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ネタばれよ!

 プロローグで行われる化け物退治は、どんな小説や漫画、あるいはアニメにおいても、登場人物の関係性を読者に示し、また、本編に興味を持って欲しいというデモンストレーションそのものである。


 ハルトの本であるこの物語も、プロローグで必ず雑魚といえる化け物が登場し、その化け物に対しての退治場面が描かれている。

 しかし、一巻から三巻と巻数を重ねるごとにエルヴァイラとハルトの息は合っていき、仲間でしか無かったハルトへのエルヴァイラ片思いがどんどんと募って行くことが分かるような仕立てにもなっているのだ。


 悔しい事に!


 そしてこの四巻は、いつもの互いの興味を引きたいという恋愛模様をベースに進むところは変わらないが、化け物退治が互いの気持ちを盛り立てる小道具でしかないこの物語に、違った色合いを紛れ込ませてくるのである。


 エルヴァイラとハルトの決別だ。


 もうこんなことは止めよう、と、ハルトがエルヴァイラに突きつけるのである。


――あの化け物の存在を知った時点で学校や政府に連絡していれば、あれに殺される被害者など出なかったはずだ。

 俺達は自分達の力量を過信しすぎてはいなかったか?


「え?」


 被害者?

 私は生きているわ。

 あれが殺したのは警備員の事?

 ああ、それにもう一つ思い出した。

 化け物を殺してから、化け物の死に対して、ハルトがかなり落ち込むのだ。


 本を読んでいる時は、そこまで落ち込むハルトが理解できなかったが、それは私がエルヴァイラ視点しか読めなかったからだろう。

 あれは元同級生のセリアで、彼が同級生を殺した事になるのだ。

 優しいハルトにそんなことが耐えられるはずはない。

 結果として彼は酷く落ち込み、エルヴァイラと仲違いしてしまっていたからこそ、ハルトが弱ったそこをエルヴァイラが積極的に突いてくるのだ。


 言い方が悪かったか。

 つまり、エルヴァイラはハルトに距離を置かれる事で自分自身の本当の気持ちを表に出す勇気が湧き、そして、体当たりして来るエルヴァイラにハルトが押し切られる、いやいや、慰さめられてのハッピーエンドを迎えるのである。


 そのすぐ後、次巻の最後で、ハルトが死んでしまうのだけれど。


 そう、夏休み編が終了した最後の章で、再会した二人に襲いかかる化け物。

 彼らが二年生となったばかりの九月に、彼は殆ど特攻のようにしてエルヴァイラを守って死んでしまうのだ。


 ああ、本通りとなったら、ハルトは九月にこの世を去るの?

 私が隣町か、あるいはジュールズについて首都に行く事になったら、ああ!私がハルトを守ることが出来ないじゃない!


――どうしてかあたしは信用していた。

 斜に構えるばかりであたしにはいつも冷たい男のハルトムート・ロランは、常にあたしの一歩先にいて、あたしのやることを受け止めてくれるのだ。

 そう、ここだけの話、あたしは彼が好きよ。

 心が通じ合わなくたっていい。



 心が通じ合わなくっていい?

 たった今気が付いたが、エルヴァイラのその台詞、ハルトへの気持ちに気がついての独白だが、これって、ハルトの気持ちを私は思いやらないわって宣言しているも同じじゃないか?

 そんな奴の為にハルトは死んでしまうのか?


「お前にハルトを渡すかあああ!」


 私は大声を上げていた。

 モブが主人公クラスの男を恋人にするとか、モブがそんな人とハッピーエンドになるとか、土台無理な話だろうが、そんなの、前世のモブ時代でだってお構いなしにハルトを愛していた私じゃないか。

 そうよ!

 エルヴァイラとハッピーエンドにならない代わりに彼が生き延びるならば、長く長く、お爺ちゃんになるまで彼が生き延びることができるならば、私はエルヴァイラとハルトの恋路を台無しにしてやろうじゃないか!


 さあ、まず最初は、この四巻のプロローグの破壊だわ!


「ニッケ!プールサイドに上がって!エルヴァイラに水をぶっかけてやる!」


「はっは!ならば指を差せ!わしはお前が見えぬが、お前の指の方角ならわかるぞ。なあ!」


 私はエルヴァイラを指さした。


「きゃあああ!」


 私に巻き付いていた触手が、私が指を差したそこで、高圧の水流をエルヴァイラに対して吹き出したのだ。


「あ、やば!」

「ああ、畜生!エルヴァイラ!」


 三メートルある飛び込み台からエルヴァイラがゴミ屑のように吹き飛び、吹き飛んだ彼女を必死の形相でハルトが追いかけて行ってしまった。


 人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られる。


 それはその格言のとおりだった。


 後に残った邪魔者の私は、気が付けば宙に浮き、プールサイドのタイルに強かに体を打ち付けていた、という有様だ。

 ハルトに殺される事を免れた白い化け物がプールに墜落し、私はもろにその水しぶきと衝撃を浴びせられたのである。


 プールサイドに転がったままの私の視界には、空中でエルヴァイラをキャッチして、そして、騎士の如く彼女を抱き締めたまま格好良く舞い降りたハルトの姿が見せつけられていた。


「ああ。かえってラブラブにさせちゃったのかもしれない。」


 彼らがさらに仲良くなるなんて!……後悔先に立たず、だわ。

 だけど、ハルトにセリアを殺させなければ、ハルトが死ぬフラグは避けられるはず、よね!

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