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前世がモブなら転生しようとモブにしかなりませんよね?  作者: 蔵前
第二十二章 美人コンテストとモブ
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コンテスト票の各々の獲得方法は?

 あたしはこのあたしにライバル宣言をして見せた女を遠目で眺めた。

 なんて間抜け!

 一人じゃ何もできないからか、あいつは教師である兄を伴っての票集めなんて卑怯この上ない行為をしているのだ。


「学校の先生と一緒に挨拶回りって、どうかと思うわ。」


「そうかな。なんか、あの子は、見つけた落とし物とかそういったのを落とし主に返したり、悩み事をきいたりしてあげているらしいよ。占いが得意なんだって。それで、お兄さん先生はその付き添い?」


 あたしの言葉にすぐに答えてくれたのは、あたしと喋ってみたかったと言ってきた、一般の高等部の方の三年生であるアランという青年だ。

 彼はハンドボールの主将もしており、あたしが彼と今度の休みにお出掛けを約束すればあたしに票を入れると誓ってくれた。

 もちろん、自分のチーム全員の票もあたしのものだ、とも。


 だけどあたしは断った。

 それは買収行為だもの。

 すると、彼は別の案も出して来た。


「君が当日に優勝しなくてもね、俺達の投票でエントリーが出来たら、十四日の夜はお祝いパーティをしようよ。ハンドボールクラブはね、魔法特待生の女の子と仲良くしてみたいって考えているんだ。君もクラスの女の子を誘ってさ、打ち上げパーティをしようよ!」


 それには、いいわね、とあたしは喜んで答えていた。

 一緒にパーティをする約束をした仲間、それは友達と同じだし、そんなお友達があたしに票を入れたとしてもぜんぜん買収行為に当たらないでしょう。


 そして、アランはあたしに票を入れてくれただけでなく、さらにあたしを喜ばせる行動を取ってくれた。

 ハンドボールクラブ以外でのアランのお友達、その男の子達にもあたしに票を入れるように掛け合ってくれたのよ。

 あたしはアランの横顔を見つめた。

 日に焼けた肌に似合う短い金髪は額が出るようにして立ち上げてある。

 目鼻立ちも無骨であるけれど、整ったハンサムと言えなくはない。

 彼はあたしに見つめられた誇らしさからか、笑顔をさらに輝かせてあたしを見返して来た。


「あのさ、エルヴァイラ?」


「何かしら?」


 ポンポンポンポン。


 スピーカーから木琴を叩く間抜けな音が聞こえ、きっと校内校外にいる生徒全員がその放送を聞きたいとスピーカーに注目した。

 だって、あたしこそ、ええ、勝利は確信しているけど、その勝利こそ聞きたいものじゃないかしら?


「くたばれTシャツ水着コンテスト実行委員からお知らせです。本日、九月十日の木曜日時点で、全校生徒の票が投票されました事をお伝えします。ええ、俺としてはぎりぎりまで引っ張って、学校休みの土日にだって候補生達には票集め活動をして頂き、祝日の十四日にはどーんと花火をあげたかったのですが、ハハ、目論見は外れちゃいました~。」


 ダレンのくどくどした放送に対し、放送を聞く生徒達から、早く票の数の発表をしろという内容のヤジが次々と飛んだ。


「わ~お。では発表します。高等部の全校生徒、三百二十五人、恐ろしい事に死に票なしで、トップ、われらが王子!二百二十三票!男子からも投票あるってすごいぞ!あとはどんぐりの背比べだ。一気に名前だけ言うぞ!エルヴァイラ・ローゼンバーク、マゼイラ・シェパード、ローズ・ブラッドベリ、そして、白髪頭のアリス・バーンズワースだ!名前を呼ばれた全員は、十四日は体磨いて最高な水着を用意しておけよ!」


 周囲はきゃああと生徒達がはしゃぐ声で渦巻いたが、あたしは少々不満というか、この結果にダレンの不正があるのではないかと考えた。


 あの白髪頭は頭も悪ければ性格も悪いし、顔だって、たれ目過ぎてナマケモノに似た不細工な造形じゃないか。

 そんな女が選ばれるわけは、……そうね、その落とし物なんだわ。

 落とし物と言いながら、賄賂かなんかを渡していたのね。

 あの女だったらやりそう。


「ねえ、パーティにあの子も呼んでくれる?あの子と喋りたいって奴がいてね。」


「あの子?」


「アリスちゃん。可愛いし優しいって聞いているよ?」


「まあ!性格の悪い嫌な子よ、あの子は。」


「そうだけどさ、なんか噂でさ、あの子とあのロランが仲がいいって聞いたからさ、そうかなって。ロランは顔じゃ無くて心で選ぶとか言ってるだろ?ええと実行委員の部屋で抱き合っていたって見た奴がいるらしくて。」


「そんな!ありえないわ!」


 あたしの声は恥ずかしいぐらいに上ずってしまった。

 ハルトがあの白髪女と?

 そんなはずはないわ。

 そうだ!ハルトはダレンの親友だった。

 ハルトもあたしと同じく、ダレンから悪い虫を剥がそうと、きっと一肌脱いだって事なのよ。

 だって、ハルトが愛しているのはあたし、あたしのはずなのよ。


「そうよ、ハルトはエルヴァイラに恋するものなのよ。」


「何それ。」


「え、ああ、独りごとよ。だって、ハルトがあの女とくっつくなんてありえないわよ。ハルトはあたしの恋人なのよ。付き合っているの。」


「え!君はフリーじゃ無かったの!それで俺とパーティとか約束していたんだ。何それ、おかしくないか?」


「あら、お友達をパーティに誘うってよくあることでしょう。あたしは男と女に恋愛感情の無い友情は成り立つって信じているもの。でもそうね、あなたはあたしに恋しちゃった。それはわかるわ。あたしはエルヴァイラだもの。仕方がない事よ。それで友情が続けられないって思っちゃったのよね。」


 まあ、あたしったら言い過ぎたかしら?

 あたしをじっと見つめながら、アランは魚みたいに口をパクパクさせているじゃないの。

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