その七 ぶらとぱんつ問題
私は恥ずかしかった。
保健室に覗き魔がいたらしいのだ。
放課後にハルトと一言二言会話をするためだけに校舎まえの日陰に私はいたのだが、今日のアルベイト君がすぐ近くで恋人とイチャイチャして私から目を離していたのも悪かった。
性悪な奴が気さくそうに私に声を掛けてきて、そして、私の耳に唇を寄せて余計な事を囁いてきたのである。
「君って、勝負下着も持っていないの?」
「はふ?」
目の前の紫色の影は私が何も喋れなくなったことに大いに満足した顔を見せ、さらに私に追い打ちを掛けて来たのだ。
「十代の若者にはパステルカラーだ。間違ってもラクダ色とかは避けようか?」
私はきゃあと言って自分の胸の辺りを両腕を交差させて隠していた。
服の上だけど!
何で知っているの!
今日のブラジャーは淡いキャメル色だってこと。
「なななな、なんで!」
「いや、なんでってもね、あそこは俺の仕事場みたいなところだし。」
今世紀最高のヒーラーという有名人(マスコミには顔出し禁止なので知る人ぞ知るって限定的な)だった男は、なんでか知らないが今もスーハーバに居残って、特待生の魔法授業を請け負いながら学校の保険医なんてものも兼任している。
「仕事場みたいなって、あなたが自分の仕事場にしたのでしょう、もともとの保険医さんを追い出して。」
「追い出していないよ。彼は我が財団で修行中だ。三か月ぐらいしたら戻って来るかな。何がどうして変わったのか知らないが、変わったと思い込んでいる我が財団のカモになった人が。」
「カモなんだ。そして、そのセミナーみたいなの、詐欺なんだ。」
「意識改革をするためのセミナーでしょう。意識改革出来るんだから詐欺じゃないでしょう。俺はそんな金まで出して意識改革をする必要があるのかなって、常日頃から思っているだけだよ?大体さ、二十歳過ぎても自分が見つけられない奴がね、たった数か月のセミナーで自分を見つけられると思う?」
いや、だから、あなたのところのセミナーでしょう。
そんな無駄だと思っているのを、どうしてあなたは自分の財団で行っているんですか?
そんな疑問が湧くばかりだが、私は何も聞き返さずに、そうですか、と相槌だけ打った。
面倒くさいもの。
私の考えが通じたか、アストルフォはちぃっと舌打ちをして見せた。
だからこれは仕返しだろう。
彼は数分前の話題を再び掘り起こしてきたのである。
「君は俺と似ているよね。人の為に無駄な意識改革をしない所が。どんなに大好きなハルト君の為でも、あたしのブーラはおばあちゃんみたいなラクダ色~。」
悔しいが相手はアストルフォでしかない。
絶対に言い返すものかと自分を制し、酔っぱらい親父の様な絡み方をしてきた奴から今すぐ離れようと足を一歩踏み出した。
「ああ、もちょっと!ほら!まだロランさん来て居ないじゃないですか!」
ちびちびセンダン君は彼女ととっても離れがたいようだ。
この子に男の子の好みを尋ねるべきなんじゃないかと思ったが、十四歳の従弟に男の子の好きな下着の色は何ですかって、聞けるか!
それに、ああ、もう!
アストルフォに肩を引っ張られて引き寄せられた!
「エルヴァイラはハルト君の好みって言ったら、面白いぐらいに下着も服も変えたって言うのになあ。」
私を煽るため?なのかわからないが、私はこの一言にかなり悲しさが湧いた。
大昔に見た映画、ホラー映画だったけれど、悪霊となった女の子は今のアストルフォみたいなアドバイスを学校の女の子達に受けてデートに臨み、そのデート自体が虐めの道具だったと知ったところ絶望しちゃったからなのだ。
「……なんてひどい。どうして金色の水着なのかと思っていたけど、あなたがそれを彼女に薦めたのね。酷くない?あの子は最低な子だったけど、そういった最低な意地悪をされるから、尚更意固地になって歪んだんじゃないの?」
「俺のアドバイスを曲解したのはあの子の個性なだけかもよ?瞳の色に合う服を着ると素敵だよね。ハルト君はパステルカラーが好きだあ~。」
私はぎりっと歯噛みしてしまった。
何度も奴が繰り返すパステルカラーという単語、絶対に絶対に着てやりたくないと思ったが、私のクローゼットはモブの為にパステルカラー系のグラデーションになっている。
え、え、もしかして、だからハルトは私が好き?
え、でも、ハルトが一目惚れだよって言ってくれたのが、ええと、あのお婆ちゃんの水着の時だったし?
「取りあえず、下着を買いに行こう。君に必要な勝負下着だ。」
「え、ええ?セクハラ!」
私の腕は素っ頓狂な男に引かれた。
ちょっと待ってよぉ!
エルヴァイラ・ローゼンバーク 17歳 誕生日 9/12
魔法養成特待生クラス 黒髪に金目 再生で肉体を作り直されたので、左右対称の人形みたいな造形となっている ハルトは虫みたいだと嫌悪
自称、ドジっ子で憎めない性格
自称サバサバ系
自己中で周りを見ない 思い込んだらそれが敵
前世での姿は、身長155センチに対して肥満度2に値する体重と見た目。
長い髪は自慢で腰まで伸ばしているが、実際は手入れもされておらず艶のないぼさぼさ。
ミュゼの前世、青峰美世子を一方的に嫌い、自分の人生の失敗を全部彼女のせいだと思い込み、偶然見かけたそこで彼女を自転車で轢いた。その時に自分こそ投げ出されて死亡。
生まれ変わったのはエルヴァイラではなくネフィ・ランダル。
全身がバラバラな状態でも意識が自分がエルヴァイラだと呟いていたので、アンナの夫でエルヴァイラの父親が瀕死の状態ながら彼女をエルヴァイラに再生してしまった。
怨霊になった母親がアンナの夫が父だと言うシーンがあるが、アンナの夫は浮気をしていない。
ネフィの本当の父は酸素ボンベを病室で爆破させた男。
ネフィの最初の紺色の魔法で恋人への猜疑心が溢れての凶行。




