目に見える違和感は!
あたしとパーティに行きたがったハンドボール部の主将、アランは、あたしに彼への想いが友情しか持ちえないことを知ったからかかなり動揺していた。
また、アランが陸に上がった魚みたいに口をパクパクしているのは、彼の恋心があたしにバレてしまったことを、どのようにしてあたしに繕うべきなのか分からなくなってしまったからでしょうね。
ほら、あたしが彼の恋心に気が付いたからと、今までのようにできないからってあたしが彼から離れたらと考えたら辛いものね。
しばらく見つめていると、アランは口を閉じ、ゆっくりと頭を振った。
それからあたしを真っ直ぐに見返した。
「君さあ、話せば話すほど、何か、想像と違うって言うか、なんか、もういいかなって感じかな。票も、ああ、お祭りみたいなものだし、いいや。パーティの話は無しで。いいかな?」
「いいわよ。ハルトに黙って他の男の子とパーティは、やっぱり問題だもの。」
「それ。その考えこそ改めた方が良いよ。俺の友人の女の子達から聞いた話だけどさ。ロランは好きな女の子の事ばっかり言っているって言っていた。一般学生だった、ほら、あの灰色の髪をしたミュゼって子。あの子が好きでたまらないってぼやくんだってさ。君達と同じぐらい優しくていい子なのに、どうして俺と一緒なのを認めてもらえないんだろうってね、落ち込むから彼を慰めてあげているって言っているよ。男子学生からのロランへの票は、多分、そのミュゼと認めるから、これ以上俺達の女の子を奪わないでくれよ、って奴だと思う。」
「何をおっしゃるの!そんなことハルトが言うわけ無いじゃないの。それはその女の子達の嘘よ。普通の子だってハルトに愛されるかもって、夢を見ただけのたわ言よ!ハルトとその他大勢じゃあ、釣り合いが取れないでしょう!」
「嘘なもんか。ロランにミュゼとのことを応援するって言ってあげたら凄く喜んでいたって、エミリーは自慢していたよ。王子様を笑わせてあげられたってね。大体さあ、ミュゼが学校でいじめられたのって、そういえば、君のワンピースが盗まれたとかそんなのが発端じゃなかったっけ?」
「何よ、あたしが嘘吐きだって言うわけ?あたしは嘘なんかつかない。あたしはエルヴァイラよ。みんなが羨ましがるエルヴァイラなの。だから、あたしの持ち物をあのミュゼが盗むはずだし、ハルトがあたしに恋するのも決まった事なのよ。ハルトはあたしに恋をしなきゃいけないの!」
あたしは大声で叫んでいた。
周囲があたしに注目していた。
全員の目があたしに向けられ、……どうして眉根を潜めているの?
あたしはエルヴァイラなのよ?
みんなはあたしを愛しているはずでしょう?
愛されなければいけないのよ!
あたしはエルヴァイラなんだから!
「何か、おかしい、この人。」
「うそ、魔法特待生のエルヴァイラってこんな変な人だったの?」
「自分で言う程に彼女さあ、顔だって綺麗じゃないよね。」
あたしはあたしへの許されない悪口を囁きだした雑踏を見回した。
魔法特待生達の姿は見えず周囲は一般学生達だけだった。
魔法も使えない無能力な一般学生達が、サイコキネシスという魔法特待生でも使えない能力を持つあたしを笑いものにしようと囁きだしている?
あたしの横にいたアレンなど、いつの間にかあたしを指さして笑う女の横に立って、その女と一緒に私をあざ笑っているじゃないか。
あたしは押し寄せてくる違和感、あたしが感じるはずのない、いや、自分が陥るはずのない状況が押し寄せて来たとひたひたと感じ始めていた。
これは一体何?
あたしの周囲は一体どうしちゃったの?
不安に耐え切れずにあたしは周囲に叫んでいた。
「あなた方一体どうしちゃったの!一体何がおかしいの!」




