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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第九章 プリンスはモブの為に大忙し
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対峙する敵

 エルヴァイラを俺は追撃しきれなかった。

 俺の姿をした俺よりも戦い慣れている男がエルヴァイラを逃し、そして、まるで漫画か映画のヒーローの様にして俺の前に立ちはだかったのだ。


 炎を纏った木製の剣?

 それを俺を威嚇するようにして一振りして見せた。


「ぴょんぴょんとしつこいノミ男が!」


「うるさいな。本物の自分で勝負できない残念男が!」


 おや、この台詞は癇に障ったようで、俺に向けていた余裕顔の笑顔のくせに、右目のすぐ下をピクリと痙攣させた。

 ほんの一瞬だけだが、ノミ男の小男な俺は少々勝ち星を挙げた気分となった。

 こいつがミュゼの前でエルヴァイラとイチャイチャしたせいで、絶対に絶対、ミュゼは俺を誤解しているはずなのだ。


 俺はミュゼの安全の為に彼女から距離を取るつもりであるが、その距離を置くつもりの俺の気持ちをエルヴァイラとイチャイチャしたいからだとミュゼに思われるのだけは御免こうむりたいという気持なのである。


「確かにね。君の外見は意外と楽しいね。この格好で囁くとさ、どんな女の子もころっと俺に秘密を教えてくれるんだよ。俺は、悩み事がありそうだね、って言ってあげるだけなんだけどね。」


「悩み事?」


「ああ、色々あるよ。グランドに大きく描かれていた白い魔法陣は何を意味しているの?この間天使さんを呼んだの。私、その日から、おかしな声が聞こえるわ。」


 俺が入学する前の話であって俺自身は白い魔法陣は見ていないが、その魔法陣を身に着ければ願いが叶うというおまじないが流行ったと聞いた事がある。


「どれも、女子が好む単なるおまじないだろ?」


「願いが叶えば単なるおまじないじゃないさ。あいつ、死んじゃえ、とかさ。俺とエルヴァイラは意外と真面目に正義の味方をしているんだけどね。」


「――今回のセリアみたいな、この学園で起きて来た異常は、俺の振りしたお前が納めて来たってことか?いや、俺の格好で煽って、悪い方向に持って行ったのはお前こそなんじゃないのか。」


 奴は俺の顔で、俺には作れそうもない傲慢な顔をして見せた。


「さあ?」


 俺はもう一歩男へと踏み出したが、俺の足元で炎の壁が燃え立ち、それがほんのひざ下ぐらいの炎の壁でしかなくとも、俺の足を止めるには充分だった。

 だが一瞬で炎は消え去った。

 風を操れるならば炎を吹き飛ばす芸当など朝飯前であるし、俺ぐらいの術者だったら、酸素供給を絶つなんて高度なことも出来るのだ。


「炎使い、か。俺には役者不足じゃないか?」


「風しか使えない小物が?俺は風だって使えるんだよ。」


 俺の偽物の周りには、気流が蛇のように絡みつき、彼の足元で燃え上がった炎をさらに燃え立たせた。


「お前の顔を焼いてやる。そろそろ選手交代の時間かもな。」


 俺も奴の様にして風を自分に巻きつけた。

 また、俺の周囲では、真空のオーブがいくつか輝いている。

 そのオーブが何か知らない男はほんの少し訝しそうな表情をしたが、オーブの上に落ちて来た木の葉がスパっと真っ二つに裂けたことで理解したようだ。

 俺に対して目を見張ったのだ。


「失うのはどこにする?」


「属性を二つ以上操れてから俺に凄んでみるんだな。」


「その属性もお隣同士じゃあ、あんまし凄めないですよ。」


 俺の周囲にソフトボールサイズの白く輝くオーブが出現した。

 空気を凍結させたことで気圧を変えた、やはり、中身は危険な真空オーブだ。


「触れたら乾燥しての粉々になります。試してみますか?」


 俺は俺の助力に駆け付けてくれた友人を見返して、そして驚いていた。

 ダレンは自分の胸の辺りに真っ赤な蛇を巻き付けていると思ったが、それが炎の輪っかであり、それをぐるぐると回していたのだ。


「お前、炎も扱えるのか。」


「ああ。暴走する炎の為に氷結をお勉強中だ。炎が無きゃ、最高の音を出せない。」


「格好いいな!その水着姿で何の音を出すつもりだよって、突っ込みたくなるけどね!」


「うるさいな!お前だってTシャツ短パン姿だろうが!」


 ダレンは俺の肩を気安そうに叩くと、俺達の目の前の偽物の俺ににやっと笑いかけた。


「やりますか?俺のお陰でロランは三属性に増えましたよ。」


 男はダレンの言葉に笑いながら顔を伏せ、顔を上げた時には彼の顔には半透明な樹脂でつくったような面が被せられていた。


「ふふ。炎でこのお面の形を変えてね、風を使って光の反射率を変えれば、ああ、俺は誰の顔にもなれるんだよ。俺の声だって、ほら、風を使えば伝わる波動が変わって別の声になる。」


 男が語るその通りに、男の声は俺のモノから同じ音域だが俺よりも大人びた男性の声へと変わっていた。


「なるほど。変声の仕方ですか。これこそ魔法特待生の課外授業って事ですか?」


「え、ダレン?」

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