その一 アダム・バーンズワースさん??①
ハルトとミュゼのラブラブ度が足りないし、人物設定紹介をかねての数話となります。
アストルフォは約束を守ってくれた。
私を脅した時の台詞の一節。
今度は誰にも邪魔されないハッピーエンドを、のところを。
そこは感謝すべきかもだけどね……。
確かに今の私はハルトに求愛されても虐められる事も無く、ほんの数か月間の事が嘘みたいにして学校に通える日常を手に入れられた。
うん、凄いハッピーエンド。
私は私を愛してくれる両親と親族に守られて毎日が安全で幸せで、そして、学校に行けば大好きな男の子(公認の仲よ!)と、挨拶、が出来る。
少女小説だったら、これが最高のハッピーエンドだと分かっている。
でも私はその一歩先の、ええと、レディースコミックみたいにドロドロしたくもないけど、大人の関係に突き進みたいとも思っているのだ。
「なんだ、そのレディースコミックとは?」
「あ、考え事を駄々洩れさせていたわね。」
私は今はお昼中だったと、向かいに座るニッケを見返した。
勉強する棟が違う親友の私達は、お昼になれば懇意にしている体育教師の控室で私の作った大きなお弁当を一緒に突き、離れ離れの時間分お喋りに花を咲かせているのだ。
うん、私達と一緒になって私のお弁当を突くバーンズワースと私の今日のボディガード君を無視しきることができるならば。
しかし、今日のボディーガードのアルベイト・センダン君は、学校に付き合って長い彼女がいる。
まだ中等部生なのに!
だから、彼は私の「先生がいるからお昼はいいよ。」の一言で彼女のもとに行っているので今はいない。
よって、今日のお昼の邪魔者はバーンズワースだけだ。
アンティックゴールドの肩までの長い髪をポニーテールでまとめ、知的さを感じさせる青い瞳は物静かで、秀でた額から連なる真っ直ぐな鼻と意志の強そうな顎という組み合わせは、ギリシャ神話のアポロンかヘルメスを彷彿とさせる。
そんな美貌の戦士は、今日も適当な(上下もあわせていない)ジャージに、便所サンダルだ。
さて、こんな美貌の無駄使いなアダム・バーンズワースと言えば、アストルフォの親友で彼と組んで魔法省の部長をお縄にしたらしい恐ろしい男でもある。けれどアストルフォとは違い、彼は殺人狂のサイコパスでは無かった。
なんと、アストルフォの医療財団(嘘くさい団体!)に籍を置かれ、精神医学の方では著名な偉いお方で、軍の大学で教鞭を取っていたりもしていたそうだ。
しかし、彼の更生術では犯罪者は自殺するだけであり、彼自身も自分の能力がプライベートな人間関係にまで影響しすぎるからと、この間まで世捨てをしていたというのである。信じられないが、バーンズワースはアストルフォと違ってとてもナイーブな方らしいのだ。
それゆえか、私とニッケが彼の能力に影響されないと知るや、積極的に私達に関わってこようとするうざい親父となってしまった。
まあ、私とニッケの逢引きの場所を作ってくれたので、そこは感謝しなきゃだけれど、私が作った弁当を黙々と食べている所を見ると私達への親切心ではなく単なる飯狙いなだけだったのかと思わせる。
それよりも、当り前のようにしてスーハーバーに居ついて、学校の体育教師を続けているって事に首を傾げるべきだろうか?




