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海でお友達と遊ぶ

 友人と海に出掛けたのは、前世でも何度もある。

 もちろん女性とばかりだが。

 大学時代は彼氏のいない気心の知れた数人で、男の子達にナンパされようという目的だけで、観光客があまり来ないという綺麗な海までドライブだってした事もあるのだ。


 ええと、結果としては、綺麗な海には出迎えられたが、そこは私達をナンパしてくれる男性客自体がいない場所だったというしょうもないものだが、何はともあれそれはそれで楽しかった。

 結局女同士だけで楽しんだ、という思い出でしかないけれどもね!


「おお、おぬしはビキニか。攻めて来たな!だが、わしとしてはだな、ハルトが言っていた、お祖母ちゃんの水着姿を楽しみにしていたのだがな」


 自分の身長ぐらいの直径のある浮き輪を左肩にかけているニッケは、彼女が揶揄った私の何倍も可愛らしい姿だった。

 だって私はビキニと言っても、ショーツはお祖母ちゃんのパンツみたいに大きなものだし、ブラトップだって、胸の前で布地が交差しているというカシュクールで女性らしいかもしれないが、形としては胸の下が無いだけのタンクトップでしかない。


 それに引きかえ、ニッケは紺色のスクール水着みたいなワンピースなのだが、スクール水着と違い、お尻の部分にはカラフルな布がこれでもかという風にテニスのスコートみたいにして飾られている。


「いやだ!ニッケ!凄く可愛い!なんて可愛い!私が男だったら絶対にナンパする!男じゃなくってもナンパしたい!違う!ニッケみたいになってみたい!」


 ニッケの姿に私の脳みそが沸騰して駄目になったみたいで、隠しておくべき本気の本心が勝手に口から零れてしまった。

 わあ、ニッケが真っ赤になってしまった。

 私のテンションが高すぎたか、と不安になると、何とニッケは私を上目遣いで見上げるという今までした事のない素振りをした。


 大きな目はタンザナイトのように煌いているが、物凄く照れている、というのがわかる視線で、真っ白な肌は桃みたいに綺麗なピンクに染まっている。

 だからか、私はすっごくドキドキしていた。


「あのな、ミュゼ」


「はい!」


「ふう。わしが自分が子供っぽいのは判っておる。褒めてくれるのは嬉しいがな。だがな、わしこそお前になりたいと思うぞ」


 彼女はそう言いながら、ちらっと私の横に視線を投げた。

 私が彼女の視線を追えば、ジュールズが私の隣にいて、ワオ!なんと私がニッケを見ていたのと同じような視線で私を見ていたのだ。

 彼は私と目が合うや真っ赤になって、そして、準備運動だ!と大声をあげた。

 私とニッケは顔を見合わせて、いつも通りの笑顔を互いに作ると、ジュールズの言うままに腕や足を動かし始めた。


「もうちょっと反ってみたらどうだ」


「え?ええ?」


 私の後ろに回ったジュールズは私の両腕を掴み、なんと、彼が言った通りに私の身体を後ろに反らせ始めたではないか!

 バランスが崩れて後ろに転んでしまう!

 しかし、私の腰にはいつの間にかジュールズの手という支えがあり、両手首はジュールズの片手だけで掴まれていた。

 彼はそんな体勢になった私の腕を、ほんの少しだけ引っ張った。


「はあ!」


 私の口から吐息が漏れてしまっていた。

 自分では伸ばせない背骨がジュールズのお陰で少しだけ伸びた感触がして、それが体にとってとっても気持ちが良かったのである。

 疲れどころか悩みも抜けるような、そんな風に体にあった硬いものがスコーンと消えた感じだった。


「わあ!私って背骨が硬くなっていたのね!って、きゃあ!」


 私の腰を支える手も、私の腕を掴む手も消え、寄る辺が急になくなった私は思わずジュールズにしがみ付いていた。

 してやったりの顔をしたジュールズ。


「もう!」


 私はジュールズを突き飛ばし、安全な女友達のところへ逃げた。

 ああ、ハルトがいなくて良かった。

 こんな気安すぎるジュールズとの絡みを見られたら、ハルトに誤解されてしまうじゃないか!

 …………、誤解されてもなんとも思われない可能性の方が大きいかもだけどさ。


「さ、さあ、ニッケ。一緒に柔軟体操しようか!」


「うーん。わしも今のやってほしいな。ミュゼが本気で気持ちよさそうだった。おい、ジュールズ」


 うわあ、ニッケったら!

 確かにすごく気持ちが良かったのだけれど、ね。


「いいとも。俺を突き飛ばしたがためにミュゼが受けられなかったストレッチもしてあげるよ」


 ジュールズはニッケに跪くや、私にしたのと同じようなストレッチをし始め、彼が言った通りに、私にはしなかったがニッケの顔を見れば気持ちが良いのだろうと確信できる更なる追加もしていた。


「ああ、本当にすごいな、お前は。体の節々の固い所が楽になる」


「だろう?俺は昔からお医者さんごっこが好きだからね。ミュゼもお願いするならさ、色々とやってあげるよ」


 私はしれっと言い放ったジュールズの背中を蹴とばしたくなった。

 いいえ、蹴ってやろうか?


「蹴ってしまいなさいよ、その邪魔な女を」


「え?」

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