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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第二十二章 美人コンテストとモブ
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魔女は虎視眈々と罠を仕込んでいた

 ベージュ色が差し色の三段になっている膝丈のフレアなスカート、三段目の裾には可愛い仔犬とお菓子のプリントがある、という、夢のあるものだ。

 だけど、あたしのこのスカートはあたしだけのものじゃない!


「ああ!誰!何てこと!これは死んだセリアの形見のスカートなのに!あの子の途中で終わった人生を代わりにってことで着ている大事なものなのに!」


 あたしに泥を投げた不遜な奴は、焦げ茶色の女ではなく、しゃがみこんだその女の友人らしき女だった。

 彼女の髪は何の変哲もない薄いベージュ色で、眼鏡女と比べればさらに一般人らしく背景と変わらない外見だ。


「泥くらいで何よ!ミュゼは腐った卵をあなたのお友達に投げられたじゃないの!そんな目に遭ったから、あの子は学校に来られなくなったのよ!」


「だから!人のせいにするのはおやめなさいな!あたしがあの子に卵をぶつけろと言ったの?あの子を学校から追い出せって言ったの?それは全部、あなた方が勝手にやった事でしょう。その時は正しいと思ったくせに、旗色が悪くなった途端に人のせいにするって、恥知らずこの上ないと思わないの!」


「そうよ!だから私たちのせいだわ!だからロランさんは全校生徒の支持を得ようとしているの!私達が認めたらミュゼが帰って来れるからって言ってた。ミュゼと自分が一緒にいる事をみんなに認めて欲しいって。ミュゼとの恋を祝福されたいんですって。もう二度と、勝手に身分不相応なんて決めつけた人にミュゼが傷つけられたくないのですって。彼が言っていた世間体を壊したいってそんな事が無い世界だそうよ!だから私達は彼に賛同しているのよ!彼らを不幸にしちゃった償いにね!」


「嘘よ!嘘つき!」


 あたしは嘘つき達に、ハルトまで持ち出して嘘を吐く薄汚れた人達に、全身全霊を込めて、ええ、物凄い怒りを込めて叫び返していた。


 ミュゼとの恋を祝福される為にハルトはコンテストに出場している?

 ハルトはエルヴァイラを愛しているはずなのよ!


「ハルトがそんなことを言うはずはないでしょう!」


 彼等は木の葉のようにとはいかなかったが、風に吹かれたようにして一気に全員が己の真後ろへと吹っ飛んで行った。


「なんてことするんだ!」

「きゃああ!肘が酷く擦りむけちゃった!」

「この魔女!」

「やっぱり、ミュゼは悪くなかったのね!私達ったらなんてことを!」

「俺にはセンダン家の友人がいるよ!ミュゼって子もセンダン家の一員だろ!あそこの一族は良い奴らばかりだよ。お前こそが酷い奴じゃないか!」


 四方八方から、あたしに向かって罵りの声が飛んで来た。

 あたしだって思わず力を使って悪かったと思っているのに、そんな風じゃ謝る必要もなかったって事ね。

 彼らは自分本位過ぎる!


「うるさい!あたしがそんな人の訳ないでしょう!あたしこそ心優しい正義の人なんだから!あたしは正義のエルヴァイラなのよ!」


 何も知らないくせにあたしを責めだすなんて、この愚民が!


「あたしがどれだけ困った人達に手を差し伸べて来たと思っているの!」


 そして、あたしが叫び返したそこで、あたしは見てしまった。

 あたしに怪我させられたと叫ぶ彼等が全員、自分で自分を傷つけている、という信じられない行動をしているという事を!

 あたしに吹っ飛ばされたと叫んだ奴は、自分から地面に飛び込んでいった。

 顔を何かで殴りつけられたと騒いだやつは、自分で自分の顔を殴っていた。


 ああ、わかった。

 あたしは罠に嵌ったんだ。

 あたしを貶めるために出現した白い魔女がいたじゃないか!

 あの魔女のせいであたしが悪い魔女として祭り上げられたんだ!


「ああああ!許せない!アリス・バーンズワース!みんな!騙されては駄目!あたしは気が付いた。これはぜんぶ魔女か仕掛けた呪いなのよ!」


 あたしは神様に祈るぐらいの気持ちで大声を上げていた。

 彼らはあたしの声を合図にしたようにして、再び自分から地面に飛び込んで、全身を泥まみれにさせていた。


 しかし、その行為で彼らの頭が冷える、いえ、頭の中の呪いがクリアになったのか、あたしを罵っていた魔女の呪いを受けていた人々、自分で自分を傷つけていた人達、彼等全員が何事も無かったように立ち上がったのだ。


 そしてぞろぞろと私を囲みだした。

 あたしをいつも信じてくれるセリーヌと同じ表情を浮かべながら。


「魔女に思い知らせねば。」


「化けの皮を剥いでしまえ。」


 ああ、理解してくれたのね。

 魔女の呪いであたしを誤解していた人達は、あたしの説得により自分自身を取り戻したのね。

 ありがとう、ああ、ありがとう。

 次々にあたしを崇めるようにして差し出される手、手、手。

 あたしは次々に彼らの手を握って約束の言葉を掛けた。


「ええ、やるわ。あたしは魔女を倒します。さあ、皆さんも。あたしと一緒に魔女を倒しましょう。」

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