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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第四章 小説の主要人物さん達こんにちは?私はモブです。
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大事なものが消える寮

「ねえ、消えたもののせいで落ち込んで家に帰っちゃった子、とかいるかな?だって、消えちゃったものは、きっと、どの子にとっても大事なもの、だよね。」


「消えたもののせいで帰ったのか知らないが、たった二か月で実家に帰った子はいたな。エルヴァイラといつも一緒に行動していた子だった。ああ、そうだ、エルヴァイラが着ているドレスは、全部、セリアのものだって言っていた。形見だって、なあ。」


「そう。」


 どうしよう、小説通りだわ。

 小説の中では少しだけ貧民なエルヴァイラには、寮に持ち込みたいぐらいに大事な形のあるものなど無かった。

 制服があるって喜んでいたぐらいなのだ。

 彼女は小説の中で友人を作り、その友人達から貰ったもので、持ち物がどんどんと豊かになって行く、という設定なのだ。


 まずは休日になると彼女が身に纏っている、派手派手しい贅沢なドレス。

 ドレスの本来の持ち主は、セリア・フォグ。

 寮に入った二か月で学校を辞めて実家に帰った子だ。

 彼女は実家に帰るや、そこで病気か何かで命を失う。

 しかし、セリアの死を知らないエルヴァイラは最初の長期休暇を使ってセリアの実家を訪ね、そこでセリアの死を彼女の親から突きつけられる事になる。

 そして、セリアの親からは、誰も着なくなった、派手派手しいドレス一式を手渡され、そして彼女は友人に死を招いた人の悪意に対して大きく憎悪を抱く。



――恋人からの手紙を盗んだ人がいるせいで、セリアは恋人を失ったと実家に帰って、そして、死んじゃうことになったのよ!

 私は許さない。

 自分の小さな欲望で、人を傷つける人は許さない!



「自分の小さな欲望を満たすために人を傷つける人は許さない。エルヴァイラはそんな気持ちなのかな。私は自殺なんて考えた事など無いのに。」


「そうなのか?自殺の名所から身を投げたと聞いたぞ。」


「うん。なんか、化け物がそこにいた、みたい。化け物に関しては、私は自殺した幽霊の固まった姿なのかなって思ったけど。」


 ニッケはふうんと相槌を打ち、調べてみようか、と私に言った。


「調べる?」


「うん。誰がお前の噂話を広めたのかって。お前は虐められる。虐めてきた奴に誰がそんな嘘を言ったのか聞く。どうだ、なあ?」


 私はやってみる、と答えていた。

 ハルトの馬鹿が恋人宣言らしきものをしちゃったから、(すっごく嬉しいけどね、身に余る光栄だけどね!)、噂を訂正したら火に油な気もするが、初めて好意的な女の子が提案してくれた事なのだ。

 私は失敗しようがやってみようという気だった。

 うん、ニッケは凄く可愛いし。


 ただ、私が気になったのは、エルヴァイラが友人達からこれから贈られるであろう品々の目録についてである。


 ダレンからは、誕生日に大きなぬいぐるみを貰っている。

 そのぬいぐるみは親友が消えたエルヴァイラにとって、大事な大事な相棒となっている。

 ハルトを失ったエルヴァイラが、そのぬいぐるみを抱き締めて大泣きするシーンでは、私だって畜生と思いながら泣きながら読んだのだ。

 恋人でもない私だが、彼を追悼するような気持ちで。


 ジュリアからは、仲良くなった記念にお揃いのスクールリングを。

 この学校にスクールリングがあったような気はしないのだが。


 また、ニッケからは、雪のフレークではなく鳥の形をしたフレークが舞う、スノーボールと合体した小さなオルゴール。


 そしてハルトからは、彼女を勇気づける簡単な手紙が、彼女が落ち込む度に彼女の部屋のドアに差し込まれるのである。

 ハルトが亡くなったその夜には、死ぬ前のハルトが置いていただろう手紙を、ベッドの下で見つける、という演出付きで。


 エルヴァイラは美人だわ。

 もしかして、親友を殺す原因となった泥棒に狙われている、とか?

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