイスランス】で仕留めていた。


 戦闘が終わった後、私が覗いていた木のほうへ向き直り、深々と頭を下げてきた。


「いかがでしょうか? 私もちゃんと戦えるようになりました」


 と何故か若干涙声で話しかけてきた。


「……手際もよかったし、充分すぎると思うよ?」


 ――魔力を込めるのを察知したから様子見してたけど連続で瞬時に発動できてたし、敵の攻撃力と自分の魔法の強度とかも把握できてるみたいだし、さすがギルドマスターって感じで強いね。私が見に来る必要もなかったかな。


「ありがとうございます。……あなたが報告にあった、この先の廃村に住んでいる少女でしょうか?」


 下げていた頭をあげ、私の姿を見た後確認してきた。


「……そうだね。カーウィンさんが言うには、なかったはずの廃村ってことだったから、そこの話なら私の事だと思う」


「わかりました。それでカーウィンはどちらに?」


「……その廃村の近くで待ってもらってる。あなたの近くに魔獣の気配を感知したから私だけ来た。あの人はあなたが強いって言っていたけれど、念のために」


「なるほど。ありがとうございます。それで話し合いの件ですが、受けてもらえるのでしょうか?」


「……もちろんいいよ。とりあえず私の家まで案内するからついてきて」


「ありがとうございます!」


 ものすごくうれしそうな返事を聞きつつ自宅へ向かおうとする。


「……あ……魔獣はどうする? 台座でも作って持って帰る?」


「いえ、今回はそれ以上に大事なことですので、このままにしておきます。マジックバッグも持ってきておりませんので……」


 ――マジックバックも持ってるのかぁ。容量は魔法刻印に込められた魔力次第だけど、収納したものの重さも関係なくなるから便利なんだよなぁ……まぁその分繊細にあつかわないと刻印が壊れて全部飛び出たり、二度と取り出せなくなったりするのが欠点だけど……


「……せっかくだし、持って行ってあげるよ」


 そういうと角イノシシに浮遊魔法をかけ、近くまで持ってくる。昨日と今朝と魔法を使ってみたところ、魔力量が減っている感じがせず、魔力量自体はあるみたいなのでこれくらい平気だとわかった。


「……ありがとうございます!」


 驚きつつお礼をいう彼女に後をついてくるように告げ、自宅へと向かった。




 村が見えるところまで戻ってくると、カーウィンさんは先に家の裏手で待っていて荷物をおろす準備をしているところだった。

 そのまま近づこうとしたときに、ギルドマスターの動きが止まったので振り返ってみると目に涙を浮かべて廃村を眺めていた。


「……後ほど……二人きりでお話ししたいことがございます」


 なんと声をかけていいか悩んでいると彼女からそのように言われて承諾しておいた。


 ――カーウィンさんと二人がかりでまともに話せるかわからないし、できれば一対一から慣らしていきたいからありがたい。カーウィンさんとは2回目で、昨日は結構お話しできたからきっとこの人も大丈夫だよね?


 彼女の様子が落ち着いたので、ついてくるように促し自宅へ近づいていく。


 カーウィンさんもこちらに気が付いたようで、台座から荷物をおろしていた手を止めると軽く手を挙げてきた。


「その様子だと大丈夫なようだな……というかなんだその角イノシシ……」


 私たちが無事に合流できたのを確認したあと、私の後ろにふよふよ浮いている角イノシシが気になったらしい。


「……彼女が倒したけど持って帰れそうにないから、とりあえずここまで運んできた」


「そ、そうか……そんな魔法も使えるんだな……帰りはまたこの台座に乗せて帰るか。あぁそうだ、頼まれていた物なんだが、どこに置けばいい?」


「……布とかはとりあえず大部屋で、ほかは台所で構わない。彼女が話があるみたいだから、荷物は任せていい?」


「お、おう……運び込むのは任されてもいいんだが……」


 そういいつつカーウィンさんがちらっと彼女のほうに目配せした。


「大丈夫よ、何も問題ないわ。私からお願いしたんだもの」


「わかった、それじゃあ荷物は言われたところに運び込んでおく」


 私は彼女についてくるように促して、新しく作った部屋へと招いた。




 ――あ、机とか椅子作ってないや……んー、どうしようか……大部屋だとカーウィンさんにも聞こえちゃうかもしれないから、さっそく増設した部屋の出番だと思ったのに……


「……話は長そう?」


「え、えぇおそらく……」


「……わかった、ちょっと待ってて」


 ――よし、お茶の準備してる間にちゃちゃっと作ってしまおう。簡単なものだったらお湯が沸くくらいには作れるでしょ!


