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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第二十三章 死する覚悟で進むべし!
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消えていく君の為に

「すごいな。やばいよ。お前は何をしているの?これでミュゼが大怪我をする事になったらどうすんのさ。」


「俺は何もしていないよ。俺とミュゼを認めてくださいって運動の草分けを地道に頑張っていただけだよ。」


「お前のその情けない様な潔すぎるその姿を、ミュゼに見せないようにって俺が気を付けていたって知っている?あいつは九月十四日に魂の移動なんて酷い目に遭うんだよ?失敗したらあいつはこの世に存在できないんだよ?」


 俺はダレンには何も答えなかったが、ダレンは俺の目の中に彼が知りたくもない覚悟を見つけたようで、俺から簡単に目を逸らした。

 そして、俺達が今までやっていた行為の続き、放送室の窓から眺めていた校庭を再び見つめ直した。


 それでいい。

 今のところは校庭の様子の方が大事だ。


 さて、校舎の三階にある放送室の窓から校庭は離れすぎていて、エルヴァイラと金髪青年の会話が聞こえず、何がどうしてそうなったのか分からなかったが、エルヴァイラが叫んだ大声のいくつかは聞こえたので大体は想像がついた。

 彼女は俺が彼女を愛していると思い込んでいて、それが違うと言われて激高してしまったという単純な内容だ。


 そして俺自身は、ミュゼと俺の仲を認めてほしいと、校内を練り歩いては会う人会う人にお願いしていたのだ。

 ミュゼが彼女自身に戻れたとしても、彼女は今やこの町で生活することが出来ない身の上に落とされている。

 だから、彼女が再びこの町に住める環境を作れれば、俺はそんな気持ちだった。


 消えていくかもしれない彼女に対し、俺はそんな事しか出来なかった。


 けれど、その活動中にセンダン家の青年達と仲良くなり、彼らこそ俺を憎んで当り前なのに俺の為に動いてくれたのだ。

 いや、彼らは尊敬するジュールズ兄こそそうすると俺に言い、ミュゼは彼にも妹や姉みたいな大事な人間だと言い、ミュゼがこの町に戻ったら俺とミュゼの関係も認めてやるとまで言ってくれたのだ。


「センダン家は良い奴らばっかりだ。親父もきっとあの輪に入りたいって思うだろうな。」


「センダン家の女達は適当な女が多いってジュールズ兄さんは言っていたけどね。ガキだった彼と従弟達をキッズスペースに放り込んで、その面倒は全部兄さんがみていたって笑っていたよ。ミュゼも大雑把だし適当なとこがあるからね、お前も苦労するかもよ?」


「お前はそんなミュゼに家事を全部押し付けているんだろ?」


「お前の飯事情の改善は俺のお陰だ。そこは流せよ。」


「今は流してもいいけどね、ミュゼに泣きつかれたら俺は怒るよ?」


「はははは、ありがち、ってか、女ってやることがえげつないよね。姉ちゃんは兄さんを振り向かせたいのか、俺の面倒を見ていたって苦労話をでっち上げて兄さんの興味を惹こうと一生懸命らしいってね。……あのエルヴァイラも、ノーマンがいれば今みたいにおかしくなっていなかったのかな。」


 俺はダレンの言葉に首を横に振っていた。

 校庭では、次々と群衆がエルヴァイラに手を差し出し、彼女に何か約束めいた事を誓っているという、ぞっとするしかないおかしな宗教団体めいた光景が展開しはじめているのである。

 だが、ミュゼが周囲に虐められて傷つけられたのは、あのノーマンがエルヴァイラの傍に控えていた時だ。


「ノーマンがいたってミュゼは大怪我していた。」


「そうだよね。エルヴァイラのなんちゃってサイコキネシス能力を、ミュゼは何度も受けていたっぽいよね。俺はさ、ミュゼに指摘された時に脅えたよ。今まで目にしたエルヴァイラのサイコキネシスの現場で、俺の力は関与していなかったか、とね。」


 俺は畜生と言って、窓枠を叩いた。


「おい!」


 エントランスで大きく転んだミュゼ。

 病院の天井にぶつけられてしまったミュゼ。


「畜生!俺が、俺こそがミュゼに怪我させていたってことか!そうだ!救急車の横転事故!あれは、あれだって、俺の力だったのかもしれないんだ!」

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