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女子高生監禁事件、だよね

 気が付けば私は、どこかの家の地下室の一室に転がされていた。

 転がされていた、と言っても、絨毯もあってベッドもあって、そのベッドのマットレスもシーツも布団も清潔なもので、つまり、私はそのベッドに転がされていたという事だ。


 真っ暗だったけれど、パニックになりながら手探りして絨毯や布団だと分かり、また、布団から洗ったばかりの洗剤の臭いがしたので清潔と思っただけだ。


 そう思いたいだけだ。

 だって、私ってば全裸なのよ?


 吃驚しすぎてきゃあと喚いた私は、まずベッドから落ちた。

 そこで自分の体が完全に治っている事と、自分が全裸であることに気が付いての、今のこんな寄る辺もない状況なのである。


 どうして全裸。

 どうして目覚めがベッドで、なの?


「嘘、なにこれ、裸?いやだ。なんかされたの?私バージン失っちゃった?いやだ。初めてはハルトでって決めたばかりなのに。いやだああ。こんなのいやだあああ。なんかされて裸よりも怪我のまんまでパジャマが良いいいいい!」


 ドン、と音がして私はそういえば監禁されているのだと思い出した。

 いや、私を殺そうと首に手をかけたアストルフォの姿が脳裏に閃いた。

 あ、死んだと思って投げていたら生き返っちゃった、てこと?

 まずい、生きているってバレた!

 うわ、今度こそ殺される?


 ガチャ。


「ぎゃあ!」


 ドアが開いて、部屋の中に灯りが入った。

 ドアを開けたのは私を殺すと実行したはずのショーン・アストルフォで、彼は少しよれた白いTシャツに色の落ちたジーンズという気さくな格好だった。

 そして、その気さくそうな殺人者は、気さくそうに、起きたんだ?、と私に声を掛けるとドアの脇のスイッチをカチッと押した。


 室内はパッと明るくなり、真っ暗な中でパニックしていた私をあざ笑ってくれているようだと悲しくなった。


 ドアの横に照明スイッチあったんだ。


 ははは……はっ!

 裸じゃない!私ってば!

 私は体に腕をまわして、取りあえず胸を隠した。

 ようやくかもしれないけれど。


「ど、どどどうして裸なの!」


「ああ、怪我が治ったらギブスいらないでしょう。ギブス外したらさ、パジャマも汚れちゃったし、体も洗わなきゃだし、で、裸ん坊。安心して、もう少し育ってもらわなきゃ俺の触手は動かないから。」


 持ち物が触手程度だったら処女膜破れないよな、そんな罵倒が頭に浮かんだが、ショーン・アストルフォ様を怒らす方が怖いので口をつぐんでいた。

 すると、彼は含み笑いしながらだが、バサッと、私の頭の上に彼の服らしい紺色のシャツを落としてきたのだ。


 服のお礼など言うものかと思いながらも、裸では心もとないからと敵の情けを活用して急いで身に着けたのだが、下着が無い。

 裸で男物のシャツは喪女の私の憧れシチェーションだが、それは恋をした相手のシャツでのシチェーションでなければいけないのだ。


「パンツ!パンツが無きゃ嫌!ショートパンツぐらい持っているでしょう!」


 アストルフォは楽しそうな笑い声を立てながらドアを閉め、数十秒後にドアを開けると、やっぱり私の頭にショートパンツをばさっと落として来た。


「お礼は?」


「監禁者に?」


「加害者とスキンシップを取ることは被害者の生存確率を上げるんだよ。」


「どうして?」


「すぐに切り刻んだ方が良い単なる肉の塊か、時間をかけて痛めつけた方が楽しい玩具か判断がつくだろう?」


「時間をかけて拷問されるくらいなら、すぐにつぷって刺されて殺される方が良いわよ!この変態!人殺し!」


 アストルフォはニコッと笑った。


「君は時間をかけて殺されたくない、と。拷問も大嫌い。よくわかったよ。ほら、コミュニケーションのお陰だよね。」


 おしっこを漏らしそうだ。

 ハルトはこんな男に殺されかけて生き延びたのか。

 ああ、可哀想なハルト。


「あ、そうだ。君は下手に逃げない方が良いよ?」


「どうして?」


「今俺はゲーム中なんだ。ゲームの邪魔をされたら邪魔したやつは拷問の末に殺したい。わかるかな。」


 私はわかりましたと言う風に頭を大きく上下させた。

 でも、人質として、いや、人間の尊厳を守りたいその気持だけで、恐ろしい監禁者にお願いをしていた。


「トイレ、使わせてください。」


 彼は監禁部屋に入ってくると、そのまま私のベットの反対側となる空間、二つドアがある方の左側を開けた。


「ここがバスルーム。隣の扉はクローゼット。一応君の服は持って来てあるから、適当に片付けて。」


「はい?服?え、だったら、この服は?」


「女の子に自分のシャツを着せるは男の夢でしょう。」


「え?」


 ショーン・アストルフォ様は私の頭にハテナマークだけを残し、そのまま監禁部屋を出てドアを閉めた。

 カチリ。

 部屋の外から鍵をかけられて、やっぱり監禁されているんだ、と安心できたのは少しおかしいというか、物凄く異世界で怖い。

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