 そういうと台所でお茶の準備をととのえて、裏手に出る。


「うお!? は、話してたんじゃないかったのか……」


「……ちょっと長くなるらしいから、机と椅子がなくて……」


「大部屋のとか運び込むか?」


「……運ぶのは手伝ってくれるならありがたい、ちょっとまってて」


 そういうと余っていた板を加工し、簡単な腰掛と机を組み立てていく。


「……今作るのかよ……」


 後ろで何か言っているが、もうすぐお湯が沸きそうなので作業に集中する。


「……それじゃあこれらを大部屋から廊下に出て、左手前の部屋にお願い」


「おう……」


 制作の際に出た木片などを風魔法を使ってまとめ、台所でお茶の用意をして部屋へと向かう。


 ――今日のお茶は近くで栽培してるやつにしてみよう。この茶葉だけ保存してた容器の雰囲気が違うし、香りも好みだしお気に入りだったんだろうなぁ。


 部屋の前まで来るとカーウィンさんがちょうど出てきたので、「お茶の用意してあるから、終わったら飲んで待ってて」とだけ伝えておいた。


 お茶を机に置き、対面に座ったところで彼女が頭を下げてきた。


「まず、お礼を言わせてください。以前は私たちを救って下さりありがとうございました」


 ――え……うん……ちょっとまって、私それ知らない……本当に私……?











 ミリーを止めることもできず、あの速度だと追いつくことも不可能と悟り、とりあえずミリーの家の裏手で荷物をおろす準備でもしておくことにした。


 ――リル姉は人当たりもいいし大ごとにはならないだろう……もし戦闘になったとしてもあの2人がぶつかったらすぐにわかるだろうし、俺がいたところで役に立つかわからんし……


 などと考えつつ家へ向かっていく。


 ――しかし増築なぁ……昨日出るときには確かになかった部分があるなぁ……壁とか屋根の木材の質感がまだ新しいし……2部屋分くらいか? これを昨日俺が帰ってから建てたのかよ……


 まだ真新しく見える、記憶にない形状の部分を見ながら裏手に台座を引っ張っていく。

 近くにはまだ葉の新しい枝や、木片がまとめられていたため、作業したのは間違いないだろう。


 台座のひもをほどき、荷物を卸せるようにして待っていると、二人が近づいてくるのが見えた。


「その様子だと大丈夫なようだな……というかなんだその角イノシシ……」


 ――2人が戦闘したようなことはなさそうだし良かった……てか何その角イノシシ……え、リル姉が狩ったのか……あの短時間で? それはそうと浮遊魔法をそんな台座代わりのように使えるとか、どんだけ魔力操作うまいんだよ……いやいいや、今はそういうものだとわかったつもりでいておこう。リル姉も何も言ってこないし……それでこの荷物はどこに置けばいいんだ?


「……布とかはとりあえず大部屋で、ほかは台所で構わない。彼女が話があるみたいだから、任せていい?」


 2人きりで大丈夫なんだろうかと不安になって、確認のためにリル姉に視線を投げたが大丈夫らしい。


「わかった、それじゃあ荷物は言われたところに運び込んでおく」


 そういうと2人は増設された方へ向かっていったので、とりあえず調味料とか台所に置いておくものをおろしていく。

 木箱を2つほど入れたところで、ミリーが急に出てきた。


「うお!? は、話してたんじゃないかったのか……」


 ――油断してた……かなりビビった……今日は壁越しで感じられるような威圧まではないのに、面と向かうと急にのしかかるんだもんな……


「……ちょっと長くなるらしいから、机と椅子がなくて……」


「大部屋のとか運び込むか?」


 ――といってもさっきの浮遊魔法あれば別に俺の手伝いは必要ないか?


「……運ぶのは手伝ってくれるならありがたい、ちょっとまってて」


 ――とか思ってたら今作るのかよ……ってはええな……魔法で大雑把にしてるように見えるが、完成品はすげぇきれいに組みあがってやがる……


「……それじゃあこれらを大部屋から廊下に出て、左手前の部屋にお願い」


 そういわれて腰掛2つと小さな机をもって、言われた部屋へと向かう


 ――……真新しいドアが増えてるが、その先が廊下でこんなきっちりした造りとは……俺昨日ここに泊ったよな? こんなところなかったよな?


 自分の記憶が間違ってないか不安になりながら部屋に入ると、リル姉は窓から見える廃村を眺めていて、俺が入ってきたことにも気がついていないようだった。


「それで、リル姉この村の事何かわかるか?」


「っ!? ……そ、そう……ねぇ……」


 声を掛けられてようやく気が付いたらしく、驚いたように反応するが、返答はなんとも曖昧なものだった。


「まぁミリーと話があるみたいだし、それが終わってから聞くとするよ」


「そうしてくれるとありがたいわ。椅子ありがとうね」


「礼はミリーにだな……作り立てだしな……」


「今作ったのね……さすがね……」


 そういうと微笑みつつ椅子にすわり、また窓のほうへ視線を向けてた。


 部屋から出るとちょうどミリーがお茶を持ってきていて、入れ替わるように部屋に入っていった。

 その際に「お茶の用意してあるから、終わったら飲んで待ってて」と言われたので、冷める前に一杯だけもらっておこうと、コップに注ぎ口を付ける。


「ん? これリル姉が好きでよく飲むやつに似てるな」


 彼女の家に行くと必ず出てくるお茶と同じような味だなと思いながら、一息ついて作業を再開した。

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