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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第十章 モブと校内イベント
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おんなともだち

 遊びに来てくれたニッケは、私が学校の勉強をしている事に目を丸くした。


「お前は偉い奴じゃなあ。わしは授業中は枕にして寝ているぞ!」


「それこそすごい特技ね。どこの学校に行くにしても、お勉強が出来なさすぎて情けないのは嫌なのよ。この町から出るなら、戻る時にはこの町で役立つ資格の一つぐらい持っていたいし。」


 ニッケは私を真面目だと笑ったが、ニッケの目には寂しそうな色も見えた。

 私はセリアの言葉を思い出していた。

 夢を諦めた私達って、言葉だ。

 魔法特待生はエリートで高給取りになれると、本でのエルヴァイラは嬉しそうに独白していたが、もともと他になりたいものがあった人達には、徴兵みたいな悲しい呼び出しだったのかしら。


「ニッケ、私ね、何かになりたいってものがなかったの。学校を卒業したら、このまま父のお店を手伝って、出会いがあれば結婚するだろうってぐらいしか無かった。それがハルトに恋をして、それで、実はジュールズが婚約者だったって知って、それで、町にも住めない状態になっちゃって。口先では資格だなんて格好の良い事を言っているけど、教科書を読んで解けない勉強をしていると気がまぎれるってだけ。」


 言いながら教科書を片付けていると、ニッケがそのままで、と言った。

 それから、使わないノートを貰っても良いか、と尋ねて来たのだ。

 見返した私に、ニッケはニヤリと笑って見せた。


「友達と一緒に勉強し合うって、女の子達がよくやっていることかな。わしは友達なんていなかった故、初体験をしてみたいとな。なあ。」


「途中で勉強を放り投げてパジャマパーティに突入ってのもあるみたいね。私もそんな友達がいないから初体験してみたい。」


 私達は両手を打ち合わせて、初体験だ!と笑いあった。

 ただし、ニッケは簡単に外泊できない寮生だ。

 ニッケは寮に連絡を入れ、彼女は呼び出した電話応対者に対して、彼女の外泊願いを出すことを命令していた。

 電話応対者とは、もちろんダレンだ。

 彼はシロナガス亭のジュールズの部屋にて、ニッケに一か月の隷属を誓わされたのだ。


 ニッケはジュールズにルームサービスさせたシロナガス亭のエビ料理を大いに堪能すると、今度はジュールズの部屋の前に広がるビーチでバレーがしたいと言い出した。


「腹ごなしを兼ねてな、奴隷製作ゲームをしようではないか。」


「奴隷製作かよ。よし、俺がお前を奴隷にしてやるよ。」


「よし。では、女の子チーム対男の子チームで行こう!なあ、ミュゼ!」


 その時のジュールズとダレンのがっかりした顔は見ものだった。

 彼らは基本的に女性に手を上げられない優しい男性だ。

 そんな男性達が女性に向かって、思いっきりボールを打ち返してくるなんて出来るはずがない。


 よって、ジュールズとダレンはあからさまに手を抜いてくれていたが、私もニッケもろくでなしなので、そんな彼らに配慮するどころかビシバシと打ち返して点を取った。

 だって負けたら言いなり、だもの、ねえ。


 それに、思いっ切りボールを叩くのは、私にはかなりの気分転換になっていた。

 ニッケはそれも見越してビーチバレーをする事を言い張り、ダレンもジュールズもそれに乗ったのだろうと、その時は思った。

 ダレンが、リベンジカードゲームをすると言い出すまで。


 私達はジュールズの部屋で延々とカードゲームをする事になり、ジュールズはそのゲームでニッケと私への負けを清算できたが、ダレンは更なる負債を身に負う事になったのである。


 大人びたチョコレートの様な魅力的な人。

 エルヴァイラ視点とは全く違う、情けないぐらいに溶けてしまったチョコレート状態のダレンだった。

 いや、ハルトもそうだ。


「二人の本当の姿を見せれば、エルヴァイラの百年の恋こそ冷めるでしょうに。」


「にゃにを?にゃにをミュゼは言い出したのだ?なあ。」


 私は口に出していたのだと、あっと自分の口を手で覆った。

 電話が終わったニッケはにやにやと私を伺い、私は前世で本を読んだと言えない代わりに、エルヴァイラが言っていたのを人づてで聞いたという事にした。

 私がハルトに恋しているのを諫める人からって事にして。


「ええっと、エルヴァイラがハルトの事は、斜に構えているけれど、人から一歩離れた場所にいるから全てを見通しているような大人びた人って褒めてて、ええと、ダレンについては、頼りがいのある大人びた人って。だから、ええと、ハルトは子供っぽくて激しやすいし、ダレンは凄く優しいけど、時々優しすぎて押しが弱くなるじゃない?エルヴァイラが思っている彼らの像とは少し違うし、あの、彼女は、男の子にすっごい夢を抱いている気がして。」


「すごいな、ミュゼは。考察力が凄いよ。ハルトとダレンに爪の垢を煎じて飲ませてやりたいぐらいだ。」


「いや、そんな!」


 ニッケは物凄く悪そうな顔をすると、その可愛い顔をグイっと私に近づけた。


「ハルトの偽物がいるって知っておるか?」


 凄い爆弾!

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