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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第二部 第十二章 モブにイベントフラグが立てば、全てがエラーになる
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なろ抱きついでに耳つぶ?

 俺は目の前の女に、君のことを意識した事は無い、と同義の言葉を何度ぶつけて来た事だろうか?

 どうしてその言葉を彼女は無理矢理にでも曲解し、俺の本意を理解しようとしてくれないのだろう?


「俺はあの軍人に君が恋していようが騙されていようが、どうでもいいよ?俺の好きなのはミュゼだけで、俺が初めて恋したのもミュゼなんだよ?」


「ええ、ええ!そうよね。あなたがライトさんを守るのはライトさんが攻撃されているから。あなたが彼女を好きだって、そう言わなければいけないのは、わかったから。でもね、私にはそんな演技は必要ないし、ほら、ライトさんはあなたに勘違いしてしまうでしょう。勘違いしちゃったあたしも、てへ、だわ。あたしったら、考え方が狭かったわね。」


 エルヴァイラは自分の頭をこつんと叩いて舌を出して見せたが、多分どころか、女性のその仕草が好きだと感じる男は俺を含めていないだろう。


「いや、だからさ、俺は、虐めに関係なく、ミュゼを、あ・い・し・て・いるんだよ?聞いている?理解している?」


「ええ、もちろんよ!ロラン!あたしは頑張るから!あなたを出来るだけ早く解放してあげるわ!」


 いや、本気で俺をお前から解放して欲しいよ。

 そして、俺の腕の中のうさぎは俺から解放されたがっていた。


「放して。」


「ミュゼ、エルヴァイラの言った事なんか。」


「信じるわけ無いでしょう。私も彼女に言いたい事、いいえ、彼女に聞きたい事があるの。」


「変な刺激をしないでよ。」


 俺はミュゼを抱いたままベッドの端に腰かけた。

 ミュゼは忘れているが、右足を複雑骨折している彼女を手放せる訳が無い。

 しかし俺の膝に座らせて後ろから抱き締めている、という状況は、彼女が望む放してとは遠すぎる状況だろう。


「ごめんね、ミュゼ。君は立てないでしょう。それに俺が君を数秒たりとも手放したくないからね。だから、このエルヴァイラに向き合った体勢だけで我慢してもらわなければ。」


 俺はミュゼの耳元で囁いた。

 しかし、ミュゼは俺の仕打ちに怒るどころか、耳まで真っ赤に染めた。

 その上、以前にも覚えのあるもじもじをし始めて、意味の分からないことを呟き始めるという覚えのある事をし始めているじゃないか。


「耳つぶになろ抱き、だわ。ああ、でもこれはなろ抱きの上位互換になるんじゃないかしら。後ろ向き抱っこって。ああ、尊い!」


「……ミュゼ、それって、壁ドンとかお姫様抱っこ系の話かな?みみつぶ?とか、なろだき?とかもそうなの?」


 ミュゼは、ぱああああんと、音がしそうなほどのいかにも幸せそうな笑顔で俺に振り向き、そうなの!と幼稚園児の様にして嬉しそうに答えた。


「もう。最初に教えてくれればいくらでもしてあげるのに。」


 すると、やっぱり俺はわかっていないなあ、なんて顔をミュゼは俺に向けた。

 俺はその顔付に少々イラっと来たので、ミュゼの耳元に口を寄せていた。


「俺はミュゼが望む事、なんでもしてあげたいのに、ね。」


 ミュゼは俺に向けていた真っ黒の瞳を真ん丸にして、ぼんっと音がするぐらいに真っ赤になった。


「うきゃ、あ、あ、あ、あ、あ、ああ。」


 しまった。

 この程度のことで、ミュゼが完全に壊れてしまった、とは!


「いや、お前って本気でかわい――。」


 パシン!


 俺がミュゼの頭を撫でてさらに可愛がろうとしている所で、部屋の天井の照明が弾け、俺とミュゼの上に破片がパラパラと降り注いだ。

 俺はエルヴァイラがまだいたと思い出し、そういえばミュゼがエルヴァイラに何か言いたい事があったらしい、という事も思い出した。


 いや、何を言うべきことがあるのだろう。

 互いに夢中で馬鹿丸出しの俺とミュゼに対し、エルヴァイラこそ幼稚園児がつくるような涙顔で顔を歪めているのである。


「俺が愛しているのはミュゼだけだって、わかってくれたか?」


 エルヴァイラは袖で自分の涙をグイっとふき取ると、歯を喰いしばった顔で俺を再び見返した。


「必ず、あなたを助ける。」


 エルヴァイラは来た時と同じぐらい唐突に、ミュゼの病室を飛び出て行った。

 俺は抱きしめているミュゼのうなじに顔をつけ、どうしよう!とミュゼに助けを求めていた。

 どうしよう、あいつは本気で意味が分からない。

 俺はミュゼを諦めないといけないのか?

 ミュゼを愛することは俺が生きていくのと同じことなのに。

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