その三 保健室にはダレンと①
ハルトをお医者さんに!
私は急いで木陰にハルトを引き摺った。
もう慌てに慌てながら、電話のある場所、すぐそばにあるバーンズワースのいる部屋のドアを叩いた。
バーンズワースは直ぐにドアを開け、助けを求めに来た私にそれは良い笑顔を見せた。
「すいません!電話を貸してください!お医者さんに!」
「どうしたの?」
「ハルトが倒れちゃって、熱射病だと思う。ああ熱中症かな。」
「まず保健室だ。僕はショーンにハルト君との接触を禁止されているからね、運び手にダレンを呼ぼう。」
「どうして禁止されているのだ?」
「彼の精神に感応しちゃうからね。今でさえ僕はミュゼが可愛いのに、彼の精神に引きずられて性的にミュゼを襲いたくなったら危険だろう。」
ニッケは声も無く咽てくれ、私はハルトの馬鹿!と恥ずかしさに両目をぎゅっと閉じた。
「今すぐにダレンを呼ぶよ。ダレンの脳には前に侵入した事があるからね。ダレンの精神には簡単に入り込めるんだ。ハハハ、魔法インカムって奴。」
カラカラと笑って見せた。
私もアストルフォにインカムを入れらていたが、時々存在を忘れるどころか、耳からイアホンを外した覚えがなかったと初めて思い出してぞっとした。
私はバーンズワースの干渉は受けなかったけど、アストルフォの干渉は受けまくりだった?
脅えかけた私に追い打ちをかけるがごとく、ニッケは珍しく、いや、いつものように恐ろしい事を呟いた。
「わしがダレンの魂をガードすればいいのだが、完全洗脳みたいになるのは問題だよな。父は母のその攻撃を受けて以来母に恭順しかしない完全なダメンズだしな。なあ、ミュゼ、やっぱり男と女は対等でないとなあ。」
私はそうねと引き攣った笑いをするしか出来なかった。
やっぱり私はもうあいつに洗脳され切っていた?知らない間になんかされていたかもしれないの?
「う。」
「ああ!ハルト!意識が戻った?大丈夫。ああ、早く介抱してあげなきゃ。水をどばってかけたらいいのかしら?」
「塩水で良ければわしが。」
「いや、え、塩水。え?」
「大丈夫か!」
「ああ、ダレン!」
数分もしないでダレンが駆け付けてくれた事に感謝ばかりだ。
だけど、駆け付けてくれた彼は、ひょいっと物凄く軽々という風にハルトを抱え上げてくれたが、それがお姫様抱っこでしかなかった。
「ああ、なんじゃ、男同士でも奴らだと絵になるな。」
「ええ、私の時よりもしっくりくるから悔しいわ。」
ニッケはぶぶっと笑った。
ダレンは日々格好良さを増している。
小説版でハルトの次のヒーローに抜擢されるだけあるのである。
ダレン・フォークナー 17歳 誕生日2/14
貴公子的に整った顔立ちに焦げ茶色の髪に焦げ茶色の瞳は、チョコレートの精になぞらえられ、甘くてホットだと女性(不惑ぐらいが特に)に気に入られている。ミュゼと出会った当初の外見が軍人候補生みたいになっているのは、ミュゼが前世で読んでいた小説では彼がハルト死亡後の二代目ヒーローとなる存在の為。
自分と姉を襲った通り魔の存在が紺色の呪いによるものとアストルフォに知らされ、その紺色の呪いの根絶の為にアストルフォに従っていた。
アストルフォに彼の手も直して貰っているので、彼はいつでもチェロが弾ける。
チョコレートみたいに自分に甘くなれる男なので、今はジュールズ・センダンに甘え、妹認定したミュゼに甘えてお菓子などを強請っている。




