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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第七章 モブの知らないその裏で
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潜入行為とその過程

 俺とダレンが林をかき分けて寮に辿り着いた時、俺の想定通りに寮に残っていた警備員達は全員学校の方へと消えていた。


「で、どこに行く?いや、どの部屋だっけ。というか、誰さんか君は知っているんだよね?」


 俺はダレンに背中を小突かれた。


「ハルトは!探索する相手の名前も知らなかったのか!もしかして全員の部屋を開けて見るつもりだったのか!」


「まあね。なんかここの奴らは気味が悪いからね。俺達に付けられた迷子札やエルヴァイラへの特別扱いといい、一人が勝手に動いているわけじゃない、集団で示し合わせていると見てもいいんじゃないかってね。」


「ははは。それっぽい事を言って来たな。まあ、でもその通りだが時間が無い。ナイマン様の部屋に直行しよう。」


「すごいなあ、ダレンは。探偵にでも転職したら?」


「煩いよ。それよりもさ、そのびしょ濡れどうにか……乾いている?」


「水分子を風で飛ばした。乾燥機能付きの男って凄くないか?」


「ははは。ミュゼちゃんがどんな反応するか知りたいね!」


 俺は無言で歩き出していた。

 俺とミュゼにはもう何もなくなったのだ。


「お、おい。どうした?」


 俺は本気でむしゃくしゃしていたようだ。

 一歩踏み出せば、俺はミュゼに害をなしたもの全部を破壊したい気持ちばかりが湧きたって、俺の足はかなり乱暴な足運びでずんずんと先へと進んでいた。


 さて、寮のエントランスにはラウンジも備えているが、生徒の自室という空間へと進むには受付を通さねばならない。

 生徒はそこで誰何され、入室を認められて初めてキーカードで俺達の部屋がある区画へと閉ざされた扉を開ける事が出来るのだ。


 本気で刑務所並みの管理体制だ。


 また、常駐の警備員達の自室も受付内にあるドアからしか出入りできないようで、全員が出ている今、当り前だが受付のドアが施錠されていて、俺とダレンの行く手を妨げた。


「一瞬で冒険の章が終わりとはキツイね。」


「探偵ダレン。君はどうやってチョコ缶を手に入れたんだ?受付で問答していたら他の寮生にも奴が泥棒だってバレていただろう?」


 ダレンはニヤリと微笑むと、右手を手品師のようにくるっと回した。

 彼の手の平には、氷で出来た鍵が乗っている。


「俺に開けられない鍵は無いかもね。」


 彼は俺の目の前でその鍵を使って受付のドアを開けた。

 そして、小さな職員室みたいな詰所の中を我が物顔で入って行くと、また違う氷の鍵を作り出して受付机の大き目の引き出しを開けた。

 ダレンが引き出した引き出しには厚みのある帳面が数冊入っており、彼はその一冊を取り出して俺に手渡した。


「六月の場所を見てごらん。ミュゼちゃんの記載がどこにもない。」


「え?」


 ダレンはそれから受付机に乗っている、来訪者が自分で記入するノートを取り上げて、それも俺に手渡した。


「見比べて。ミュゼちゃんは来たのに来ていない事になっている。預けたチョコ缶もそっちの保存用の大事な帳面には書かれていない。」


 俺は彼が言ったように二つの帳面を見比べて、警備員が記入する方にはミュゼのミの字も書いていないことを確認した。


「これが横領の証拠か。」


「そう。最初は俺の消えたアバロン君を探していただけなんだけどさ。来訪者や預かり品などはここで記載しているだろ?姉にこの日とこの日とこの日にぬいぐるみを送ってほしいって頼んだんだ。受付のシフトは大雑把に五つだ。シフト交代に合わせて送られた五体のぬいぐるみは、三体だけ俺のもとに届いた。あとの二体はどこに行ったのだろう。誰がシフトに重なっている時なんだろうって。俺はその度にリストを確かめていたんだよ。」


「受付からも人が消える夜中の三時にか?怖い男。それで、君が検討つけたのがナイマンさんか。」


「その通り。ミュゼちゃんが君宛にチョコを持って来た日に俺が丁度居合わせて良かったよ。俺がチョコを君に手渡すって言ったら、嫌そうな顔してのそのそと缶を手渡してくれたね。」


「ありがとう。」


 俺は素直に御礼を言って帳面を返すと、受け取った彼はそれを元通りに片付け直した。

 それからダレンはまっすぐに警備員の自室がある区画へのドアへと向かい、当り前のようにして作り出した氷の鍵をそのドアに差し込みかけて動きを止めた。


「どうした?」


「開いているよ。どうする?残っている奴にかち合うかもしれない。」


「じゃあ、俺だけ行くよ。俺は退学がしたくて堪らない奴だからね。」


「はあ。俺も行くって。君じゃアバロン君が見分けられない。」


 俺達は言い逃れが出来ない場所へと一歩踏み出した。

 そして、ナイマンの部屋も鍵が開いていた事を知っただけだった。

 そこには先人者がいて、そいつは正義感溢れる笑顔で俺達に振り向いたのだ。

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