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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第十四章 モブの為にプリンスは奔走する
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引率の先生と見守り係

「はーい。ちゃんと全員が集合しましたね。良かったです。先生はとっても嬉しいです。ご褒美にハッピーなお土産を君達に渡してあげましょう。うっさぎさんの、ふわふわボールキーホルダーだあ!」


 紫がかった銀色に輝く男は、その輝きに見合ったハイテンションであり、俺はそんなアストルフォに脅えてもいたのだが、彼の口にしたウサギさんボールで完全に恐慌に陥った。


「みんなを集めればミュゼには何もしないと約束したじゃないか!」


 幼稚園か小学生の子供が母親にすがるようにして、俺は半泣きでアストルフォの左腕に縋っていた。

 斜め掛けの黒革の鞄に右手を突っ込んでいた男は、俺のその醜態に嬉しそうな笑い声をあげると、ニッケとダレンにうさぎさんボールを投げつけた。


 ニッケには薄水色で、ダレンには薄いベージュ色をしたもの、だった。

 つまり、兎の毛皮をボール型に丸めたものにキーリングが付いているものでしかなく、アストルフォが嘘をついていない事に俺は歯噛みするしか無かった。


「ひどいなあ、君は。君こそ可愛いミュゼが酷い事をされる場面ばっかり想像していたんだ?女の子は可愛がるべきで、いたぶるなんて、ねえ。」


「いや、その可愛いミュゼを誘拐監禁しているお前が何を言ってんだよ。で、エルヴァイラはいつ目覚めるんだ?俺は絶対にキスなんてしないからな。絶対に絶対、嫌だからな。」


 昨日、ダレンとニッケは俺とアストルフォの電話を盗み聞くや、ミュゼの偽物が眠っている病院へと駆け付けていたのだ。


 士官学校の研修をブッチするには、エルヴァイラを起こさなきゃ!と。


 彼らは鈍い俺と違ってすぐにミュゼの偽物がエルヴァイラだと分かっており、俺をエルヴァイラに口づけさせるために彼らは病院に逃げ、俺に彼らを追いかけさせたのである。

 俺がエルヴァイラに口づけなんかしないし、そのために絶対に病院に行かない、という事を踏まえた、完全なる奴らの俺への裏切り行為である。


 俺の唇は愛するミュゼだけのものなのに。

 ミュゼは俺に彼女の初めてとか全部あげるとか約束してくれた、俺の大事な大事な恋人なのである。

 ならば俺だって、ミュゼの初めてを受け取るに値するような大事な恋人として、身綺麗でいる決意をもって然るべきなのだ。


 ニッケとダレンはそんな決意のある俺を拘束し、無理やりに俺の顔をエルヴァイラにくっつけようとまでしてきたがな!


 そんな俺を助けたのがノーマンだった、というのが俺には衝撃だった。

 奴はエルヴァイラが可哀想だと本気で憤慨し、彼女に俺達は近づくな、とまで素晴らしい言葉を吐いてくださったのである。


「お主はエルヴァイラが好きなのか?本気じゃったら、お前こそエルヴァイラを口説いたらよかろうが!なあ!」


 ニッケの指摘に俺もダレンもうんうんを頭を上下させてノーマンを見返したのだが、女性服のいつもと違い今やピンクの肩までの髪は後ろに縛り、尚且つ軍服姿で男性にしか見えない痩せた青年は、重々しく頭を横に振ってみせた。


「俺はエルヴァイラの護衛係です。男女の関係になってはいけない。」


「だから、女装?え、女装までして?あのさあ、君が男性だって姿でお守りしないのはなぜ?しっかりしている君がエルヴァイラの無駄なハルトへの恋心やミュゼちゃんへの嫉妬心とか諫めて誑して、エルヴァイラが卒業したのちに喰うって長期計画だって可能でしょうよ?」


 ダレンの真っ当のようで爛れた物言いに対し、ノーマンは俺達が考えておくべくだった台詞を吐いたのだ。


「俺の上司が女装してそばにいろと。エルヴァイラは完全異性愛者だから、俺がジュリアとして横にいれば問題が起きないと。ええ、俺はエルヴァイラを常に守る命を受けているのだから、彼女に勘違いさせてはいけない。」


 あの変質者のろくでなし男め!

 絶対に遊び心百パーしかない命令だろうな。

 ノーマンは俺がアストルフォに対して憤慨した事を知ったのか、鼻で笑った。

 そして、どうしてエルヴァイラにお目付け役が必要なのかを語り始めた。

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