表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第二十五章 モブだろうと君がいればそこが楽園
187/208

俺は何者でしょうかあ?

 俺の所属は何かと聞かれれば、とりあえず魔法省の司法部と答えるだろう。

 まだ少尉さん?と言われる時もあるが、まだ二十七歳なんだよ、と笑顔で答えれば、大体は御免なさいと謝られる。


 万年少尉って言ってごめんねって、本心駄々洩れだよ?


 まあ、でも俺も悪いよね。

 俺さ、実は軍人じゃ無いの。

 少尉待遇で、軍部の顧問をしてあげているだけ、なの。

 大体さあ、俺が本気出したら、もう大佐さんくらいじゃない?


 ハハハハ、少尉待遇をいいことに、現場主義という名目で殺戮も手がけさせていただいておりますからね、持ちつ持たれつで文句はいいませんけれど、躾のなっていない奴は指導してほしいなあ。


 俺がやってもあげてもいいんだけどね、指導。


 さて、どうして俺がこんな所でぐじぐじと愚痴を言っているのかというと、魔法省の司法部の部長という立場の奴は、意外と軍部の事も知らなければ、社会の仕組みってものもわかっていない奴が多いんだよね。

 これこそ民主主義?の弊害かな。


 男女雇用の平等の考え方は別に良いと思うよ?

 優秀なのも出来の悪いのも、女も男も区別なく同数はいるからだ。

 何が悪いって?


 軍部においてあるいは官僚という公務員社会が、閉鎖的であり広い視点が持ちえないからと勝手に思い込んだ上に、民間の経験のある人材を要所要所のポストに据えましょうと提案してきた、専門職を頭から否定する間抜けな風潮こそ、だ。


 餅は餅屋でしょうに、ねえ。


 大体ね、その重要ポストに添えられる人物がさ、本当に民間で優秀だった人物であったことがほとんどなく、コネ、ばかりなんだよ?


 ここまで言えば理解していただけると思うが、司法部のアンナ・グリーンは、デモンストレーターとすれば最高の人材だが、司法部の部長として働いてもらうには残念過ぎてお引き取り頂きたい人物でしかなかった。


 自分の私憤を仕事に持ち込んだら駄目だよ?


 自分の娘の体の中に別人の魂が入っているからってね、真っ当に生きている家の娘を殺して魂を盗もうなんて考える人に司法を任せたいと思うかな?

 本当に、何もわかっていない人間に権力を与えると、分かっている人間達がその後始末に翻弄される事になる。


 ああ、困った事だ。

 だから、俺が一肌脱ぐことになったということだ。


 アンナの執務室の前には警護の人間が二名立っていた。

 彼らは俺の姿を見るとピシッと敬礼をし、見知っている顔の者が俺の為にドアまで開けた。


「ご苦労様。」


「いえ、こちらこそお世話になりました。」


 長かった髪を短く刈り、今やどこから見ても男性にしか見えなくなった青年は、俺に感謝に溢れた視線を向けた。

 高校生の制服を脱いで元々の軍服、俺は着た事もない下士官の制服だが、ウエストはベルトでシェイプするデザインの淡いブルーグレーの詰襟の制服は、ピンク色の髪をしている彼の為に仕立てられたかのように彼を際立たせていた。


「嬉しそうだね、君は。」


「もちろんです。バーンズワース教授に教わった更生術、これを実践するのは初めてですから。」


 ノーマンの両親は、ノーマンが子供の頃に児童虐待の濡れ衣を着せられて親権を取り上げられ、ノーマンとその一歳になるかならないかの妹は孤児院に収容される事になった。


 ノーマンは孤児院で他の子供達に虐待も受けたがなんとか生き残り、しかし、赤ん坊の妹の方は里親の家で虐待の上死亡している。

 母親はそれを苦にして自殺。

 父親もその数年後に殆ど自殺に近い状態で事故死をしているのだ。

 彼の不幸の全ては、嘘つきな少女とそれを煽った養護職員の咎であろう。


「ほどほどにね、君。公私混合は不幸を招く。君の親御さんも浮かばれないよ。」


「はい。両親の志は守りますよ。食べ物の好き嫌いはしない、運動をする、片付けをする、たったそれだけの事を教え込むだけです。」


「君がさらに肥大させたあの怠惰な性質を、今から叩き直すって言うのか?君は面倒ごとが好きな男だな。だが、今の彼女には信奉者が君しかいない。君がそう思わせているだけだが。ハハ、残酷な男だ。まあ、頑張ってくれ。」


 俺はノーマンの肩を叩くと、彼が開けてくれた部長室に進んだ。

 部長室は監査の人間で溢れかえっており、この部屋に君臨していた女は犯罪者として手錠と縄付きで立ち合いをさせられている。

 アンナは自分の境遇に泣くよりも、気丈にも俺を睨んだ。


「あなたは最初から私を裏切るつもりだったのね。」


「アンナ、裏切るなんて、ハハハ、最初から俺があなたに追従しているような事をおっしゃるなんて!ハハハ、冗談が過ぎますよ!」


「でも、あなただって人を殺したでしょう!ええ、私の命令があったとしても、あなたは沢山の人を殺したわ!」


 俺はアンナに微笑んだ。

 俺は職務内ではルールに則った殺ししかしていないよ。

 祖父の教えを守っているのさ。

挿絵(By みてみん)

アストルフォ イメージ図

※単なるイメージ図です!!読んで下さった方々の脳内イメージの方が至高です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