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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第二十二章 美人コンテストとモブ
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無力だと自分を言う者は自分の罪を他人になすりつける

 世界に一体何が起きたの!

 ついさっきまで順風満帆だったあたしの世界、あたしはハルトに愛されていて、一般学生の男の子にまであたしは声を掛けられるぐらいに、あたしは学校の人気者だった、という世界。

 それが今や、嘲笑や蔑みの目、といった、最下層の人間みたいな扱いを受けいているなんて!


「何を笑っているの!失礼じゃ無いの!」


「だって、滑稽だよ。ロランは君なんか好きじゃないって公言しているってよ。君とは付き合った事も恋した事も無いって。」


 まあ!ほんのついさっきまで、そうよ、あたしに恋をしていたはずのアランが、どうしてこんな風にしてあたしをあざけるの?

 ああ、そうか!あたしの愛がどうしても得られないとわかったからね。


「アラン。あたしに抱いた恋心が叶わないからって、ハルトを侮辱するような嘘を言うのは止めてくださる?」


 あたしの言葉が図星をついたからか、アランは顔を真っ赤にした。

 一般学生と特待生を一緒にしない訳が分かったわ。

 一般学生はとにかく諦めが悪いし、自分を冷静に見つめるどころか過大評価しかしないから、結果として特待生を悪い道に進ませるのね。


 そうよ、セリアの不幸だってそうだった。

 アーサーがあたしに惚れるのは仕方が無いとしても、あたしにはハルトがいるのだし、アーサーにあたしが惚れるわけなどないのだから、アーサーは自殺などしないで元々好きだったセリアのもとに戻れば丸く収まったのよ。


 そうよ、ミュゼだってそうじゃない。

 単なるその他大勢でしかない身の程を知って、ハルトからすぐに引き下がればいいものを!

 引き時も分からないみっともない女だから、彼女は全校生徒に嫌われて学校を追い出された、のよ?


「勘違い女の君に何を言ったって駄目なのはわかったけどさ、これだけは言わせて。俺は君がちょっといいなって思った事もあったけど、それだけだよ。今はそんな気の迷いをした自分を殴ってやりたいくらいだ。だから俺は信じるよ、ロランが今も昔もミュゼしかいないって言っているという事をね。」


「それこそ信じるに値しないデマよ!大体、ミュゼはもうこの学校にいないじゃないの!」


「あなたが嘘を振りまいたからよ!」


 別のところで新たな女の叫び声が上がった。

 大人しめの外見な子に見覚えがあると見つめていたら、ハルトを遠目に見るばかりの人達の一人だったと思い出した。

 そうだ、ミュゼとお喋りしていたから、あたしは彼女に相談したのだ。

 優しいハルトがこのままでは身動きが取れなくなるからって。


 焦げ茶色の髪に焦げ茶色の瞳の色をして、この魔法で視力を矯正できる時代にメガネなんて前時代的なものを掛けているという、どこからどこまでも地味でやぼったい女。

 彼女こそ、ミュゼという悪人を追い詰める先鋒という、地味だった自分が初めて主役級になれる役が手に入ったと喜んでいなかったかしら?

 それがあたしを指さして、あたしを嘘吐きだと怒鳴ってくるなんて。


「あなたは私に、ミュゼが自殺をほのめかしてロランさんを縛っているって言った。ええ、あなたがそれで悩んでいるって、だから可哀想だって、ええ、私はライトさんが卑怯だって怒りを持ったわ。でも、全部嘘だったじゃない!」


「嘘じゃないわ!自殺岬から落ちたのは事実でしょう!その後にハルトがミュゼに縛られたのも!」


「ロランさんは自分が落としたって言ってた!」


「それこそ嘘よ!ミュゼを庇うハルトの優しい嘘よ!いい加減にして!ミュゼは嘘つきで卑怯者なの。そうよ!だからあなた方だって、ミュゼを追い詰めて追い払ったのじゃない。あたしだけのせいにしないで。やったのはあなた方、よ!」


 焦げ茶色の女は自分の耳を塞ぎ、そうすればあたしの言葉、言え、自分がやった真実から逃げられるという風に悲鳴を上げてしゃがみこんだ。

 そう、自分でやったことは人のせいにしちゃいけないの。


 バシッ。


 あたしのスカートに泥が付いた。

 それはもうべっとりと、落ちない自分の罪をあたしになすりつけるようにして、あたしに泥団子が投げつけられたのである。

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